電子書籍リーダー端末「iriver Story HD」の完全レビュー

Google booksというエコシステムを利用できる世界初の電子書籍リーダー端末「iRiver Story HD」。本稿ではGood e-Reader Blogのスタッフによる同端末のレビューをお届けする。

» 2011年08月23日 10時00分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 われわれはTargetで独占的に販売されている電子書籍リーダー「iRiver Story HD」(以下、Story HD)のレビューに着手した。この製品は、Google booksというエコシステムにあるコンテンツを利用できる世界初の電子書籍リーダーである。この新たなデバイスが競合するデバイスにとどう比べてどう評価され、またHDの意味するものとは何なのかを考えていく。

ハードウェア

 Story HDの特徴は、1024×768ピクセルという途方もない解像度を持つ6型の電子ペーパーディスプレイである。これは強烈にパンチが効いていて、HDをセールスポイントとしてどこに適合させているのかがよく分かる。この解像度のおかげで、ほかの電子書籍リーダーと比較しても、画像とコミック書籍の表示は素晴らしく、非常にいきいきとしている。

 ディスプレイはLG製の電子ペーパーを採用しており、解像度は213dpi。CPUにはFreescale i.MX508(800MHz)を搭載しており、デバイスはきびきびと動作するはずだが、悲しいことにそうではない。ページ送りのスピードは電光石火でAmazon Kindleと互角だが、日常的なタスクをこなすスピードに欠けている。例えば電子書籍をクリックして開いたとき、実際に書籍が開くまでほぼ35秒掛かった。Google ebookstoreへのアクセスもそうした案配だ。

 電子書籍とコンテンツを保存するのに2Gバイトの内蔵メモリを搭載するが、実際に利用できるのは1.5Gバイトほど。SDメモリーカードを利用すればストレージを32Gバイトまで増設できる。

 デバイスの物理的側面に目を向けると、タイピングが楽に行えるフルQWERTYキーボードを搭載している。ほとんどのデバイスで見られる十字キーではなく、上下左右のスクロールにスライドバーを利用する。ほとんどの電子書籍リーダーは十字キーもしくはトラックパッドを搭載し、その真ん中のボタンをクリックするとENTERキーとして機能する。Story HDは物理的なENTERキーをスライドバーの側に、その反対側にバックキーを配置している。数字と記号にアクセスするためには対応するボタンを押す必要があるが、大文字、数字、小文字が混在する場合などには辟易とさせられる。

 Story HDのデザインはシンプルだ。キーボードとは別にMini USBポートとデバイスの電源をオン/オフするスライドキーが背面に存在する。オーディオ機能はなく、ヘッドフォンジャックは存在しない。この電子書籍リーダーはただ読書するために存在するのだ。

 書籍の購入はWi-Fi接続経由でGoogle ebookstoreに接続することで行う。しかし、もし無線LANのアクセスポイントのパスワードが20文字以上の場合、あなたはついていない。Story HDはパスワードの長さに制限があり、ただ「パスワードが長すぎます」とだけ表示するからだ。Wi-Fi接続を行うために、わたしはパスワードを無効にしなければならなかった。

 全体的にデバイスのデザインは非常に良い。前面はホワイトで背面はアクセントとなるブラウンだ。キーは金色でデバイスに素晴らしい印象を与えている。わたしはこのデバイスが読書以外のいかなるタスクを実行するにも非常に遅いということを知った。Google ebookstoreへ接続するといつも、Wi-Fi経由の接続時でさえ、Wi-Fi接続を探していることを継続的に知らせてくる。これにより電子書籍の購入という体験は忍耐の練習となる。iRiverはStory HDにどれだけRAMが搭載されているか明かしていないが、わたしは64Mバイトではないかと思う。

ソフトウェア

 Story HDはLinuxベースのOSを搭載している。安定した堅固なOSであり、初期設定時にファームウェアアップデートが行われたときを除けば、クラッシュにはまったく遭遇しなかった。これは上述したように20文字以上のWi-Fiパスワードを利用していたためであり、アップデート時に最大文字数を制限した。

 この製品は非常に基本的な電子書籍リーダーで、専用のピクチャービューワなどは持っていない。このデバイスを購入しようという方の前提は書籍の購入か、隠しWebブラウザの利用となる。

 Story HDを利用した電子書籍体験はページ送りのスピードに関してAmazon Kindleと同じくらい速い。はじめに書籍を開くときは永遠に感じられるほどの時間が掛かり、それにうんざりする人もいるかもしれないが。デバイスは多くのフォーマットに対応しているので、ほかのストアで購入したりインターネットからダウンロードすることもできる。PDF、EPUB、TXT、DOC、PPT、XLS、HWP、DJVU、FB2、CBZ、Adobe Digital EditionsのEPUBおよびPDFに対応している。

