第5回 望遠ズームで朝日や夕日のシルエットを狙う――キヤノン「EF70-300mm F4-5.6L IS USM」:デジタル一眼レンズの楽しみ
冬は昼間でも太陽の位置が低いため、逆光や斜光を生かした写真が撮りやすい季節です。今回は、高品位な質感と高速AFを誇るキヤノンの望遠ズームを用い、太陽の光と反射、シルエットを狙ってみました。
キヤノン「EF70-300mm F4-5.6L IS USM」は、35ミリフルサイズに対応した望遠ズームです。鏡筒の色が白い望遠「Lレンズ」の中でも、比較的リーズナブルな価格で購入でき、2010年の発売から現在まで安定した人気を保っています。
外装は、防じん・防滴に対応した高品位な金属製。ズームリングとフォーカスリングの位置が他の多くのLズームと逆に配置されている点には少々戸惑いましたが、リングの感触や操作感は良好です。しっかりとした鏡筒の作りからは、さすがLレンズと感じさせてくれます。ほぼ無音で高速作動するAFや、効果4段分の強力な手ブレ補正機構についても、そのパフォーマンスの高さを実感できました。
重量は1050グラム。「L」のつかない「EF70-300mm F4-5.6 IS USM」に比べた場合、400グラム以上重く、鏡筒の太さも一回り大きくなりますが、かといって三脚が欠かせないというほどではありません。筆者にとって、手持ちで気楽に使えるぎりぎりのサイズと重量といったところ。太さの割には鏡筒の全長が短いので、バッグにすんなり収まる点も便利です。
ということで、この望遠ズームの機動力を生かすべく、冬の公園にスナップ撮影に行ってきました。撮影地は江戸川区の葛西臨海公園。23区内最大級の公園であり、観覧車や水族館、鳥類園など被写体は盛りだくさん。東京湾に面した埋め立て地なので見晴らしがよく、東京タワーやスカイツリーはもちろん、晴れた日には富士山も拝める見どころ満載のスポットです。
最初の写真は、公園の東側の海沿いから見た朝日です。露出を切り詰めた上で、ホワイトバランスを「日陰」にセットすることで、朝焼けの赤みを強調しています。構図は、焦点距離300ミリの画角ではやや迫力不足でしたので、より引き付けて撮るためにAPS-Cサイズの撮像素子を搭載する「EOS 60D」を使用し、480ミリ相当の画角を得ています。
次の写真は、正午少し前に撮影した輝く海です。冬は昼間でも太陽の位置が低いため、晴れた日には逆光や斜光を利用して、こうした陰影の強い写真を撮ることができます。撮影場所に着いたら、まず太陽の位置を確認することが欠かせません。この写真は、逆光の位置にカメラを構え、被写体がフレームインした瞬間にシャッターを切ったものです。AFは動体に対してもスムーズに合焦しました。露出は背景の海に合わせているため、人物はほぼシルエットになっています。
上の写真とほぼ同じ場所から、180度後ろを振り返って撮影したのが、下の観覧車の写真です。太陽を背中に浴びた順光の状態となり、濃厚な青空を表現できました。冬の晴天は空気が澄み、遠方まで視界が開けるため、逆光・斜光に限らず順光でも見栄えのする写真が撮れます。
次の2枚は、夕暮れ時に撮影したもの。実はこの公園は、日の出だけでなく日の入りも見られる場所なのです。ホワイトバランスを「太陽光」にセットして、夕焼けを鮮やかな色で再現しました。どちらも逆光気味のシチュエーションですが、コントラストの低下はほとんどなく、くっきりとした描写になっています。さらに最後の1枚は、日没直後の観覧車です。
本レンズの解像力は他に比べて圧倒的に高いとはいえませんが、各種の収差は目立たないように補正され、ズームの全域を安心して使える描写性能を持っています。それ以上に気に入ったのは、快適なAFスピードと鏡胴の堅牢性です。速写性を重視した望遠スナップのほか、スポーツやポートレート用に活躍してくれます。
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