沖縄から全国へ――Reader Storeに沖縄発の書籍が並ぶ

沖縄県で企画・編集・制作された沖縄発の電子書籍の配信がReader Storeで始まった。ストアの差別化と地場産業の創出という2つの意図がうまく合致した格好だ。

» 2012年03月23日 16時30分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
沖縄県での記者発表界にはソニーの電子書籍事業担当ビジネスプロデューサー、野村秀樹氏の姿も

 ブックリスタは3月23日、沖縄県で広告デザイン制作などを手掛ける沖縄スーパーコンテンツと連携し、沖縄県で企画・編集・制作された電子書籍の配信を開始した。現在、ブックリスタがプラットフォームを提供しているソニーの電子書籍ストア「Reader Store」で配信されている。

 同日から配信が開始されたのは、沖縄についてのさまざまな文献をまとめながらも絶版となっていた「おきなわ文庫」シリーズから「おきなわ歴史物語」「沖縄の子どもたち」「島の未来史」の3作品(各900円)。今後、沖縄の「食」という観点から制作されている「おきなわいちば」が3月30日から、沖縄県内で販売され、県外にはほとんど流通していない沖縄の人気ガイドブックシリーズ「OKINAWA100」(近代美術)が4月13日から配信される予定だ。

沖縄県外ではほとんど流通していない本や、電子書籍で復刻した「おきなわ文庫」がReader Storeに並ぶことになる

 今回の発表、端的に言えば、沖縄スーパーコンテンツはコンテンツの「アグリゲーター」だ。現在、多くの電子書籍ストアが直面しているのはどう「差別化」を図るか。品ぞろえに関して言えば、大手出版社の作品はほぼ横並びでストアに並ぶため、コンテンツで差別化を図りたいストアは、今回のように独自性のある作品を確保したいと考えている。一方、全国では流通していない書籍を刊行している出版社にとっても、Reader Storeのような電子書籍ストアで配信するメリットは大きい。

 今回、ブックリスタ陣営の中でもReader Storeでのみ配信が開始されたということは、ソニーが積極的にアクションを起こし、結果的にブックリスタ経由になったと推察される。ただし、長期的にはブックリスタ陣営のほかのストアでも配信される可能性はある。

 なお、今回の枠組みで電子書籍化(オーサリング)を行うのは、これまでeBook USERでも何度か取り上げてきた近代美術。沖縄に特化した電子書籍の販売サイト「沖縄eBooks」も手掛ける同社は、2月に地元の南風原町から「魅力発掘・発信、南風原町オーサリング人材育成事業」を受託している。沖縄で企画・編集・制作された文字通り「沖縄発の本」を全国へ届けたいという強い思いが、地場の雇用を創出しながら動いていることを高く評価したい。

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