 そう、この電子書籍はCBZ形式の書籍に対応しているので、漫画、アニメ、グラフィックノベルのファンであれば、このデバイスはあなたに向いている。CBZ形式以外にもJPG、BMP、PNG、GIF、ZIPなどをサポートしているがCBR形式には対応していない。

 同じ価格帯のほかのデバイスであってStory HDに足りない機能の1つは、読書体験をカスタマイズできないことだ。行間隔、余白、フォントの変更など、Kindle、NOOK Simple Touch、Koboにできることができない。唯一できるのは、デフォルトフォントのサイズを拡大することだ。また、水平モードから垂直モードへ画面の向きを変更できるが、これは読書しているときにだけしか行えない。

 Google ebookstoreは米国以外では利用できない。そのため、このデバイスは米国のTargetで販売されている。米国内であれば電子書籍を買ったりダウンロードしたりできる。米国外のユーザーは、無料書籍をダウンロードすることすらできない。代わりに、Story HDで利用するGoogleアカウントを使ってPC経由でGoogle ebookstoreにアクセスするように促される。PCで書籍を購入すれば、デバイスと同期できる。

 わたしはこの前提を嘆かわしく思う。Googleは電子書籍でほかの企業と競争しようとしているのに、iRiverの電子書籍リーダー上での書籍購入は米国の顧客にしか許可しないというのはどういうことだろう。Googleは人々が米国外でも読書をしたがっているということを認識してほしい。これはひどいところだ。

 この電子書籍リーダーは読書にのみ向いているとしたが、まさにその通りだ。ゲームもなく、ピクチャービューワもなく、設定メニューも項目がほとんどない。このデバイスは必要最小限の電子書籍リーダーで、NOOK Simple Touch、Kobo Touch、Amazon Kindleと互角であることを考えると、選択肢は明らかだ。Story HD上のソフトウェアはないに等しい。読者の電子読書体験を作り上げる柔軟さはまったくないといえよう。わずかな希望の兆しとしてはGoogleが、Google booksがカナダでもうすぐ利用可能になるとメールを送ってきたことだ。

われわれの考え

 米国在住でGoogle経由で何百万冊もの無料書籍をダウンロードしてみたいのであれば、これはそんな読者のためのデバイスだ。現在のベストセラー作家による100万冊を超える有料タイトルにもアクセスできる。米国外に居住しているなら、自身の書籍データをデバイスにロードするしかない。自身の電子書籍をロードすることについて、このデバイスは素晴らしいグラフィックノベルに対応している。

 Story HDの全体的なデザインは優雅で、わたしは金色のキーボードの虜になり、それは歯の詰め物や金のチェーンがなくとも、金持ちのラッパーになったような気持ちだ。非常に洗練された前面色のホワイトは本当に気に入った。キーボードも使いやすく、十字キーがなくスライドキーが含まれていたことは新鮮だった。

 Story HDは隠しWebブラウザを有しており、これはさらに改良されるかもしれないし、将来のファームウェアアップデートに含まれるかもしれない。Webブラウザへのアクセスの仕方が分かる動画をYouTubeチャンネルに上げてある。悲しいことにWebサイトを訪問することはできるが、サイト内のリンクをクリックすることはできない。

良い点

  • 圧倒的な解像度
  • しっかりしたキーボード
  • Google booksのエコシステム(米国に居住する読者)
  • CBZ形式のコミックとグラフィックノベルを読めること
  • 使い勝手の良さ
  • 書籍を読むのは簡単でページ送りが速い

悪い点

  • 米国外で動作しない
  • 電子書籍のフォントサイズ以外のカスタマイズができない
  • 拡張機能がない
  • インターネットエクスペリエンスが遅い
  • WebブラウザがWebサイトを見つけて開くまで2分31秒掛かった

結論

 米国在住であれば、これは頼りになる電子書籍リーダーであり、無料の書籍を何百万冊も利用でき、予算が限られているか古典的なパブリックドメインの書籍をデバイスにロードしたいのであれば完ぺきだ。

 米国外の方であれば、望みはない。是が非でもこのデバイスは避けてほかのデバイスを購入した方がよい。Story HDはTargetで独占的に139ドルで販売されているが、もっといい仕事をしてくれるデバイスがAmazon、Barnes & Noble、Sony、Koboなどから販売されているのだから。

評価:4/10

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