ここがすごいぞGALAPAGOS STORE(2/2 ページ)

» 2012年03月22日 10時00分 公開
[ITmedia]
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電子書籍ではビューワこそ大事

 電子書籍を読むには、当然ながら、ディスプレイを備えたデバイスが必要となる。そして、デバイス上で電子書籍を読むときに用いられるソフトウェアが、俗に言う「電子書籍ビューワ」だ。電子書籍では、何はともあれビューワがないと話が始まらないし、そのビューワの機能や使い勝手如何で、電子書籍の読書体験は快適にも、苦痛にもなる。

 ここで、ビューワの機能や使い勝手は電子書籍サービスごとに大きく異なっているということを知っておきたい。つまり、読みたい作品を選ぶのもさることながら、どの(電子書籍サービスで提供される)ビューワで読むのかも、読者の選択に委ねられる。紙の書籍ならどの書店で購入しても同じように読めたものが、電子書籍では、同じコンテンツでも、どこで買うか(どこのビューワで読むか)が重要なポイントになるのだ。

たかが栞、されど栞

 例えば、栞(しおり)の機能。

 最後に読んでいた位置を保存し、次に読み始めるとき自動的にその位置を表示するという機能なら、ほとんどのビューワで対応している。しかし、最後に読んでいた位置だけでなく、コンテンツの任意の位置に印を付ける機能となると、対応しているビューワはまだまだ少ない(脚注:専用端末ではほとんどが有しているが、スマートフォンやタブレット端末向けのビューワでは、この機能を搭載しているところはまだ数えるほどしかない)。紙の書籍なら、栞をはさんだり、付箋を貼ったり、ページの端を折り曲げたり……と、あの手この手で簡単に行えることなのだから、電子書籍でもそうした機能が欲しいと思うのは人情だろう。

 GALAPAGOS STOREのビューワであるGALAPAGOS Appでは、「しおり1〜6」という名前で位置を保存できる機能(脚注:「しおり」に登録できるのは、XMDF形式のコンテンツで1冊当たり6カ所まで。.book形式では同1カ所のみ)に加え、コンテンツ内の任意の文字列を、蛍光ペンでなぞるようにマーキングできる「マーカー」機能も用意されている(脚注:XMDF形式のコンテンツのみ)。紙の本の読書で言えば、「しおり」はスピンと呼ばれる紐の栞、「マーカー」は、線を引いたり、ページの端を折ったりするのと同じようなものだ。

 GALAPAGOS Appのビューワならではの機能としては、コンテンツに設定された「しおり」と「マーカー」をまとめて一覧表示できる。電子書籍の場合、これがあるとないとでは、使い勝手が大きく異なる。

しおりはメニューから呼び出す(写真=左)/しおりとマーカーを一覧表示できる機能は一見地味だが、これが非常に便利(写真=右) (画像出典:「1秒!」で財務諸表を読む方法[実践編] ―「会社の実力」を見抜くポイントがわかる本 小宮一慶/東洋経済新報社)
任意の文字列をマーキングできるマーカー機能。この機能は記憶の補助として非常に便利だが、今後、SNSなどとの連携が進めば、秀逸なソーシャルリーディング機能に進化するかもしれない(画像出典:「1秒」で財務諸表を読む方法 小宮一慶/東洋経済新報社)

 電子書籍に用いられている主要なフォーマットでは、別の位置にジャンプするためのリンク機能というものがあり(Webでいうページ内リンクと同様のもの)、親切な作りの電子書籍だと、目次の章や節がリンクとして設定され、そこから目的の位置へ簡単にジャンプできるようになっている。しかしこれは電子書籍を制作する場合に、そのように作り込む必要があり、コンテンツによっては、章のみがリンクになっている場合もあれば、目次にリンクがまったく設定されていないものも多い。電子書籍読者の現実的な感覚で言えば、目次の章や節の細かいところまでリンクが設定されている親切な電子書籍コンテンツに巡り会うのは稀というのが本音に近い。こうした現状では、複数個所に設定できる「しおり」は必須とも言える機能なのである。

 始めから終わりまでシーケンシャルに通読して終わりという書籍なら、目次リンクがなくてもさほど困らないが、例えば、構成や状況設定が複雑なミステリーなどでは、読んでいる途中でも、あの場面のあのシーンはどうだったかと戻って読み返したくなることはよくある。紙の書籍なら、内容をざっと目で追いながらパラパラとページを繰るということが簡単にできるが、電子書籍ではなかなかそうはいかない。そういうとき、自分で任意につけられる「しおり」や「マーカー」が大きな威力を発揮する。気になった場面にしおりを設定したり、怪しい登場人物や違和感を覚えた記述にマーカーを設定しておけば、いつでもピンポイントに移動して、すぐに読み返すことが簡単にできる。

 後から何度も参照したり、再読したりするようなコンテンツでも、この「しおり」や「マーカー」は強い味方となる。だいぶ時間がたってから読み返したりすると内容や構成を覚えていないこともよくあるが、「マーカー」でつけたキーワードの一覧を見ると、読んだときの記憶を呼び起こす大きな助けになる。

