『マーガレット』5号から新連載が始まる漫画家の種村有菜さん。意気込みを伺いました。
少女まんが雑誌『りぼん』(集英社刊)で次々と人気作を生み出し、『神風怪盗ジャンヌ』や『満月をさがして』はアニメ化もされたマンガ家、種村有菜さん。そんな種村さんの新連載が2月5日発売の『マーガレット』5号(2013年2月20日号/集英社刊)でスタートする。そのタイトルは『猫と私の金曜日』(画像は『マーガレット』5号の表紙)。
ずっと読者だったという『マーガレット』で初めてのオリジナル作品連載ということで、これまでの種村さんの特徴だったファンタジー色はなくなり、ド直球の学園ラブコメが展開されています。しかも相手役の男の子は、主人公の高校1年生、立花愛の1つ年上の先輩・芹沢と、同じマンションに住むいとこの猫太、小学校五年生。
学内の女子からモテモテな芹沢から、自分に気があることを告げられ、どぎまぎしてしまう愛。意を決して告白しようとするが、それをなぜか邪魔しようとする猫太。一話目からフルスロットルで加速するストーリー。いったいどうなっちゃうの! 今回は種村さんに新連載作品についてインタビューを敢行。作品への想いを聞きました。
―― 2月5日発売の『マーガレット』5号でいよいよ待望の新連載『猫と私の金曜日』がスタートしますね。おめでとうございます。
種村さん(以下敬称略) ありがとうございます!
―― 新しい連載がスタートするときの気持ちというのはどんな感じなんですか?
種村 とてもワクワクしています。前の連載を書いている間に、作風やストーリーの流れ上、入れられないネタがどんどんたまっていて、それを出さないと脳みそがパンクしちゃいそうなくらいだったんですよ。
前の連載では、平安時代を舞台にしたファンタジーを描いていたので、現代的な洋服とか、かわいい雑貨を描きたくてうずうずしていました。後、『猫と私の金曜日』の主人公の女の子、愛ちゃんはチョコレートが大好きなんですが、前の作品だとこのチョコも出せなくて……。
―― 出せるお菓子といったら、和菓子とかそういうものになりますよね。
種村 そうなんですよ(笑)。基本的に、お菓子といって出せるものは、果物かお餅になるので。
―― そういったものを新連載に全部ぶつけて。
種村 そうですね。だからたぶん、わたしのマンガをいままで読んできた読者さんが、この『猫と私の金曜日』を読んだら、ああ、とてもやりたかったんだなということが伝わると思います。
―― 種村さん、1回目からすごい飛ばしてる! って感じでテンポがすごく速かったです。
種村 第1回は53ページあったので、わたしとしては、実はこれでもゆったり始めたという印象なんですよ(笑)。でも、今回は攻めの姿勢でどんどん突っ走っていきたいなと思っていて、いままでだったら、このネタは後にとっておこうとか、あの設定は後で生かそうとか、そういうことも考えていたんですね。でも、今回はとにかく攻めて、読者さんが『え? ここまで攻めるの? 攻められてる、わたし!』と思うような乙女の攻撃をどんどん……(笑)。
―― 仕掛けていこう、と(笑)。
種村 仕掛けていこうかなと思っています。
―― 連載第1回を読ませていただいてふと思ったのですが、これまで種村さんが描かれてきた作品はファンタジー色が濃いものが多かったですよね。でも、今作はストレートな学園ラブコメです。
種村 この作品は、『マーガレット』でやる連載では初めてのオリジナル作品なんです。だから、『マーガレット』の読者さんのことはすごく意識しましたし、わたしはずっと『マーガレット』を読んできたので、あこがれていた『マーガレット』のマンガにちょっとでも近づきたいという想いもありました。
―― ブログでも『マーガレット』への想いをつづられていましたよね。
種村 そうですね。本当に小さいころから読ませていただいていましたし、大きくなってからも、毎号楽しみにしていました。だから、ずっと作品を連載していた『りぼん』を卒業することになって、『マーガレット』から声をかけていただいたときは、すぐに『やりたいです!』と返答しました。
隔週発行というペースにもちょっとあこがれていたところがあって、わたしのマンガって結構展開が速いので、読者さんから、月刊だと待ちきれないという声を聞いていたんですね。だから、わたしのマンガの速さって隔週向きなのかなと。そういう部分でも、マンガ家として魅力を感じました。
―― でも、隔週の方が連載する上では大変じゃないですか?
種村 大変です(笑)。でも、その分、読者さんの声をすぐに反映できたり、方向転換もできるでしょうし、より生きた連載ができるんじゃないかと思っています。
―― 読者の声を聞いて反映されることはあるんですか?
種村 声はもちろん聞きます。けれど、こうしてほしい! という要望はそのままその通りにしないですね(笑)。読者さんから、『絶対主人公の女の子とヒーロー役の男の子をくっつけてほしい!』っていう声があがって、実際にそのカップルがくっついたことがあったのですが、今度は『何かつまらなくなった』みたいな声が上がっちゃって。そこは女の子の難しいところですよね(笑)。『何とかして!』っていう声が上がって、読者さんの希望通りに話が進んでいったとしても、それが必ずしも満足ではないんです。女の子はじらされるのが好きですから(笑)。
一応、脇役のこの子とこの子のラブロマンスが始まらないかなというような声を聞くこともありますけど、基本的には読者さんの意見は読者さんの意見ですし、作家は作品を作る上では、読者さんの意見をうのみしているとダメだ、という考えは持っています。
―― では、種村さんにとって、読者の皆さんとはどんな存在なんですか?
種村 そうですね……。たぶん、わたしは読者さんが一人もいなくても、マンガは絶対に描いていると思います。どこかに作品を発表しなくても、マンガを描くということが大好きなんです。
でも、やっぱり読者さんから作品について意見や感想をもらって読んでいると、そこにはヒントがたくさん詰まっているんですよね。今度はこういうストーリーにしてみようとか、自分にはなかった新しい描き方をしてみようとか、そういう風に思えてくるんです。もっと読者さんが『読みたい!』って思えるようにどんどんレベルアップしていかないと! って思うし、そういう意味では、読者さんは鏡みたいな存在ですね。わたしがマンガを通して送ったパワーを反射してくれる、しかもパワーアップしてわたしに返してくれて……みたいな。だから、そのパワーを使って、わたしも読者さんに何かしら新しいものを届けられたらいいなと思います。
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