「とにかくカッコイイ」「新しい」カメラを作ろう――受け継がれるオリンパスの“PENイズム”(前編):インタビュー(2/2 ページ)
オリンパス「OLYMPUS PEN」シリーズは初代から5年が経過するものの、いまでもそのルックスとコンセプトは色あせることがない。最新モデルまで脈々と受け継がれているPENイズム。そのヒミツを聞いてみることにしよう。
━━あえてカメラらしさ、写真機らしさを前面に出したということですね。
高橋氏: そうですね。カメラらしさ、写真機らしさというのを出したという感じですね。デジタル時代になってカメラの性能が向上する一方、私たちが中高校生の時に憧れていたカメラに対する機械をいじる楽しさみたいなものがだんだん薄れていた気がして、それを取り戻したいという意図もありました。
━━2008年秋と言えば、一眼レフのEシリーズも豊富に取りそろえていた時期ですが、それとは重複しないスタイルでいこうという意図はあったのでしょうか。
高橋氏: それは当然ありました。
片岡氏: 本日はインタビューを受けるということで5年前の資料を見ていたら、当時を思い出してつらかった記憶がよみがえってきました(苦笑)。
新しいものを作りたいという思いはあったのですが、どうしていいのか分からず試行錯誤を繰り返した末にこのデザイン(Photokinaで参考展示したデザイン)が出てきて、若い人からもこれはカッコイイとい言われた時に初めて、この方向だと確信しました。
ここにたどり着くまでには本当に苦労しました。新しい機能やデザインを取り入れすぎて本質を見失ってしまったり、トレンドを意識しすぎてしまったり。「何がしたいのだろう」と相当、悩みました。
高橋氏: でも、今の方向性が決まってからは、速かったですね。
━━「新しいものを作りたかった」とのことでしたが、その頃だと「E-620」や「E-30」などが写真機らしい、カメラらしいスタイルの製品としてラインアップされていました。そのなかでなぜ、グリップもなくファインダーもなく、まったく外観の異なるものが登場したのでしょうか。何か危機感みたいなものがあったのでしょうか?
片岡氏: そうですね。当時は一眼の市場が全体的に伸び悩んでいるという背景もありました。市場が伸び悩んでいる時というのはコンサバに動くものですが、そこで私たちがスペックや価格で他社との差別化を図るにも限度があるとも感じていました。
「何か違うものはないのか」と市場を調査していたところ、一眼レフを買おうと思ったのだけど買わなかったという人が相当数、存在していたことが分かりました。その理由として挙がったのが、一眼レフは「大きくて」「重くて」「難しそう」の3つでした。一眼レフを買えばいい写真は撮れるのだろうけど、自分には無理だと思われている方が多かったのです。
その人たちに手軽にキレイな写真を撮れますよと示すには、今までのカメラの延長ではなく、「画質を保ったまま小さくする」「背面液晶でのライブビュー撮影に特化する」など、違うアプローチが必要ではないかと考えたのです。
━━新しいものを作りたいと思いながら、製品名は「PEN」となりました。昔を知る人にとって製品をイメージしやすい反面、昔のカメラをデジタルで復刻したとも受け取られかねない危惧もあったかと思いますが、それでもPENと名付けたのはなぜでしょう。
片岡氏: 名前をどうするかという議論は当然ありました。ですが、あえて「PEN」とした一番の理由は、社内の若い層がPENで行きたいと主張したからです。
我々の世代からすると、PENと名付けると銀塩時代のPENのデジタル版という見方をしてしまいがちですが、社内の若い人に話を聞くと「あえて、今だから」と返ってきました。当時のPENというコンセプトが現代によみがえったという希望も含めて、PENという名前を象徴的に使いたいという話でもありましたので、若い人がそういうならそうしましょうかと。
当時はみんなで新しいものを作ろうという思いがあったので、みんなの思いが「PEN」という名前を引き出したのであれば、あえて違った名前をつけるよりはそのまま行こうという感じで決まりました。
高橋氏: 名前もそうですし、デザインもそうなのですが、ノスタルジーとして復刻させようとしたわけではなくて、今になったらそれが新しく感じられるというのが話し合いの中で分かったので、ではそれでいきましょうかということで進めました。
(後編に続く)
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