「デジタル古書」が間もなく実現か

電子書籍を購入した私はそれを他人に譲渡すらできない――それが電子書籍の現状だ。しかし、欧州司法裁判所が「電子製品のライセンスは顧客間で再販可能」と表明されたことで、デジタルコンテンツに関する所有権のとらえ方が変わるかもしれない。

» 2012年07月09日 07時00分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 北米や欧州では書籍をかなり割り引いて販売する古書店が多く存在する。一方、デジタル領域で出版社は「デジタル古書」という概念に反発してきた。出版社は電子書籍を暗号化する際に極端な手法を採用しているので、もともとの購入者しかその電子書籍を利用できない。自分が購入した電子書籍を友人に譲渡しても、通常はもともと購入した時に利用したクレジットカード番号を要求されるので読むことができなかったりする。

 ところで、この「デジタル古書」という概念が欧州連合司法裁判所の判決により実現化される可能性がある。つい先日、欧州司法裁判所は「電子製品のライセンスは顧客間で再販可能」と表明した。

 この司法判断はOracleとUsedsoftの訴訟から派生している。問題となったのはUsedsoftが自社のさまざまな製品向けに大量のOracleライセンスを購入し顧客に再販した行為だ。Oracleはそれを不服とし訴訟を起こしたのだが、今回、ドイツ人の裁判官がこの判決を下したことは、デジタル古書販売への可能性を開く突破口となるかもしれない。

 高等法院はプレスリリースで次のように表明している。

 コピーライト保有者は有形・無形を問わず顧客にコピーを提供し、同時に代金支払いの見返りに顧客がそのコピーを無制限に利用する権利を与えライセンス契約に同意する。

 コピーライト保有者は顧客にコピーを販売し、それに伴ってそのコピーに対する配布権を失う。それに類する取引はそのコピーに対する所有権の移転を含む。よって、ライセンス契約がさらなる所有権の移転を禁じたとしても、コピーライト保有者は再販を阻止することはできない。

 よって、最初の購入者により販売されたコピーの購入者はそれを自分のコンピュータにダウンロードできる。それに類するダウンロードはコピーの購入者がその本来の目的に応じてプログラムを利用するのに必要なデジタル製品の複製と見なされなければならない

 この司法判断は中古ビデオゲーム・電子書籍業界に広く反響を引き起こしている。電子コンテンツは販売者がその製品を利用しない限り第三者に再販可ということで、それはもともとのライセンス契約を侵害するものだった。この司法判断により前例が確立され、所有権の移転が電子製品にも直接適用されるかもしれない。

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