「金属魂」的、FinePix X100のある生活(金属と皮の濃密な関係):矢野渉の「金属魂」的、デジカメ試用記(3/3 ページ)
絶対買うと意気込んでいたわけではないが、手にするしかないと思った。カメラマン 矢野渉氏と、「革」を注ぎ足したFinePix X100の生活は始まったばかり。
写りについてこれだけは言っておきたいこと
X100の写りに関しては、発売後すぐの、永山氏による詳細なレビュー(フィルムカメラ風の高級コンパクト機――富士フイルム「FinePix X100」)があるのでそちらを参照して欲しい。ただ、僕がひとつだけ言いたいのはフジノンレンズのボケのすばらしさだ。いまだかつて、広角系レンズでこれほどキレイなボケ方をするレンズがあっただろうか?
カメラマンならば、一度は「ボケ」にはまった事があるはずだ。コンタックスのレンズが評価されていたのは、ピントが少し甘いにも関わらずボケが圧倒的に他社より美しかったからだ。だから僕も含めて日本製の「シャープなレンズ」を使っているカメラマンはソフトフィルターに凝ったりしたものだ。未輸入のフィルターを個人輸入したり、フィルターを自作したりして「自分だけのボケ」を作ろうと必死だった。
X100のフジノンレンズは、シャープネス優先ではなく、ダイナミックレンジを広くとってその場の「空気感」のようなものを伝えるようなレンズを目指して設計されているようだ。だから言ってみれば「ふわりとした写真」が撮れる。X100で家族写真を撮って、10年後に家族でプリントを見たらすごく会話が弾むような写真。
その空気を作っているのがこの「ボケ」だ。本当に、とろとろと溶けて背景に染みこんでゆくようだ。これは確実に観る人間を気持よくさせる。
使ってまだ1カ月と少しで、僕が気がついたのはこの「ボケ」の件だけだ。X100にはまだ沢山の謎があるような気がする。長いタームなのでゆっくりと進めるが、いずれまたこの場でご報告できることもあるだろう。
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