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いまさら聞けない 「アカデミー賞って何?」
いまさら聞けない「アカデミー賞って何?」

<そもそもアカデミー賞とは>
 アカデミー賞とは、映画芸術科学アカデミー(The Academy of MotionPicture Arts and Sciences)の会員によって選出される映画賞のこと。このアカデミー会員は、アメリカで映画製作に携わっている俳優、監督、プロデューサー、脚本家、衣装デザイナー、美術監督、さらに現在は映画会社重役やPRなども会員に含まれ、5800人以上と言われる。映画人がその年ベストの仕事をした人を称える、いわば「映画人の、映画人による、映画人のための賞」なのである。ノミネート発表は2月中旬、3月下旬に授賞式が行われていたが、第76回から1月下旬にノミネート発表、授賞式は2月下旬〜3月上旬に変更となった。

<アカデミー賞のはじまり>
 今でこそ世界中で生中継され、賞の行方はもちろん、スターの衣装などにも注目が集まるアメリカ映画界最大のイベントだが、スタートはこじんまりしたものだった。第1回目の授賞式は1929年5月16日、ルーズベルト・ホテルで行われ、夕食会形式で参加者もわずか。ちなみに作品賞はウィリアム・A・ウェルマン監督による戦争大作「つばさ」が選ばれた。

<アカデミー賞に選ばれる作品の条件>
 賞の対象となるのは、授賞式の前年の12月から12月の間に、ロサンゼルス地区で1週間以上、商業的に公開された作品。35ミリか70ミリのフィルムを使用し、40分以上の作品が長編の対象に。

<オスカー像>
 受賞者が手にするオスカー像。全長約34センチ、重さは約4キロ。デザインをしたのはMGM社のチーフ・アート・ディレクター、セドリック・ギボンズ。像がオスカーと呼ばれるようになったのは34年の授賞式から。オスカーとはあくまで愛称であるが、その起源はアカデミー賞協会の司書であった女性が「おじさんのオスカーに似ているわ」と言ったから、という説が有力である。

<最多受賞作>
 最多11部門の受賞作は第32回「ベン・ハー」、第70回「タイタニック」、第76回「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」の3本。「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」は、シリーズ映画の完結編だけが作品賞に輝くのも初めてなら、ノミネートされた11部門ですべて受賞したのも初という快挙を成し遂げた。

<アカデミー賞嫌いは>
 オスカー嫌いとして有名なのはウディ・アレン監督。第50回の受賞式で、大本命の「スター・ウォーズ」を押しのけ、「アニー・ホール」で作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、主演女優賞(ダイアン・キートン)の4冠に輝いたにもかかわらず、完全無視、マンハッタンのジャズクラブでクラリネットを吹いていたとか。その後もアカデミー賞のことは眼中になし。そんな彼が重い腰をあげたのが、第74回アカデミー賞。9.11同時多発テロで打撃を受けたニューヨークの復興をテーマにしたときで、会場を沸かせた。

タイタニック
バベル

<アカデミー賞を受賞した日本人>
 昨年は「バベル」の菊地凛子が助演女優賞にノミネートされて話題になったが、日本人として初めて受賞したのは黒澤明監督。「羅生門」で名誉賞(外国語映画賞)を受賞した。ほかにも、ワダエミ「乱」(衣装デザイン賞)、坂本龍一「ラストエンペラー」(作曲賞)、伊比恵子「パーソナルズ」(短編ドキュメンタリー賞)、宮崎駿「千と千尋の神隠し」(長編アニメーション賞)が受賞。今年は浅野忠信が主演するカザフスタン映画「Mongol」が外国語映画賞に、「マッド・ファット・ワイフ」で特殊メイクアップ・アーティストの辻一弘がメイクアップ部門にノミネートされている。

<今年の司会者は?>
 毎回、誰が司会者に選ばれるかも注目されているが、今年は2年ぶりの登板となるジョン・スチュワート。日本人にとっては誰?というスチュワートだが、アメリカではテレビ番組「デイリー・ショウ・ウィズ・ジョン・スチュワート」の司会者として知られる。時事問題を皮肉たっぷりに伝える番組として人気を集めているが、今年はヒラリーVSオバマの米大統領選がネタになりそう。

<ラジー賞>
 いまやアカデミー賞前の風物詩として、すっかり市民権を得たゴールデン・ラズベリー賞、通称ラジー賞。その年ベストの作品に与えられるのがアカデミー賞なら、逆に最低映画も選んでしまえ、というユーモアたっぷりの賞なのだ。しかも、アカデミー賞受賞式の前夜に行われるという、ラジー賞独特のユーモアも忘れない。第1回目開催は1980年と、その歴史は結構古い。受賞者にはラズベリーをかたどっ金色トロフィーが贈られる。選ばれるのは、本当につまらないか、笑うしかないトンデモ映画。でも、ダメの烙印を押すというよりは、みんなで楽しんでしまおうという映画愛が感じられるから不思議。昨年はシャロン・ストーン主演の「氷の微笑2」がワースト作品賞、ワースト主演女優賞、ワースト脚本賞、ワースト続編賞の見事4冠を達成した。

 さて、第28回を迎える今年、最多9部門にノミネートされたのはゴシップ女優、リンジー・ローハン主演のホラー「I Know Who killed Me(原題)」で、ワースト作品賞、ワースト主演女優賞など。続く8部門でのノミネートはエディ・マーフィ主演のコメディ「マッド・ファット・ワイフ」。また、今年は最悪ホラー映画賞が新設され、「ハンニバル・ライジング」「AVP2 エイリアンズ VS.プレデター」「キャプティビティ」「ホステル2」「I Know Who Killed Me」がノミネートされた。受賞式は2月24日(日本時間)。

マッド・ファット・ワイフ

取材・文/本山由樹子