第1回 風景をまるごと写す超広角ズーム――シグマ「8-16mm F4.5-5.6 DC HSM」:デジタル一眼レンズの楽しみ
デジタル一眼のユーザーならレンズ選びにはこだわりたいところ。どのレンズを使うと、どんな写真が撮れるのか。交換レンズの魅力を作例写真で伝えつつ、お勧めの撮影スポットを紹介する連載の第1回。シグマの超広角ズームを使ってみました。
シグマ「8-16mm F4.5-5.6 DC HSM」は、2010年春に発売された超広角ズームです。APS-Cサイズ用の広角ズームでは世界最大となる画角の広さを持ちながら、被写体の細部までをくっきりと表現できる、その解像力の高さにはすでに定評があります。
画角はキヤノンEFマウントの場合、35ミリ換算で12.8〜25.6ミリ相当をカバーします。広々とした風景や巨大な建造物の全体をとらえたり、パースペクティブを強調した作画に役立ちます。ただし、画角が広すぎるため、一般的な広角や標準ズームの感覚で撮ろうとすると、単に広い範囲が写っただけの間延びした写真になりがち。本レンズに限らず、超広角ズームでは被写体にできるだけ接近することが構図を引き締めるコツといえます。
上の写真は都庁第一本庁舎を都民広場の花壇ごしに撮影したもの。いちばん手前の花に数センチの距離まで接近することで、画面の下半分を鮮やかな色で彩り、墓標のようにも見える庁舎とのコントラストを際立たせてみました。
竣工から20年が経った都庁はすでに老朽化が進み、昭和の負の遺産といわれることもありますが、個人的にはお気に入りの場所。眺めているうちに吸い込まれるような迫力があり、新宿高層ビル群の中でも存在感が突出しています。
写真としては、レンズにとって厳しい逆光条件のため、フレアやゴーストが生じていますが、気にするほどの問題ではありません。画面を斜めに傾けたのは少々やりすぎでした。カメラはキヤノン「EOS 60D」(レビュー)を使用。ローアングルからの撮影ではバリアングル液晶が重宝します。
次の写真は、東京文京区にある鳩山会館の内観です。12.8〜25.6ミリ相当の広い画角は、こうした室内の全体をとらえる用途にも適してします。周辺減光や歪曲収差はそれなりに見られますが、必要に応じて後処理で補正できるレベルです。
それよりも気を付けたいのは、撮影時にカメラの水平と垂直をきっちりと保つことです。この場所は三脚の使用が認められていませんので、手持ちにて、カメラが傾かないようにしっかりと支える必要があります。超広角での内観撮影は、傾きが中途半端に生じるとバランスが悪く、不安定な印象になるので要注意です。
3枚目の写真は、有楽町にある東京国際フォーラムの7階から撮影したアーチ状の屋根と吹き抜けです。ホワイトバランスの設定を白熱電球にすることで全体を青っぽい色に仕上げ、宇宙船内部のような異様な雰囲気を強調してみました。
こうした空間的な広がりのある場所にて、そこで体感した場のスケールや奥行きを写真として表現するには、この「8-16mm F4.5-5.6 DC HSM」は好適です。大自然を撮るのもいいですが、限られたスペースに巨大建築が林立する東京のような都市向けのレンズ、という印象を受けました。整然とした場所だけでなくゴミゴミとした路地裏のように、十分な引きが取れない狭い場所でも活躍します。
開放F値がやや暗いことや、前玉が大きく飛び出ていてフィルターの装着ができないといった弱点はありますが、純正レンズにはない8ミリの焦点距離は、広角好きの人ならぜひ味わいたい独特の世界観といえます。
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