Xマウントユーザーの“ファースト標準ズームレンズ”に――富士フイルム「XF16-55mmF2.8 R LM WR」:交換レンズ百景
富士フイルムのXマウントズームレンズに、3本目のWRレンズが登場。広角から標準域までをF2.8通しでカバーできる、非常に使い勝手のいいレンズだ。Xマウントユーザーの“ファースト”標準ズームレンズといっていい。
富士フイルムの3本目の「WR」レンズが登場した。WRレンズとは、防塵・防滴・マイナス10℃の耐低温構造を持つ、タフなレンズシリーズのことである。このWRシリーズと防塵防滴構造の「X-T1」を組み合わせることで、過酷な環境での撮影が可能になるのだ。
このレンズは35ミリフルサイズ判換算で24ミリから84ミリと、とても使いやすいズームレンジを持つ。しかもF2.8通しと明るく、開放から安心して使える設計だ。レンズ構成は12群17枚。非球面レンズ3枚、EDレンズ3枚で各種収差を低減し、定評ある多層コーティング処理「HT-EBC (High Transmittance Electron Beam Coating)」と新開発のナノGIコーティング技術を投入して、ゴーストやフレアの発生を抑えている。また、WRシリーズのウリである防塵防滴耐低温構造を実現するために、鏡筒の14カ所にシーリングを施している。
レンズの仕上げも高級感あふれるものになっている。金属製の鏡筒はズシリと重量感があり、やや太めなピントおよびズームリングが迫力だ。WRレンズなのでやや動作が重めなのはシーリングの影響だろうか。しかしこのトルク感が心地よい。絞りリングのクリックストップの節度感も良好だ。
ズーム全域で開放から安定した描写を見せる写りもいい。ワイド端でも目立った周辺光量落ちもなく、クリアで澄んだスッキリとしたシャープさが、キリリとしていて気持ちよく感じる。色乗りは若干アッサリ目な印象だが、カメラ側のフィルムシミュレーションで調整すればいいだろう。ディストーションも良好に補正されているので、建造物など直線が多い被写体でもイメージ通りに撮影できるはずだ。
なお、手ブレ補正機能は持たないので暗所での撮影には注意が必要だ。明るい開放F値を生かすか、高感度もしくは三脚使用で対処したい。
ワイド端で晴れたハーバーを撮影。F8まで絞れば周辺光量落ちも少なく、画面隅々まで均一で安定した描写を得られる。解像感もよく、停泊するクルーザーから、防波堤で羽を休めるカモメの群れも分かる。
35ミリフルサイズ判換算で24ミリ〜84ミリというズーム域はとても使いやすい。ボディに装着するファーストレンズとしてオススメだ。街をブラブラと歩きながら、気になった被写体を小気味よく撮影できる速いオートフォーカスもいい感じだった。
ワイド感を出して港を撮影。マイナス補正をかけてフェリーを強調してみた。やや大きく存在感があるレンズだが、X-T1に装着して使っても違和感はなかった。縦位置バッテリーグリップもしくはハンドグリップを装着するとより安定しそうな印象を受けた。
歴史的な洋館を見上げて撮影したが、良好に補正されたディストーションのおかげで歪みも少なくシャープに建造物を写しとることができた。洋館の壁面やガラス、カーテンの質感描写にもご注目頂きたい。
外光がわずかに差し込む洋館。開放F2.8で撮影したが実にシャープでクッキリとした写真が得られた。テーブルにかけられたクロスの描写、部屋の雰囲気がいい感じである。手ブレ補正機能を持たないレンズなので、もっと暗い場所では感度を上げるか、可能なら三脚を使用したい。
プログラムオートで神社に奉納されている提灯を撮影。太陽光の反射が強いのでややプラスに露出補正をした。F3.2という絞り値になったが画面の中心部から周辺部までなかなかの写りだと感じる。提灯の立体感も伝わってくる。
絞り開放でのボケ味もいい雰囲気だ。若干二線ボケの傾向も見受けられるが、上質でスーッと拡散していくような描写は絵作りにいい作用を与えてくれるかもしれない。Xマウントユーザーの“ファースト”標準ズームレンズだと感じた。
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