インタビュー
» 2012年11月09日 15時15分 公開

作家と本:知識を得るということはやっぱり読書、万物が流転しても (3/3)

[ITmedia]
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本屋も大きく変わった

―― 手書きだけでもすごいのに、墨というのは凄いですね。いろいろなスタイルがあるんでしょうが、でもそれも含めてすべて変わってくるんでしょうね。何が良い悪いではなくて。

寂聴 (山田)詠美さんなんてね、あの年代でもやっぱりペンで書いていますよ。林真理子さんもたしか手書きですよ。それからもっと若い人でもね。江國(香織)さんも確かペンだった。今は知りませんけれども。

―― 書き手も読み手も使いやすいものを使うのがよいということでしょうか。

寂聴 そうそう。そんなの何でもいいのよね。書くのはね。

―― 電子書籍のようなものが仏教の教えだとかに何か役に立ちそうだなと思うことはありますか? 例えば、東日本大震災のときもそうだったと思うんですけれども、本が欲しいけど入りにくい、物流の問題もありますし、学校の教育の問題も――

寂聴 本が欲しいと言って入らないというのがずいぶんあってね。本屋が、昔は要求する人、需要が少なかったからね。だから本を買いたいと思えば、何が欲しいと電話したら本屋が必ず届けてくれたのよ。雑誌なんかは黙っていたって本屋が届けてくれたの。

 だけど今は本屋に行ったってなかなか買えない状態じゃないですか。そういうのも変わりましたね。それから昔は町に小さな本屋、古い本屋が沢山あったんです。そういうところは主人も小僧も全部分かっていたね、本のことを。今は本屋が大きくなったからね、そんなの分からないじゃない。そういうのも変わりましたね。

―― そういった面でも電子書籍は役に立ちそうですか。手元にあったらすぐ本が手に入る、例えばインターネットで本が買えたりだとか、沢山ある本を持ち歩かなくても――

寂聴 そりゃ便利ですよ。私なんか、ちょっと長編を書くのにどこかに行こうと思ったら、トランクいっぱい資料を持っていかなきゃいけない。

―― トランクですか。

寂聴 そう。箱に入れて送ったりしなきゃならないじゃないの。昔はものなんか書くとそうだったんです。そういう意味ではそれは便利になると思いますよ。

―― 仏教の経典というのも膨大な量になると思うんですけれども、ああいったものも――

寂聴 そうなるでしょうね。便利なものは直ぐになります。国会図書館なんかもそうなっているでしょう。とっくにね。だって場所がなくなるじゃないの。私なんか資料とか好きで買った本は、とても家に置けなくなったから、徳島に文学館を作って貰って、そこへ全部送りましたよ。トラックで何台も。3万冊ぐらい。

紙の本は残る、絶対に――

―― 3万冊はすごいですね。電子化への心理的な抵抗のようなものはないんですか? 紙の良さとかみたいな。

寂聴 電子ブックもなかなか綺麗なものですよ。装丁もキレイな絵がパッと出ますしね。

 紙の本は残ります。絶対に残ります。今でも高い本があるでしょう、特別な本。ああいうのを買う人が数万人はいるの。だからそれだけを作っていても成り立つんですよ。便利なものは便利で使う、使いっぱなしだけれどもね。だけどどうしてもためておきたいとか、特に愛着があるなんていうのは必ず出ますよね。だから紙の本が無くなるということはないと私は思う。

―― そうですね。最後に瀬戸内さんにとっての本というのは、どういう存在でしたか?

寂聴 いやもう、本に知識をすべて与えられたからね。私はやっぱり子どもに、とにかく本を読ませなきゃだめだと思いますね。学校で習う教科書というのは知れているからね。やっぱり自分で本を沢山読んだ人と読まない人といったら、話して分かりますよね。本を読まない人間はこの商売はできないのね。悩んだりするときに答えを……いま身の上相談っていっぱい来ますけれどもね、自分で考えられますよね、本を読んでいたら。これはどうしたらいいかな、とかね。あの小説の中でそっくりなのがあったなとかね。

瀬戸内寂聴さん

 そして、やっぱり本を読むことにおいて、その本が電子ブックであろうが何であろうがいいんですよ、また違うのが出てくるかもしれない。とにかく知識を得るということはやっぱり読書ですね。

 どんな商売の人でも、例えば銀行マンになってもお金の計算だけじゃないでしょう? やっぱり教養がなきゃね。教養というのは書物を読むこと。そこから宗教も出てくるし哲学も出てくる。恋愛なんかする場合もやっぱり本を読んでおかなきゃね、口説けないじゃない。

本インタビューは、取材:大和印刷、編集校正:ITmedia eBook USERでお届けしています。そのほかの作家インタビューはBOOKSCANのサイトも参照ください
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