「奔馳（ベンツ）」「宝馬（BMW）」「凱迪拉克（キャデラック）」「奥迪（アウディ）」……。今、中国の街中をこれら高級車が縦横無尽に走っている。日本の高級車ブランドでは、すでにトヨタの「レクサス」、ホンダの「アキュラ」が中国展開を始めており、今夏のインフィニティ進出で役者がほぼ出揃った。

中国の街中は高級車でいっぱい。夜もクルマの明かりが消えることはない

　上海インフィニティの取材に応じてくれたのは、上海永達英菲尼迪（インフィニティ）総経理助理の郭暁麗さん。かつて上海永達グループでドイツメーカー高級外車を年間400台売り切ったトップセールスの実績を買われ、現在はインフィニティでの実質的な現場責任者を任されている。

　 上海インフィニティでは、7月のオープンから「G35セダン（日本名：スカイライン）」「ＦＸ35／FX45（いずれも日本未発売）」の2車種3モデルの販売を開始している。ＦＸ35／FX45はインフィニティチャンネル専用車で、ビッグボディにスポーツカーの走りとSUVの利便性を兼ね備えた新カテゴリの車。BMWのX5やポルシェのカイエンといった高級SUVをライバルとする日産の世界戦略車だ。G35セダンは日産栃木工場、FX35／FX45は日産車体湘南工場で生産されている“メイド・イン・ジャパン”のクルマでもある。

上海永達英菲尼迪（インフィニティ）総経理助理の郭暁麗さん

「FX35／FX45」

「G35セダン（日本名：スカイライン）」

　中国での価格はFX45が80万8000元（約1300万円）と一番高く、最も安いG35セダン（日本名スカイライン）でも44万8000元（約720万円）となっている。売れ筋はFX35で、価格は67万8000元（約1090万円）。1000万円超の高級SUVが一番売れているというところに、中国の高級車市場の勢いを感じる。

　 「オープンから約1カ月での販売台数は40台と好調なスタートを切っています。その内訳は、個人での購入が30台、会社購入が10台と、圧倒的に個人購入が多いですね。年齢層では35〜40歳ぐらいで、日本など海外での生活を経験していて日産（インフィニティ）ブランドをよく知っている人が購入するケースが多いです」（郭暁麗さん）

売れ筋FX35の中でも特に人気のボディ色がこの赤茶色（ブライトカッパー）。こちらの色はなんと納車まで3カ月待ちという

　日本では新車購入の際の値引きは当たり前となっているが、インフィニティでは一切の値引きをしていないという。そのかわり、花やワインなどを来場記念品にしたり、新車購入時はクルマと一緒に撮影する記念写真のサービスや、時計・ライター・財布といったブランド品のプレゼントなどでユーザーの心を射止めているとか。4年間もしくは10万キロまで修理費用が無料という高級車ブランドらしいアフターサービスも売りだ。

　まだ日の浅い中国での自動車ビジネスで、5年もの間を第一線で活躍してきた郭暁麗さんに、中国の高級車事情について聞いてみた。

　「中国で人気の高級車ブランドはキャデラックとBMW。ビュイックやトヨタも車種のバリエーションの多さで一般的に広く人気を博していますね。信頼性などから日本車の人気も高く、日産も上海では人気の車メーカーです。今回のインフィニティブランドで、高級車としての知名度も上がってくるのではないでしょうか」（郭暁麗さん）

　日産は2007年末までに中国国内の約10カ所にインフィニティのディーラーをオープンする予定。また2008年末までに、今回発売された2車種に加えて、さらに3車種を順次投入していく予定という。

上海の街中では日産のミディアムセダン「ティアナ」（中国名：天籟）もよく見かける