 紙の書籍ではあまり再読ということをしなかった人でも「読んだ本は常に手元にある」という電子書籍の便利さを体験すれば、ふとしたときに一度読んだ本を読み返したくなることがきっと増えるはず。そういうとき、さっと目的の位置を探し、簡単にピンポイントでジャンプして、そこからすぐに読み始められるというのは、一度使ったら手放せない機能となること請け合いである。

 「マーカー」一覧の意外な効能として、自分の読み方を客観的に知ることができるというのもある。読んでいる際に気になる言葉やフレーズをどんどんマークしておき、後から自分がキーワードと思ったものを一覧すると、そのコンテンツを自分がどういう風に読んでいたのかが一目瞭然となる。これはなかなか新鮮な体験だ。読んでいるときには重要なキーワードと思えたものが、最後まで読んでみるとそうではなかったと気づかされることもしばしばで、自分の読み方というものを見つめ直すきっかけともなる。もちろん、後から違うと思ったキーワードは、簡単に削除することもできるので、紙の書籍でよくあるような、稚拙な線引きを後から読み返すときの気恥ずかしさとは無縁である。

辞書連携は圧倒的に便利

 GALAPAGOS STOREでは、「辞書コンテンツ」と呼ばれる、普通の書籍とは少し異なる形式のコンテンツが販売されている。キーワードに「辞書コンテンツ」を指定して検索することでリストアップできるこれらのコンテンツは、2012年3月19日現在で33件がヒットする。

 国語系では、言葉の使い分けを丁寧に解説していることで定評がある「学研 現代新国語辞典(改訂第四版)」をはじめ、「三省堂故事ことわざ・慣用句辞典」、「用例でわかるカタカナ新語辞典(改訂第2版)」などが用意されている。英語系では、「リーダーズ英和辞典(第2版)+リーダーズ・プラス」「新編英和活用大辞典」「学研 スーパーアンカー英和辞典(第4版)」「学研スーパーアンカー和英辞典(第2版)」といった定番ものの辞書のほか、「オックスフォード実例現代英語用法辞典」「専門用語100万語英和大辞典」「専門用語100万語和英大辞典」など、バリエーションに富んだラインアップとなっている。

 さらには英語だけでなく、ドイツ語辞書として「クラウン独和辞典(第4版)」「新コンサイス和独辞典」「CJKI和独大辞典」や、イタリア語辞書の「デイリー日伊英・伊日英時点」、ほかにスペイン語やベトナム語の辞書もある。

 これらの辞書コンテンツは、それ単独で「辞書アプリ」のように利用できる。これだけならどうということはないが、GALAPAGOS Appのビューワでは、ほかのコンテンツを読んでいるときに、あらかじめ購入した辞書コンテンツで検索するという連携が可能となっている。

 コンテンツを読んでいて調べたい語に出くわしたときは、その語を選択し、「辞書」のアイコンを選択するだけでよい。すると、画面下方にサブウィンドウが開き、そこに自分が購入した辞書コンテンツでの検索結果が表示されるようになっている。

 数多ある電子書籍ビューワの中でも、読んでいるコンテンツから簡単に辞書を引く機能をサポートしているもの自体まだまだ少ないし、辞書機能があったとしても、検索できる辞書はあらかじめビルトインされたものだけという例が多い。GALAPAGOS Appのビューワなら、自分が選んだ辞書を検索対象にできるので、よりこだわった検索が手軽に行えることになる。

 GALAPAGOS Appの辞書連携機能では、検索対象として個別の辞書を選択できるだけでなく、GALAPAGOS Appに登録してあるすべての辞書コンテンツを指定することもできる(辞書連携の設定で『全辞書』を選択)。こうすると、自分の手持ちの辞書コンテンツをまとめて検索することもできる。

先ほどのマーカーと同様、文字列を選択して辞書アイコンを押すと、辞書が引ける。この辞書も自分に合った辞書を使えば、さらに便利に(画像出典:ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版)

 さらに「ウェブ検索」という設定も可能となっている。文字通り、指定したキーワードでインターネットを検索するという動作だが、普通の辞書にはあまり載っていない固有名詞を頻繁に検索するような場合は、これが案外重宝する。

 読書しながら調べる、調べながら読書するというのは、電子書籍ならではの読み方だ。GALAPAGOS Appなら、それが手軽に、気軽にできるようなお膳立てがされているといえよう。



本紹のどか

基本的には風穴さんも高く評価してるね。XMDFを開発するベンダーとしてはビューワの強みを生かしやすいところがあるのかな。.bookもサポートしつつだから統合された読書体験を提供するのは大変そうだけど、新しい読書体験をしっかりと根付かせようとする熱い気持ちが感じられるね。



まとめにはいったわね……。でもまぁそういうこと。GALAPAGOS STOREはそのネーミングとかで揶揄されたり、閉鎖系のようなイメージを持たれたりもしていたけど、実際には今あるストアの中で屈指の安定感を持ってるのよね。風穴さんはGALAPAGOS Appの隠れたいいところを紹介してくれているけど、それ以前の部分、つまり、ビューワの完成度が高くてサクサク動くから快適に読めるのよね。この辺りはさすがシャープといいたいわ。今後マルチプラットフォーム対応が進めば、文句なしのイケてる電子書籍ストアといっていいんじゃないかしら。


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