【Q&Aで解説】広告予算ゼロから始めたドウシシャのAmazon Ads活用 ゴリラシリーズを育てたフルファネル戦略

広告予算ゼロからAmazon Adsの活用を始め、スポンサープロダクト広告やAmazon DSP、Prime Video広告へと段階的に広げてきたドウシシャ。ブランドを育てる広告戦略の全体像をQ&A形式で解説します。

PR/ITmedia
» 2026年10月30日 10時00分 公開
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この記事の概要

  • 広告予算ゼロの状況から商品ページ改善とインサイト分析を進めて、持続的な投資サイクルを確立しました。
  • 大型セール後の長期欠品を教訓に、需要予測・生産計画と広告運用を連動させる組織改革を実行しました。
  • SNSのバズを一過性で終わらせず、Amazon DSPやPrime Video広告を駆使したフルファネル戦略でブランドを育成しています。


 強いエア圧でふくらはぎをケアする「ゴリラのひとつかみ」をはじめ、数々のヒット商品を生み出すドウシシャ。商社機能とメーカー機能を併せ持ち、家電から日用品、食品、インテリアまで幅広く展開する同社ですが、2016年のAmazon展開当初は「価格破壊」への警戒感から社内理解も広告予算もゼロという厳しいスタートでした。

 そこからいかにして広告を「単に売る手段」から「ブランドを育てる力」へ進化させたのか。オンラインストア運営を統括する白石圭司氏と、「ゴリラシリーズ」のブランドマネジャーを務める水島英恵氏の知見を基に、その軌跡と戦略をQ&A形式で解説します。

photo 左から、Amazon Adsの活用を10年以上けん引してきた白石圭司氏(第2事業営業企画部 ダイレクター)、ゴリラシリーズのブランドマネジャーを務める水島英恵氏(家電商品DIV)

予算ゼロからの第一歩は商品ページの統一

Q ドウシシャは広告予算や社内理解がゼロの状態から、どのようにAmazonでの販売実績を作り出したのですか?

A 各営業担当者が作成していた商品ページのデザインや訴求情報を統一し、売り上げの範囲内で「スポンサープロダクト広告」を運用して購買インサイトを可視化することで、実績を作りました。

 2016年のAmazon参入当初は「Amazon=価格破壊」という警戒感や先行投資に慎重な社風があり、「できることから始める」と決意して商品ページの整備に着手しました。

 この結果、1日に1個しか売れなかった商品が2〜3個と売れるようになり、社内理解を広げる足掛かりになりました。数字で成果を証明したことで社内の信頼と予算を獲得して、持続的な投資サイクルを確立しました。


リーチ頭打ちの打破 「守り」と「攻め」を両立させるキーワード戦略

Q ドウシシャはスポンサープロダクト広告のROAS(広告費用対効果)追求によるリーチの頭打ちをどのように解決しましたか?

A 「スポンサーブランド広告」を導入して、指名検索を押さえる「守りの施策」とビッグキーワードに投資する「攻めの施策」を組み合わせるキーワード戦略を立てました。

 購入意欲の高い層のみを狙うスポンサープロダクト広告はROASの追求に偏り、確実に売れる領域以外へのリーチが頭打ちになる課題が生じました。そこでスポンサーブランド広告を導入。「evercook」などの指名検索キーワードを押さえて関心をすでに持っている生活者へ確実に届ける「守りの施策」と、「フライパン」といったビッグキーワードや関連ワードに投資して新規層の開拓を狙う「攻めの施策」のキーワード戦略を再構築しました。

 これによってスポンサープロダクト広告との相乗効果が生まれ、コンバージョン率は以前より1.9ポイント(2026年7月時点、ドウシシャ調べ)に改善しました。


欠品の失敗から築いた、広告と在庫を連動させる体制

Q 大型セール時の長期欠品という失敗から、どのような組織改革と運用プロセスの見直しを行いましたか?

