あこがれを手にする前のフルサイズ一眼入門(前編)――買う理由と買わない理由(1/2 ページ)
かつて憧れの存在だったフルサイズのデジタル一眼は、いまや少し予算を奮発すれば、手が届く価格帯になっている。買うべきか買わざるべきか。フルサイズ機とAPS-Cサイズ機を比較しながら検討してみよう。
一般向けデジタル一眼レフに使われるイメージセンサーには、大きく分けて「APS-Cサイズ」と「フルサイズ」の2種類がある。APS-Cサイズとは、およそ24×16ミリ程度のセンサーサイズを指し、入門機から上級機まで多くのデジタル一眼レフが採用している。一方でフルサイズとは、35ミリフィルムと同寸となる36×24ミリのセンサーサイズのことだ。
フルサイズセンサーを搭載した製品といえば、以前はボディのみで20〜30万円以上もしたが、昨年後半、フルサイズ機の中では比較的リーズナブルなモデルとしてニコン「D600」とキヤノン「EOS 6D」が登場した。どちらも現在の実勢価格は10万円台の後半だ。これでも手ごろな価格とはいえないが、写真撮影を趣味にしている人なら、ちょっと頑張れば手が届くくらいお値段、といっていいだろう。
・小さくて取り回しに優れた快適フルサイズ一眼――ニコン「D600」
・小型化と低価格化で身近になったフルサイズ一眼レフ――キヤノン「EOS 6D」
高感度画質とボケの表現力がメリット
フルサイズ一眼のいちばんの魅力は、大きなセンサーによって生み出される画質の美しさだ。同じ画素数で比較した場合、フルサイズセンサーはAPS-Cサイズセンサーに比べて1画素あたりの受光面積が2倍以上もあり、より多くの光を取り込めるようになっている。十分な光が得られることで、ダイナミックレンジや感度の面で有利になり、結果として豊かな階調や低ノイズの高感度画質がもたらされるのだ。
下の写真は、APS-Cサイズ機「EOS 60D」とフルサイズ機「EOS 5D Mark III」を使って同じ設定で撮影したもの。センサーサイズ以外に画素数や処理エンジンが異なるので厳密な比較にはならないが、画質にこれほど差が生じているのは、センサーサイズの違いによるところが大きい。
フルサイズ一眼のもうひとつの魅力は、ボケの美しさだ。APS-Cサイズ機とフルサイズ機を使って同じ画角で撮影する場合、APS-Cサイズ機はセンサーサイズが小さい分だけ、焦点距離を広角側にシフトする必要がある。広角になるほど、ピントが合ったように見える前後の範囲(被写界深度)は広くなり、ボケ量は小さくなる。つまり、同じ画角で撮る場合、APS-Cサイズ機よりもフルサイズ機のほうが背景がよくボケる、ということだ。
もちろん、ボケることが必ずしもいいとは限らない。近景から遠景までシャープにピントがあった、ボケの少ない写真を狙うこともある。また、ボケすぎることがかえって不都合になる場合もあるだろう。ただ、ふだんコンパクトデジカメやスマホの写真に見慣れた目で見ると、フルサイズ機によるボケ味のある写真が新鮮に感じられることは確か。ピント合わせた部分の前後がボケることで、メインの被写体のみが際立ち、立体感のある写真が得られるのだ。ボケは、肉眼では見られない写真ならではの効果といってもいい。
下の写真は、APS-Cサイズ機とフルサイズ機を使って、同じ撮影距離で、画角と絞り値をそろえて撮影したもの。フルサイズ機のほうが背景のボケ量が多いことが分かるはずだ。
カメラの機構や操作の面では、ファインダーが大きく見やすいことがフルサイズの利点といえる。大きなファインダーは被写体の確認がしやすいほか、使っていて単純に気持ちがいい。また、フィルム時代から一眼レフ機に親しんでいる人にとっては、レンズに表記された焦点距離のそのままの画角で撮影できることも、フルサイズのメリットのひとつになるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.