高倍率スリムデジカメ7機種を比較する(前編)――テレとワイドの写りはどう違う?(2/3 ページ)
スリムさが特徴のコンパクトデジカメだが、最近ではスリムを維持したまま10倍以上の高倍率ズームを搭載する機種も珍しくない。そこで主な機種を集めて比較してみた。まずはテレ/ワイドの写りをチェック。これが結構違うのだ。
パナソニック LUMIX 「DMC-TZ10」
DMC-TZ10は35ミリ換算25〜300ミリ相当の12倍ズームレンズを搭載した「旅カメラ」だ。撮像素子は1400万画素CCDなのだが、レンズの関係で中央部の1210万画素分だけを使っている(このシリーズはずっとそうだ)。シーン自動認識のiAモードに加えてP/A/S/Mそれぞれのマニュアル系撮影モードも充実しているのが特徴だ。顔検出系に力を入れており、個人顔認識や美肌系の機能もある。
新機能で注目は2つ。ひとつは「超解像」。超解像をオンにすると滑らかな部分はそのままでディテール描写が強化される。超解像を利用したデジタルズーム(iAズーム)を使うと、16倍相当まで伸ばせる。ディテールを細かくチェックしない限り実用レベルのデジタルズームといえよう。
もうひとつはGPS。最初の測位に時間がかかるので、目的地に着いたら撮影する前にまず電源をいれて最初の測位をしておくこと。これが大事。そうすれば、大きく移動しない限り、5分おきにきちんと測位してくれる。ただ移動しながら撮っていると間に合わないことが多い。次モデルではもっとマメに測位してもらえるとうれしい。下記作例の元データにはGPSによる位置情報が入っているので興味ある方は対応ソフトで場所をチェックしてみると面白いだろう。
ソニー サイバーショット「DSC-HX5V」
パナソニックTZシリーズの強力なライバルとして登場したのが、このソニー「DSC-HX5V」で、2010年春の人気モデルだ。35ミリ換算24ミリ相当からの10倍ズームなので望遠側が少し弱いが、広角側が強い方が旅カメラとしてはうれしいところ。
1000万画素の裏面照射型CMOSセンサー「ExmorR」を搭載し、その「高感度」と「高速連写」という特性を利用した高機能っぷりがウリ。特にスイングパノラマと手持ち夜景機能の便利さと楽しさは秀逸だ。
2番目のポイントはGPS。GPSのネックである「最初の測位」を短縮するため「GPSアシストデータ」が用意されている。ネットからこのデータをダウンロードし、それをベースに測位を行うことで、測位時間を大幅に短縮した。GPSアシストデータの有効期限は1カ月だが、時間がたつにつれ効力は薄れていく(測位に時間がかかるようになる)ので1週間おきくらいにアップデートしたい。電源オン時は約10秒おきに測位するため位置情報を細かく記録できる。3番目はHD動画。フルハイビジョン(1920×1080ピクセル)記録はAVCHD形式のみだが、このサイズ・この価格でフルHDを気軽に楽しめるのは素晴らしい。
カシオ計算機 EXILIM「EX-H15」
カシオはコンパクト系10倍ズームモデルとして、CCD搭載の「EX-H15」と裏面照射型CMOSセンサー搭載の「EX-FH100」の2モデルを用意している。FH100は春の「裏面照射型CMOSセンサー特集」(この春は「裏面照射」が面白い! 搭載5製品を一気に試す:前編)と(この春は「裏面照射」が面白い! 搭載5製品を一気に試す:後編)で取り上げたので、今回はEX-H15の方をピックアップした。
有効1400万画素のCCDを搭載し、レンズは24ミリ相当からの10倍ズーム。ほかの6モデルよりボディがややずんぐりして背が高くて重いが、それはバッテリが大きいから。一般的なコンパクトデジカメのバッテリの容量は900〜1000mAhだが、EX-H15は1950mAhとざっと2倍なのだ。その分持ちはすごくよく公称で約1000枚と断トツ。ちょっとした旅行なら予備がなくてもOKなレベルだ。これが一番のよさ。
背面は円形十字キーの上下に2つずつボタンが重なるというユニークなデザイン。画面はプレミアムオート。顔にキラリとマークがついているのは「人物メイクアップ」がかかりますという印。ちゃんと「三脚を使って人物撮影」というのを認識している。
もうひとつの特徴は「メイクアップ」機能。「プレミアムオート」モードでは人物と風景に対して「デジタルで化粧をほどこして」くれる。簡単にいえば、首都圏のちょっとくすんだ空もカリフォルニアの青い空に、というか。これはこれでアリかなと思う。デジタルならではの面白さに力を入れている。
液晶モニタが明るくて見やすいこと、また、メニュー項目が多彩で意外と細かな設定までできるのがカシオらしさだ。
ニコン 「COOLPIX S8000」
フラットなボディからせり出てくるようなレンズ部の曲面が美しい優れたデザインのCOOLPIX S8000。このデザインは高級感もあり、特筆すべきかと思う。手に取ってみたくなる。
撮像素子には有効1400万画素のCCDを搭載。レンズは30ミリ相当からの10倍ズームで広角側がやや弱いのは残念。マクロは広角側で約1センチまで寄れる。これはうれしい。
ディスプレイは3インチと大きいが、晴天下ではやや見づらかったか。背面は十字キー兼ロータリーセレクタを採用。カメラアイコンが撮影モード切替。ちなみに今回の7機種で唯一人形の顔をなかなか検出してくれなかった
ウリは高速起動と高速レスポンスで、確かに起動してから1枚目を撮影するまで、という条件では非常に高速だ。ただしそれ以外――撮影モードを切り替えるときのレスポンスなど――はイライラするほど。オートで撮る分には快適だが、ちょっと凝った撮影を望むと悩まされるかも。AFも明るい場所でこそ高速だが、ちょっと暗かったりするとなかなか合わないなど、全体としてのバランスはまだ進化の余地ありか。
撮影機能としてはスマイル検出や自動追尾もあるし、ダイヤルを使った操作系などいろいろ考えられている。オート時に露出補正をかけると、露出のみならず彩度や色合いをシンプルに変更できるクリエイティブスライダーも装備している。
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