第3回 ICCプロファイルの役割を理解する:今日から始めるデジカメカラーマッチング
デジカメ写真をPCの画面に表示する。この際に正しい色とするためには、表示ソフトとディスプレイ、その両方が情報を共有する必要がある。その際に重要な役割を果たすのがICCプロファイルだ。
前回(今日から始めるデジカメカラーマッチング:第2回 sRGBとAdobe RGBを理解する)に説明したよう、PCのディスプレイにおける「色域」とは、そのディスプレイが表現できる色再現範囲を指し、「sRGB」「Adobe RGB」などの規格が存在する。
規格が違えば色域は異なるため、表示する機器やソフトウェア、OSが「その写真がどの色域で記録されているか」を把握するのは非常に重要だ。さらに各機器やソフトウェアによって色域や発色のクセは異なるため、さまざまなデバイス間で色情報を正しく伝える仕組みも必要となる。この際に重要な役割を担うのが「ICCプロファイル」だ。
ICCプロファイルの役割
ICCは、International Color Consortiumの略称で、デジカメやプリンタ、スキャナ、ディスプレイといった機器間で確実な色再現を目指す国際標準化団体。ICCプロファイルにはその機器の色に関する特性が記述されており、「デジカメはsRGB/AdobeRGBの色空間をRGBの組み合わせで実現しているが、プリンタはそれをCMYKの4色で再現する」といった、複数機器間で色情報をやりとりする際に利用される。なお、2つの機器間で正しく色を伝えるには、機器に左右されない絶対的な色数値である「CIE XYZ」あるいは「CIE Lab」に値を置き換えてやる必要がある。そのためにも、機器の色に関する特性が記述されているICCプロファイルは重要な役割をもつのだ。
ただ、ICCプロファイルは印刷時にのみ利用される訳ではない。PCの画面上で色を正しく表示するためにも利用されており、その際には、ディスプレイと表示するソフトウェア(画像編集ソフトやWebブラウザなど、あるいはOSそのもの)がICCプロファイルをサポートする必要がある。Adobe Photoshop CSのようなプロ向けの画像編集ソフトだけでなく、無償の画像ビューワーでも多くがICCプロファイルをサポートしており、Windows向けでは「IrfanView」のように古くからサポートをしているソフトもある。
利用するソフトなどがICCプロファイルに対応していない場合、一体どのような表示になってしまうのか。一例としてWebブラウザがICCプロファイルに対応しているかいないかの例を、ICCのサイトでチェックしてみるといい。
ICCプロファイルに対応した環境(Safari5やICCプロファイルを有効としたFirefox3など)では中央の山と空がきれいに見えるが、ICCプロファイルに対応していない環境(Windows環境でInternet Explorer 8以下のIEやGoogle Chromeを使っている場合)では、明らかにおかしな表現になってしまう。なお、現在マイクロソフトがβテスト中のIE9はICCプロファイルをサポートしており(Internet Explorer 9 Beta 開発者ガイド)正確な色再現が期待できる。
また、Mac OSはOSレベルでのカラーマネジメントを重視しており、基本的にはアプリケーション側ではなくOS側でICCプロファイルを制御し、それをアプリケーションが表示する形になっているので、通常はアプリケーションのICCプロファイル対応を気にする必要はない。
モバイル端末に関してはこの辺りの対応はまだ遅れており(そもそもICCプロファイルが指定できないことも多い)、iPhoneなどのiOS(iPhone 4やiPad)、Android 2.2(Nexus One)といった最新のスマートフォンでも、ICCプロファイルの対応は完全ではないため、完全な色再現はモバイル端末ではまだ期待できない。
このように、ICCプロファイルは、画像の入力から表示、出力を担当するデバイスやソフトウェアに対して情報を正しく伝達する役割を担う。ただし、デジタルカメラで撮影した画像には、通常はICCプロファイルが設定されておらず、Exif内にsRGBやAdobe RGBといった色空間の指定がされているにとどまる。
デジカメで撮影した画像には各社独特の色の味付けがあったり、フィルターによって色味を変化させたりといった特徴があるが、PC上で表示させる場合、正しい色として表示されるかには「画像が持つ情報を、正確にディスプレイやソフトなどへ伝達できるか」も大きなポイントとなる。
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