Kobo Gloの実機レビュー

Koboが発表した電子書籍リーダー「Kobo Glo」。業界のトレンドとなっているフロントライト搭載の6インチ電子ペーパー端末をチェックしてみよう。

» 2012年09月11日 10時00分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 Amazon Kindle PaperwhiteとBarnes & Noble Simple Touch with Glowlightは競合するデバイスを迎えた。Koboは9月6日、トロントのダウンタウンで開催されたイベントでディスプレイ照明技術を搭載する「Kobo Glo」という電子書籍リーダーを発表した。この新型電子書籍リーダーはユーザーがどのような環境でも電子書籍を読めるようディスプレイに照明を内蔵するという業界全体の流行を取り入れている。

ハードウェア

 Kobo Gloは6インチの電子ペーパーディスプレイを搭載する。ディスプレイの解像度は1024×768ピクセルで、Kindle Paperwhiteを除けば、すでに最近製造中止となった「iRiver Story HD」が唯一匹敵する解像度だ。

 照明機能はディスプレイ枠に内蔵され、NOOK Simple Touchによく似ている。同じタイプのLED技術を利用しているが、NOOK Simple Touchがスクリーン上部に照明を内蔵するのに対し、Kobo Gloは下部に内蔵している。両製品を横に並べて比較すると、Kobo Gloの方が完全な暗闇での表示では優れていた。Glo機能を有効化するには、ユニット上部の電源ボタン側にあるボタンを押す必要がある。明るさは16段階で設定可能だ。

 Kobo Gloを支えるのはFreescale i.MX6 Solo 1GHzプロセッサ。ページめくり、メニューへのアクセス、ネットサーフィンを容易に行うのに十分な処理速度が与えられている。800MHz以上のクロックスピードを誇るプロセッサが搭載されている電子書籍リーダーは少ないので、競合機種と比較するとより新しさを感じさせる。

 デバイス背面のKoboのキルト状パターンカバーは交換できる。過去、ブルーのキルト状パターンカバーが装着されたホワイトモデルが欲しくても、それは無理だったのだが、今回、Koboは交換可能な5種類の新型カバーを発表した。Koboによると新色がこれからリリース予定とのことだが、アフターマーケットパーツなのではないだろうか。Decalgirlなどの企業は間違いなく素晴らしいデザインの自社版カバーをリリースするだろう。

 Koboはデバイスからホームボタンを除去し、代わりにソフトウェアで補完するアプローチを選択した。以前の電子書籍リーダーにはハードボタンがつきもので、モデルにもよるが、多くの機能を有していた。デバイス表面からハードボタンをなくすことで表面積が増加し、スクリーンはより大きく見え、デザインはよりすっきりした。

 ハードウェアの寸法は114×157×9.9ミリで重さは185グラム。十分に軽量だ。バッテリーライフも十分に長いが、これはリーダー上で何を読むかによる。Glo機能を有効化したままで使うと約55時間、有効化しなければ1カ月は読書できる。引き出しに収納してそのまま忘れても、スタンバイモードで2カ月はバッテリーが持つ。

 Koboはライバル企業が販売しているのと同様の技術を利用した電子書籍リーダーを発売する必要があった。このデバイスの利点の1つはBarnes & Noble、Amazonの製品と比較して米国外のユーザーが入手しやすいことだ。Koboは読書体験とハードウェアに注力したことをイベントで再三強調した。競合製品はさまざまな機能に手を広げており、電子書籍体験に特に注力している訳ではない。このデバイスはハードウェアとソフトウェアが完全に統合されて独自の体験を生み出していると思う。Glo機能は深夜、あるいは暗い場所で読書する誰にとっても役に立つはずだ。

ソフトウェア

 Kobo Touchを所有したことがあれば、メインUIの要素と設定にすぐに慣れるだろう。前世代のリーダーと特に変わりないが、前モデルが持っていなかった機能を確実に拡充している。

