アジア初上陸という事で、並々ならぬ熱い視線が注がれていた「ミシュランガイド東京」。2007年11月22日、日本中が固唾をのむ中、ついに、「ミシュランガイド東京2008」が刊行された。 蓋を開けてみると、星を獲得したレストランは総計で150軒! 新たなるグローバルスタンダードとなったお店の内訳は、3つ星が8軒、2つ星が25軒、1つ星が117軒。ちなみに、気になる格付け星の見方は、以下を参考にしてほしい。 3つ星−そのために旅行する価値がある卓越した料理 東京の名だたる職人やシェフたちが、日々最高の料理の提供を目指した結果、東京は、世界一星を獲得した“最多星保有都市”となったのである! |
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ミシュランと言えばセットで必ず語られる、謎のベールに包まれた覆面調査員の面々。各国にいるミシュランの調査員の平均年齢は41歳、平均体重は男女合わせて70キロ。全員ミシュランの正社員で、採用時から2、3カ月でフランスに渡り、ベテラン調査員引率のもと、各国の星付きレストランを回って研修に励む。東京版の調査員は5名。うち2名が東京版のため専属的に選ばれた日本人であるが、最終段階ではさらに10名がヘルプに加わり、総勢15名のローラー作戦で格付け作業をやり終えたという。その知識と舌を頼りに、世界を股にかけて華麗に活躍する調査員は、世界中の美食家たちから憧れの対象となっている。 しかしながら我々の身近なところにも、日々食べる事をなりわいとしている“食べ歩きのエキスパート”がいるではないか! 「TVチャンピオン」B級グルメ王で、安うまグルメ研究家・回転寿司研究家の柳生九兵衛さん。自称「日本一ラーメンを食べた男」にして、ラーメンデータバンク代表取締役の大崎裕史さん。テレビや雑誌に多数登場し、彼らの発信する情報が今やお店選びの1つのスタンダードになっている大御所2人に、今回、満を持して登場して頂いた。さてさて彼らはミシュラン東京版の評価を、どう見ているのだろうか? |
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大崎裕史氏 |
大崎:今回のミシュランは、6割が日本食でしたね。私は日本食は食べに行かないので、残りの4割のうち24軒が訪問済みでした。和田アキ子や峰竜太よりも多かったのでビックリです(笑)。3つ星では「カンテサンス」、「ジョエル・ロブション」、「ロオジェ」。2つ星だと「ピエール・ガニェール・ア・東京」、「リストランテASO」、「レイ家菜」、「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」に行きましたね。 柳生:う〜ん、安くてうまいものをこよなく愛する私にとってはまったく他人事の本ですね〜。高けりゃうまくて当たり前!安くてうまいからこそ価値があると常々思っていますので、当然ながら私は1軒も行った事がありません(笑) 大崎:私もB級を応援します(笑)。でも、ミシュランの未食店にも行きますけどね。私はミーハーなので、美味しいと言われる所はわりと行ってますよ。「カンテサンス」は今年だけで4回、「おはらス」は2回かな。あ、そういえばミシュラン掲載店は全体的に価格帯の高いお店が多いですが、「御田町 桃の木」は5000円でよかったですよ! コレクターなので滅多に同じ店に行きませんが、こちらは2回訪問しました。 柳生:この間、東京スポーツの取材を受けてコメントさせてもらったんだけど、その記事に「ミシュランにケンカを売る!」なんて大きな見出しを付けられちゃったもんだから、友人知人から心配されちゃいましたよ。私は別にケンカ売った覚えは無いんですけどね(笑) 大崎:そもそも日本食をフランス人が評価するのはどうなの? 柳生:私はそもそも格付け自体に抵抗がある。ただし、決して高いものがいけないと、いってる訳ではありませんよ。 大崎:そういえば、柳生さんは自分の分野の格付けはされないんですね。私はよくやらされますよ、今年のベスト10とか。 柳生:格付け系だけは断りますね。でも2億円積まれたらやっちゃうかも。あ、前言撤回。意外と10万円くらいで引き受けちゃったりするかもしれないから、各メディアのご担当者さん、一応声はかけてみてください(笑) 大崎:私も柳生さんも顔出しで活動しているので、覆面調査員は出来ませんね。本当に覆面をかぶって食べに行きたいくらいですが……銀座のクラブでばれちゃったのには驚きました。クラブに行って高い金払って、ラーメンの話を2時間して……逆に金くださいって言いたいですよ!講演料(笑) 柳生:私は例えほんとうに覆面を被っていったとしても、お腹でバレちゃう(笑)! |
柳生:高いお店が多いというのもそうだけど、今回のミシュランの特徴として挙げられるのは、ラーメン、カレー、丼、うどん・蕎麦など、“国民食”と呼んでもいいような、身近な食のジャンルが完全に対象外になっている事ですよね。僕としてはちょっとそれが納得いかない。 大崎:そうなんですよ、柳生さんいい事言った! 私はねぇ、「ラーメンばかり食べてるんですよね」とよくいわれるんです。そんなは事ない!と声を大にして言いたい(笑)。その上で思うんですが、一般目線も重要視してほしい。ミシュランは上位5%くらいしか対象にしてないのでは? もっともっと幅広い、実用性の高いグルメ本も考えていかないと。 柳生:Bシュランとか(笑)! 大崎:あはは、いいですね〜。だって、私もそうですけど、普通の人は毎日フレンチなんて食べに行かないでしょ? ランチ食べ行くのにわざわざ予約するのも面倒だし・・・・・・。 柳生:ランチタイムはサッと入れて手頃な値段で満足させてくれる店こそ優秀な店ですもんね。 |
大崎:それにしてもここまで盛り上がるのはスゴイですね、3つ星は電話が繋がらなかったらしいですから。未掲載のレストランも予約が取りにくくなってますよ。これもミシュラン効果なのかな?と。全体の外食ブームが高まったという、経済効果は間違いなくありましたね。まぁ、ミシュランは旅行者用のガイドブックというコンセプトで作られているので口に合わなくても皆さん文句を言っちゃダメよ (笑)。味覚は千差万別なので3つ星だから満足できるとは限らないし。 柳生:切り口を何にするかによってまったく評価が違っちゃいますもんね。ドレスアップして出かける特別なお店も素敵ですが、気軽に行かれるような、日常使いできる店も忘れちゃダメですよ〜。美食都市の東京には、安くても美味しいお店がたくさんあるんです! 私はそんなお店を開拓することにこそ喜びを感じますね(笑) |
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取材・文/華麗叫子
企画・構成/似鳥陽子