VENTURAは1990年創立の若いブランドだ。創業当時は、機械式で工業系の技術者に向けたプロ仕様モデルを販売していた。機械式は日本のエンジニアには評判だったが、多機能な液晶デジタルウォッチの台頭で次第にそのシェアは落ち込んでいく。 それからVENTURAはデジタルウォッチの開発に力を入れ始める。6年後には、スイス人書体デザイナー、アドリアン・フルティガーを起用し、フルティガーフォントを採用。またハンネス・ヴェットシュタインと、パオロ・ファンチェッリがデザインに参加するようになると、一般の時計製法とは逆の発想で作られた実用的で斬新な製品が次々に生み出されていった。彼らは腕時計専門のデザイナーではない。主にインテリアや雑貨などを扱う工業デザイナーが、たまたま時計をデザインしたという表現が正しいだろう。 |
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VENTURA独自のデザインと技術は、スイス時計の伝統からあえて距離を置いている印象がある。機械式で日本の時計メーカーに対抗する多くのスイスメーカーにあって、“いかにも”デジタル時計という風貌を選択しているからだ。VENTURAは他社がやらないのなら――と逆手にとって時計界に挑む。「スイスでデジタルウォッチを真面目に作っているのはVENTURAくらいです」と日本代理店であるスイス デザイン オン タイムの広報担当者は語る。まだ歴史は浅い。だから名前ではなく商品のクオリティーで勝負する。 |
v-tecシリーズ最新作は、カッシーナ社などのインテリアデザインを手がけるハンネス・ヴェットシュタインが作り上げた「v-tec Alpha」(写真左)を引き継ぎ、数々の工業デザインを世に送り出したパオロ・ファンチェッリが担当した。 耐久性に優れていることも特長のひとつ。硬度は必要だがあまりに高めすぎると逆に故障の原因になりかねないため、緻密に計算しているという。シグマには、ハードニングされた傷防止のステンレススチールを用いている。 液晶ディスプレイはエプソンの技術を採用。299ドットとやや小さめのフォントサイズ使っているため、液晶の奥でフォントが鮮やかに見える。また手首をねじるらずに時間が読めるように、ディスプレイは若干斜め向きに設置した。液晶上部には、12/24時間式時刻、カレンダー、メイン/ローカルタイムの表示の修正・切り替え、アラーム、クロノグラフ、カウントダウン各機能のオン・オフ操作用のイージースクロールを配置している。歯切れよくまわるスクロールシリンダーは、カチカチと小気味いい音がして、身に付けるとついつい触ってしまう。 |
スクロールシリンダーで表示・切り替え、各機能のオン・オフを行う |
ハードニングされた傷防止のステンレススチールを使用する |
ムーブメントは自社開発のクォーツモジュール VEN 04 |
2005年に発売された「SPARC rx」も、ヴェットシュタインが手がけた「SPARC px」(写真左)をベースにして、ファンチェッリがデザインしたもの。デジタルウォッチは複雑な操作がつきものだが、このシリーズは設定や表示切替をリュウズのみで行えるとてもシンプルな作りだ。リュウズの動きは発電にもなり、時計を動かすエネルギーとして蓄電される。 大きめのディスプレイのため、もともと視認性の高いシリーズだが、この長所を際立たせるため、デイズプレイを360度回転式にし、あらゆる角度から時間が確認できるというおもしろい構造に仕上がった。バイクや車といったドライビング用のツールとしても重宝するだろう。ほかの誰よりも「小さいところにこだわる」、いや「かゆいところに手が届いた」設計は、VENTURAならではと言える。 2007年春には、v-tecとSPARCの機能を併せ持つ次世代モデル「v-tec MGS」が発売される予定となっている。 |
シールスルーバックでムーブメントが確認できる |
自分の見やすい角度に設定できる360度回転式 |
自動的に作動エネルギーを蓄積するオート・クォーツVEN 99 |
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スイス デザイン オン タイム 03-3524-2022 |
取材・文/+D Style編集部
撮影/香野 寛