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日常風景も新鮮に表現できるボケとキレ味――キヤノン「EF35mm F1.4L II USM」交換レンズ百景

キヤノンの35ミリ大口径Lレンズが約17年ぶりにモデルチェンジし、「II型」となった。新開発BRレンズの搭載によって、どんな写りが得られるのか。実写を見ながらチェックしていこう。

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青色の光を制御して美しいボケを追求

 キヤノン「EF35mm F1.4L II USM」は、35ミリフルサイズに対応した新しい大口径単焦点レンズだ。1998年に発売された「EF35mm F1.4L USM」の後継モデルにあたり、レンズ構成を一新することで画質や操作性を高めている。発売は今年10月で、希望小売価格は28万5,000円(税別)となる。

EF35mm F1.4L II USM
キヤノン「EF35mm F1.4L II USM」。今回の主な使用ボディ「EOS 6D」に装着

 まず注目したいのは、新たに「BRレンズ」を採用したこと。これは同社が新開発した「BR(Blue Spectrum Refractive Optics)光学素子」を挟み込んだ複合レンズで、通常のレンズでは補正しきれない青色(短い波長域)の光を大きく屈折させる働きを持っている。このBRレンズによって集光位置を限りなく1点にして、大口径レンズに生じやすい色にじみ(軸上色収差)を高度に補正しているという。

 さらに、研削非球面レンズやUDレンズによる各種収差の除去や、特殊コーティング「SWC」によるフレアやゴーストの低減、フッ素コーティングによる防汚対応を実現。操作面では、最短撮影距離の短縮や、AFの高精度化、防塵防滴対応などが使い勝手を高める進化といっていい。

 さっそくこの新レンズEF35mm F1.4L II USMを持ってスナップ撮影に出掛けてきた。1枚目の写真は、落ち葉の真俯瞰ショットだ。鮮やかさを強調するため、ピクチャースタイルは「風景」を選択。細かい葉脈部分までリアルに再現できた。

EF35mm F1.4L II USM
マニュアル(F2.8、1/160秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景、カメラ:EOS 6D

 次も同じく落ち葉を撮影。こちらは、絞りを開放値F1.4にセットして、やや斜めから狙うことで手前と奥をぼかして表現。こうした近接撮影で一般的に生じやすい、ボケ部分の色にじみはほとんど見られず、BRレンズの効果はてきめんといえる。

EF35mm F1.4L II USM
マニュアル(F1.4、1/1000秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS M10

 開放値でのクリアで滑らかなボケは次のカットでも確認できる。カメラをローポジションに構えることで草木を前ボケとして写し込み、画面に奥行きを与えた。

EF35mm F1.4L II USM
マニュアル(F1.4、1/2000秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

 最短の撮影距離は28センチで、最大撮影倍率は0.21倍となる。次の写真では、40センチ程度の距離から、高さ約4センチの木馬を撮影。背景に見えていた街の明かりは、きれいな玉ボケになり、クリスマスカードにでも使えそうな華やかな写真となった。

EF35mm F1.4L II USM
マニュアル(F1.4、1/8秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

自然な画角とほどよい距離感が楽しめる

 外装は、表面にレザートーン塗装を施した高品位な仕上げだ。手に取るとしっかりした剛性感が伝わり、Lレンズらしい高級な雰囲気も漂っている。

 外形寸法は最大径80.4×全長105.5ミリ。フィルター径は72ミリで、質量は約760グラムだ。前モデルと比べた場合、最大径は1.4ミリ、全長は19.5ミリ、質量は180グラムそれぞれアップしている。

 広角単焦点のLレンズとしては、「EF14mm F2.8L II USM」や「EF24mm F1.4L II USM」よりも重くなったのは少々気になるところ。ただ大きな負担を感じるほどではなく、ボディ側着時のバランスは悪くない。普段Lのズームレンズを使っている人なら、これくらいの重さは許容範囲かもしれない。

EF35mm F1.4L II USM
レンズ構成は11群14枚。絞りは9枚羽根の円形絞りを採用

 用途としては、スナップや風景のほか、ポートレート用にも好適だ。自然な画角と滑らかなボケを生かしながら、ほどよい距離感で仕草や表情を捉えるのに適している。

 鉄棒で遊ぶ少年をハイアングルから狙った。絞りは開放を選択。ピントを合わせた顔の部分はシャープに解像し、そこから前後に向かってスムーズなボケが生じている。

EF35mm F1.4L II USM
絞り優先AE(F1.4、1/640秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

 AFは素早く作動し、動体撮影にも十分なレスポンスを実感できた。また、幅の広いフォーカスリングによるマニュアルフォーカスの操作も快適に行える。

EF35mm F1.4L II USM
マニュアル(F7.1、1/160秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D
EF35mm F1.4L II USM
シャッター優先AE(F16、1/1000秒)、ISO200、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

 今回は短期間の試用ながら、EF35mm F1.4L II USMの高画質を気持ちよく味わうことができた。特に、滑らかなボケが作り出す立体感と奥行き、そして合焦部分のキレのある描写は絶品であり、どんな被写体のどんなシーンでも、すべて開放値で撮影したいと感じたくらいだ。

 価格は手ごろとはいえないが、35ミリという幅広い用途に役立つ使いやすい焦点距離なので利用シーンは多いはず。キヤノンユーザーなら無理して買っても後悔はしないだろう。

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