読者も出版社も喜ぶ「最適解」――林信行が語るiOS版「電子書籍 GALAPAGOS」のインパクト(2/2 ページ)

» 2012年08月27日 23時45分 公開
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 中にはGALAPAGOS STOREを見て、これまでにもよくあった電子ブックサービスの1つ、と思う人もいるかもしれない。だが、GALAPAGOS STOREは、既に述べたように、1つの出版社の本だけでなく、複数の出版社を束ねて本を提供したサービスだ。

photo GALAPAGOS事業のこれまで

 これは簡単なようでいて、実はそれほど簡単ではない。狭い国土の中で、複数の会社が規格をまとめるのではなく、乱立させて派閥を争うことが多い日本の体質もあり、国内の電子ブックのフォーマットは混沌としている。

 シャープが自ら開発したXMDFという形式もあれば、楽天(kobo)などが採用する世界標準のEPUBもある。AdobeのPDFもよく使われているし、ボイジャーの.book(ドットブック)と呼ばれる形式もある。本来のガラパゴス発想であれば、シャープ製のGALAPAGOS STOREはXMDFしかサポートせずにほかを排除してしまいそうなものだが、実はGALAPAGOS STOREのアプリではXMDFの本に加え、.book形式のコンテンツもサポート。さらに、今後のアップデートで、EPUB形式にも対応する。混沌の壁を乗り越えて、読者に一種類でも多くの本を届けようというのだ。

 もちろん、その対応は現在進行中であり、まだ完璧ではない。例えば同じビジネス書でも、XMDFの本についてはマーカーなどの付加機能が全て使えるが、.book形式で提供されているものはしおりは挟めても、マーカーで文章をハイライトすることができない(ボイジャーのビューワでは下線が引けるので.book形式の欠点ではない)。こうした具合に、書籍単位で使える機能、使えない機能があり、初心者には混乱を招くこともありそうだ(そのため購入時に、どのフォーマットか分かるようにしてあり、操作パネルも一目見て違うものになっている)。

 これを「分かりづらい」と一蹴するか、「一冊でも本を増やすための努力」と見るかは人によって判断が分かれるかもしれないが、筆者は後者だと信じたい。なぜなら、GALAPAGOS STOREの奮闘は、これだけに留まらないからだ。

ポイントサービスでお得感も演出

 日本で電子ブックサービスのビジネスはなかなか大変だ。出版社は、紙の本を売るのが本業と思っているので、紙代、印刷代が掛からない電子ブックでも、紙の本の売り上げに影響するような大胆な値付けはしたくない、と思っているところが多い(実際、米国では、初期に電子ブックを安く売りすぎたために、出版社が電子ブックリーダーのベンダーに値上げ交渉をすることもあった)。

 そうはいっても、本を買う側としては「電子書籍なんだし、紙の本よりもお得感があって当たり前」という認識の人が多い。電子ブックサービスの提供社は、しばしば、この両者の板挟みで苦しい思いをする。

 何とかして双方を満足させられないか。そう考えた末にシャープが用意したのが「GALAPAGOSポイント」というシステム。ポイントといっても、量販店のポイントのように購入金額に合わせて付くものではない。ポイント自体を購入し、そのポイントでコンテンツを購入できるようになっているのだ。例えば、「即時ポイント10,000」のポイントパックを10,000円で購入すると、10,900ポイントが手に入る。1ポイントは1円として利用できるので、900円分お得に買い物ができる。月毎にポイントを自動購入するコースもあり、こちらはポイントの割増率がさらに高い。また、ポイントの購入額が多いほど、割増率が高く設定されているので、一度にたくさんポイントを購入すれば、何冊分ものお金が浮くようになっている。

photophoto ポイントのまとめ買い「即時ポイント」に加え、月々定期でポイントを購入することでよりポイントの割増率が高まる「月額定期ポイント」という、2種類のポイントサービスを用意している

 このほかにも、特定の条件を満たすとポイントがもらえるキャンペーンなどもあって、ポイントを購入しなくてもポイントがたまるチャンスが用意されている。このように出版社に痛い思いをさせず、それでいてちゃんと買い手にもお得感が出るようなサービスを生み出している。

読者も出版社も満足させる最適解のサービス

 GALAPAGOS STOREは、日本の特殊な出版業界の事情に合わせつつも、出版社と読者のそれぞれが満足できるように、やや浪花節的ではあるが、日本的な頑張りと誠意を尽くしたサービスと感じた。あるいは、今の日本の事情を考慮しつつ、その中で少しでも多くの本や漫画、雑誌を提供するための最適解的なサービスなのだ。