 新ホームスクリーンはライブラリー、ウィッシュリスト、ストアなどから成り、ユーザーの読書を可視化する「Reading Life」なども従来通りだ。ウィッシュリストを利用すると後で購入したい本や誰かにプレゼントしてほしい本をKoboの公式ストア内でフラグ付けできる。

 Koboストアは広大なエコシステムを持ち、有料、無料を問わず300万冊以上の本を購入できる。このデバイスを米国外で購入すると、母語に応じた書籍を購入できる各国版ストアを利用することになる。

 新機能のほとんどは読書セクション下に配置されており、概要は後から紹介する。ソフトウェア面で、このデバイスは本当に高速だ。1GHzのプロセッサは筆者には覚えがないほどの速さですべてを開いたり閉じたりする。Good e−Readerは市場で販売されているデバイスのほとんどすべてをレビューしており、そのほとんどはハードウェアに欠点がある。現在の市場環境で、堅実なハードウェアに買いやすい価格づけをするのは非常に難しい。Kobo Gloはユーザーが日常的に行うすべての共通タスクを高速で処理する。

読書体験

 Koboは読者が電子書籍読書体験を増強できるという点で競争をリードしている。フォントは12種類、フォントサイズは24種類が用意される。すべては動的にリアルタイムで変更されるので、自分の好みを即座に判断できる。

 日常的に利用することになるメインのファイル形式はEPUB。フォント、行間、余白、画面の向きだけでなく、フォントの明暗も変更できる。Koboはフォントの重み、シャープネスを変更できるようにもした。これらはスライダーバーで変更でき、変更前と変更後のパラグラフの見え方を比較表示できる。なお、Kobo Gloはリフレッシュレートを1〜6ページの間で変更できる。

 読書中、ユーザーは文章に下線を引いたり、ノートを追加したりできる。現在、ノートは読書中の書籍データの一部として保存されるだけだが、新電子書籍リーダー製品担当のアミール氏によると、Koboはこのノートをファイルとしてエクスポートする新機能を間もなくリリースする予定だという。

 読書中になじみのない単語に出くわした場合は、単語をタップすると個々の言語に合った内蔵辞書がその意味を即座に表示してくれる。処理能力の高いプロセッサのおかげか、これはかなり高速に表示される。

 KoboとFacebookは数年前に開催されたD8 Conferenceのころから共同して開発を行なってきた。読書中の本の1節をFacebookページやタイムラインで共有できる機能が存在する。読書はかなり孤独な作業なのでこの機能をまったく利用しない読者は多いが、気になれば利用することもできる。

 Kobo Gloではフォントの明暗まで設定可能にするなど、前世代モデルを利用するユーザーに訴求する新機能を多く搭載した。暗めのテキストは明るめのテキストよりも目立つので、Glo機能を頻繁に利用するならこの機能は便利だ。

まとめ

 Koboの前世代の電子書籍リーダーに満足しているユーザーにこのデバイスをお勧めしたい。前世代の2モデルはそれほど優れておらず、多くのバグ、クラッシュ、平均以下の読書体験に悩まされていたことを筆者はまず追認したい。

 Koboはここ数年で成長し、多くの海外ベンダーやGood e-Reader、MobilereadといったWebサイトを通じてコア機能に対する要望を募ってきた。開発チームとPRチームは常に質問をし、共通の問題を解決している。クラウドソーシングというほどでもないが、企業がユーザーの声に耳を傾け、直接交流することで要点を理解してもらうのは素晴らしいことだ。Amazonはこういったことをまったく行なっておらず、Pocketbookなどの取り組みもこれにはおよばない。

 筆者はKobo Gloを2012年後半に『買うべき』デバイスとしてお勧めする。10月はじめに発売され、海外でもリリースされる(編注:現時点で日本国内の発売は未定)。カナダでは129.99ドルで販売されるが、価格はそれぞれの市場、通貨ごとに上下があるかもしれない。

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