A 広告単体での運用を改めて、需要予測や生産計画、在庫管理と広告戦略を組織横断で連動させる体制へと転換しました。

 大型セール時に広告を集中投下して大きな売り上げを達成したものの、在庫確保や供給体制の予測が甘く、2〜3カ月の在庫切れを引き起こしました。欠品は生活者に商品を届けられないだけでなく、広告投資で引き上げてきた自然検索の表示順位の下落を招き、復旧後も順位を戻すために再投資を余儀なくされるという損失につながりました。

 この失敗を機に、組織横断の連携体制へと舵を切りました。「感覚」ではなく「数字」に基づいて、需要と供給をコントロールする意思決定プロセスを確立しました。


SNSの話題をロングセラーにつなげる製品展開とフルファネル広告

Q SNSで爆発的ヒットをしたゴリラのひとつかみを一過性のブームで終わらせず、ブランド成長へつなげた対策を教えてください。

A 家電の開発期間を3カ月〜半年に短縮して新商品を次々に展開しつつ、「ディスプレイ広告」からスポンサープロダクト広告へとつなぐ多層的な広告戦略でブランドの定着を図りました。

 ゴリラのひとつかみがSNSで800万インプレッションを記録して、主要オンラインストアの在庫が一晩で完売しました。過去に商品の作り込み不足で売れなかった経験から「確かな商品力とそれを伝える戦略があってこそ広告効果が発揮できる」と当社は考えており、商品開発と広告運用の連携体制を構築しました。

 まず1年近くかかっていた家電の開発期間を最短3カ月〜半年に短縮。ドライヤー、調理器具、サンダル、機能性インナーなどへゴリラシリーズを横展開し、話題の鮮度とタッチポイントを維持しました。

 これを受けて、Amazon以外のサイトにも広告を掲載できるディスプレイ広告を導入。ディスプレイ広告で自社商品に興味がありそうな人や過去に商品を見た人にアプローチして認知を広げ、スポンサーブランド広告でシリーズ全体を覚えてもらい、スポンサープロダクト広告で購入を促す、という戦略に進化させました。

 SNSのバズで生まれた認知を広告施策で追いかけ、ブランドストーリーを伝えることで売り上げと信頼を積み重ねます。これによって、一過性のブームから長期的に愛されるロングセラーへの育成につながっています。


潜在層へのアプローチと相乗効果

Q ドウシシャは商品やブランドを知らない潜在層へアプローチし、企業全体の成長へつなげるためにどのような広告施策を展開しましたか?

A さらなる成長に向けて、Amazon外の潜在層に届く「Amazon DSP」と「Prime Video広告」を導入し、インサイト分析に基づき複数回アプローチする仕組みを構築しました。

 Amazon DSPによって、ゴリラシリーズの認知度は導入前比で10.94ポイント上昇(2026年6月時点)しました。速乾・時短ドライヤー「ゴリラのひとふき」でPrime Video広告を導入し、Amazon Marketing Cloud(AMC)で接触層のインサイトを蓄積して、セール期や購買タイミングに合わせて複数回アプローチする設計にしました。

 この結果、ゴリラのひとふきは2026年7月に過去最高の月間販売数を記録して、Amazon内のドライヤーカテゴリーで7位にランクイン。ゴリラシリーズ全体でも前年同期比約140%の売り上げ(2026年8月時点)を達成し、単なる商品の販売にとどまらず、ドウシシャという企業ブランドの信頼獲得につながっています。


まとめ

 社内理解も広告予算もゼロの状況から始まったドウシシャの挑戦。地道な商品ページ改善から始まり、在庫欠品の苦い失敗を組織改革に昇華させて、フルファネル広告によるブランド育成へ挑戦は続きます。

 白石圭司氏が語る「確実な答えを求めて立ち止まるのではなく、まずは小さくてもいいから一歩を踏み出し、数字で事実を可視化して社内を巻き込むこと」、そして水島英恵氏が語る「確信が持てる商品があるなら失敗を恐れずチャレンジし、動いて得られた経験や情報を次の成長資産にすること」。ドウシシャの行動指針である「ENJOY」の精神に基づき、ロジックとパッションを掛け合わせて前進する姿勢は、オンラインストアやブランド成長に取り組む多くの事業者にとって強力な道しるべになるでしょう。


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