電子書籍というと、どうしても「どの端末がいいかな?」とハードウェアありきで考えがちですが、実際には「どの端末を選ぶか?」より「どのストアを選ぶか?」の方が重要です。それは、読みたい電子書籍を探したり、購入したり、読むためのツールを提供したり、保管したりといった、総合的な「サービス」を提供しているのが電子書店だからです。端末は数年で買い換えてしまうかもしれませんが、電子書店の利用はそれより長期間になる可能性が高いですからね。
電子書店事業にはさまざまな企業が参入していて、それぞれに特徴があります。この特集では、それぞれのサービスをじっくりと時間を掛けて使い込んだ筆者とeBook USER編集部が、国内の主要な電子書店を徹底解説していきます。「本当によいストアはどこなのか?」を知るガイドにしていただければと思います。この連載は定期的にアップデートし、サービスとしての電子書店の成長をつぶさにお届けします。
本特集では、以下の5つの要素に基づき電子書店をレビューしていきます。
各項目について、3点を平均とし、電子書店としていい所があれば加点、悪い所があれば減点という形で評点を付けています。記事の最後に、これらの評点結果をチャートグラフにしたものを用意していますので、そちらも参考にしてください。
第1回目は、ハイブリッド型総合書店「honto」をレビューします。hontoは、大日本印刷・NTTドコモ・丸善CHIホールディングスの共同出資で設立されたトゥ・ディファクトが運営する電子書店です。
hontoでは、電子書籍の配信だけではなく、紙の書籍やCD・DVDなどの通信販売も行なっています。また、大日本印刷グループのリアル書店、丸善・ジュンク堂書店・文教堂と提携し、共通のポイントサービスを提供しています。紙と電子、どちらも利用したいという方向けのストアです。
電子書籍リーダーアプリはPC(Windowsのみ)、iOS、Androidに対応しているので、専用機器などを別途購入する必要がないところも嬉しい点です。
hontoの電子書籍ストアには、総ラインアップ数の表示がありません(☆-0.5)。そこで、「まったく同じ本が複数の出版社から出ていることはない」という前提の下、検索メニューの[出版社名で探す]から全出版社をリスト化、検索結果をカウントしてみました。手作業でカウントしているので、間違いがあるかもしれませんがお許しください。
この方法で調べたところ、2012年8月5日時点で、配信中出版社数は571件、[シリーズ単位]表示で総数5万6965件、[商品単位]表示で総数20万1858件でした。シリーズでまとめられているので、巻数が多いほど商品数が多くなるわけですが、1シリーズ平均で3.54巻というのは他のストアと比べるとかなり多いです。これは、NTTドコモがiモードで配信している、いわゆる「ケータイ小説・コミック」を、hontoでもまったく同じ形式で配信していることが主要因です。「ケータイ小説・コミック」では、1巻あたりのボリュームを少なくして数十円で販売というスタイルがスタンダードです。だから商品単位にすると、こんなに数が多くなるんですね。
次に、ジャンル別の数字を見ていきましょう。サイト上部のタブは、[小説・文学][経済・ビジネス][コミック][写真集][雑誌]の5種類で、それぞれにミドルページが用意されています。左カラムの[ジャンルから探す]には、タブに表示されているジャンル以外に[コンピュータ・IT・情報科学][暮らし・実用][エッセイ・自伝・ノンセクション][エンタメ・テレビ・タレント][ボーイズラブ][ラブロマンス]の6種類のジャンルがあります。ジャンル別の検索結果は以下の通りです。
ジャンル | シリーズ数 | 商品数 |
---|---|---|
小説・文学 | 9947 | 1万8798 |
経済・ビジネス | 2638 | 2883 |
コンピュータ・IT・情報科学 | 398 | 466 |
コミック | 9762 | 5万1778 |
写真集 | 949 | 1055 |
雑誌 | 632 | 2852 |
暮らし・実用 | 2250 | 3403 |
エッセイ・自伝・ノンセクション | 4103 | 4973 |
エンタメ・テレビ・タレント | 1130 | 1330 |
ボーイズラブ | 9167 | 5万2322 |
ラブロマンス | 1万7849 | 6万1446 |
実はこの表の数字を合計すると、先ほどの総数とはかなり異なる数字になります。これは、大・中・小ジャンルがきちんと階層構造になっておらず、1つのシリーズに複数のジャンルが登録されているためです。例えば角川書店の「古典部シリーズ」は、以下の4ジャンルが登録されています。
電子書籍 > 小説・文学 > 小説
電子書籍 > 小説・文学 > 小説 > 推理・ミステリー
電子書籍 > 文庫 > 一般 > 角川文庫
電子書籍 > エンタメ・テレビ・タレント > テレビ番組 > ドラマ
つまり、単純にジャンル別の数字を合計すると、重複してしまうことになります。このためこの表は、「どのジャンルがシリーズ数に対し商品数が多いか?」という観点で見て頂くといいでしょう。ご覧のとおり、[コミック][ボーイズラブ][ラブロマンス]の3つが、シリーズ数と商品数の差が大きくなっています。つまりこれらのジャンルに1冊数十円の商品が多く登録されているというわけです。
[ネットストア]から検索をすると、紙の本と電子書籍が同時に表示されたり、電子書籍の詳細画面に紙書籍の価格が同時に表示されます。紙と電子を同時に比較し、それぞれのメリット・デメリットを考えた上で、どちらを購入するかを選択できるというわけです。これは非常に便利です(☆+1)。
評点:☆3.5
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