世界中で発生する対海賊版書籍の戦い

海賊版書籍といえば、デジタルの世界でだけ起こっていると思うかもしれないが、紙書籍にもその波は確実に押し寄せている。

» 2012年10月29日 08時00分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 海賊版書籍のほとんどはデジタルスペースで起きていると私たちは考えがちだ。しかし、徐々に、多くの国々で海賊版書籍の問題は電子ではなく、大手出版社の本業であり続けているプリントメディアの領域へと移行している。タイ、ナイジェリア、中国といった国々では、当局が輸出入される紙書籍の取り締まりに当たっている。

 ここ4カ月で、ナイジェリア著作権委員会(NCC)はコンテナ15個分の書籍を押収した。総額にして600万ドルほどのこの押収物は、アフリカのほかの国々が仕向地となっていた。NCCラゴス事務所のクリス・ヌクオチャ部長代理によると、NCCは3000箱分の書籍を押収したそうだが、それらは中国から輸入され、10の出版社の約30タイトルで構成されていたという。「これらの海賊版書籍はさまざまな出版社――例えばLearn Africa、Macmillan、University Press、Africana First、Heinemann――から正規に出版されたものでした」(ヌクオチャ氏)。

 米国内では、ある画期的な訴訟が最高裁判所に上訴されている。カートセーン対学術系出版社大手John Wiley & Sonsの訴訟だ。この訴訟はコーネル大学の学生が教科書全般が高額だと思ったことに端を発するもので、自分の母国であるタイから米国に教科書を輸入、eBayでかなり割り引いた価格で売りさばき、それにより100万ドルほど売り上げたことについての訴訟だ。学生の考えは合理的ではあるが、John Wiley & Sonsに言わせると『消尽の準則』に問題があるという。

 学生が書籍を購入済みなので、自分で決めた価格でそれを販売するのは当然の権利だと考えるのは明白だ。しかし、学生は予審で敗訴しすぐに控訴している。下級裁判所は『消尽の準則』が米国製製品または『国内で製造された書籍』にのみ適用されると規定した。現在、訴訟はこの法律の修正を求めるWileyの要望で最高裁判所に上訴されている。ただ、米国内で書籍を再販売するために海外供給業者の許可が必要なことは論理的には理解されている。

 出版業界全体は『消尽の準則』の修正を利用するために業務の一部を海外へ移管するかもしれない。企業側が再販売条件を規定することが合法であれば、米国外で業務を行うことで経費をさらに節減できる可能性があるからだ。これによりAmazon、Craiglist、eBayなどのWebサイトで書籍を再販する人はいなくなるのではないか。

 近いうちに、ほかの出版市場にも目を向けて、海賊版書籍を取り巻く幾つかの話と業界がその問題にいかに対処しているのかについて記事を書く予定だ。

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