 そんなことが感じ取れる側面を、もう1つ紹介しよう。

 GALAPAGOS STOREで閲覧する本は、残念ながらiOS版GALAPAGOSアプリから直接購入することはできない。Webブラウザから「GALAPAGOS STORE」というWebサービスにアクセスし、クレジットカード、またはキャリア決済(ドコモケータイ払い、auかんたん決済)を選んでコンテンツを購入する。

photophoto Webブラウザから利用できる「GALAPAGOS STORE」。画面の大きなiPadではPC向けWebと同様の画面が表示される。画面の小さなiPhoneでは、最適化された専用ページが表示される

 なぜこうした仕様になっているかというと、AppleがiOSアプリ上で、アプリ提供者が独自の課金をすることを禁じているからである。実は、ちょっと前まで独自課金をしていた日本のほかの電子ブックサービスや、世界のAmazonも、現在はこの方式に切り替えている。

 中には、Appleが提供する「アプリ内課金」の仕組みを使って、Apple IDに登録したクレジットカードで本を購入可能にしているところもあるが、それをやってしまうとAppleに売り上げの3割を収めなければならなくなり、ほかのプラットフォームとの公平性が保てなくなる。そのため、GALAPAGOS STOREはWebでの課金だけにしているのだ。

 こうした前提の上で、GALAPAGOS STOREではWebストアをしっかりとiPadとiPhoneのWebブラウザに最適化し、ブックマークをホーム画面に保存した場合には、ちゃんとアプリのようなきれいなアイコンが表示されるような努力をしている。こうした、iPhoneやiPadからコンテンツを購入しようというユーザーのために、細やかな仕事をしている辺りに好感が持てる。

photo GALAPAGOSのアプリアイコン(左)と、ホーム画面に追加した「GALAPAGOS STORE」のアイコン(右)。一度ホーム画面にWebサイトへのリンクを追加すれば、アプリのような手軽さでストアにアクセスできる

iOS+Android、合計3台で利用可能

 また、端末のローカルだけにコンテンツを保存しておくのではなく、クラウド上でそれらを管理しているおかげで、GALAPAGOS STOREで買った本はiOSデバイスだけでなくAndroid端末でも閲覧できる。GALAPAGOS STOREのサービスは同時に3台までの機器で利用できるので、例えばiPadで読みかけのビジネス書の続きを、満員電車の中ではiPhoneで読む、といった使い方ができる。もちろん、Android端末で続きを読むことも可能だ。

 OSにとらわれずサービスを提供するということは、デバイスを移行した時にコンテンツを失わずに済むことも意味している。GALAPAGOS STOREのサービスをAndroidで利用していたユーザーは、1冊の本も失うことなく、iPhone/iPadに乗り換えることができるし、何らかの理由でiPhone/iPadを使うのをやめることになっても、やはり本を1冊も失わずにAndroidに移行できる。

まだこれから伸びるサービスの大事な一歩

 ITmediaを読み込んでいる人の中には「ガラパゴス」という単語に良いイメージを持っていない人もいるかもしれない。そもそもIT業界において「ガラパゴス」という言葉は、グローバルなトレンドに背を向けて独自の発展を遂げてきた日本の製品やサービスを揶揄するような意味合いで使われてきた言葉だ。

 しかし、GALAPAGOS STOREが「閉じた世界」を志向しているのかというとそうではない。実際、シャープはGALAPAGOS事業の発表当初からiOSへの対応などをほのめかしていた。

 そんなGALAPAGOS STOREが、まずはシャープの自社製端末を含むAndroidプラットフォームで波に揉まれて、ひたむきな改善を続けたのち、2年弱の歳月を経てついに当初からの目標であったiOS対応を果たしたのは、歓迎すべきことだろう。

 シャープは、iOSアプリの開発者としてはまだまだニューカマーだ。洗練されたアプリを使い慣れたiOSユーザーには、GALAPAGOSのファーストバージョンは、操作面などでこなれていない部分を感じることもあるかもしれない。だが、筆者が取材をしたシャープ 通信システム事業本部 モバイルソリューション事業部 ネットワークソリューション推進部 サービス推進グループ チーフの松本融氏は、今回のiOS版開発でAppleが提供するヒューマンインタフェースガイドラインなどに沿ったアプリ開発を行ったことで、非常に使い勝手を向上させる学びがあり、中にはAndroid版に生かせる知見もあった、と述べていた。今後、iOSユーザーのこだわりの目で評価されながら、さらにアプリが改善されていく、その“伸びしろ”が大きい開発者だとも言えるだろう。

 まずは、あまり難しいことを考えず、単純に約7万冊の本がiPad、iPhone上の1個のアイコンからアクセスできる電子ブックサービスとして、試してみて損はない。期間限定で特典コンテンツをプレゼントする「入会特典コンテンツプレゼント」(終了期間は作品により異なる)なども実施しているので、ぜひとも早めに試してもらえれば、と思う。

GALAPAGOS STORE
GALAPAGOS STORE

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia eBook USER 編集部/掲載内容有効期限:2012年9月27日