KindleやKoboへ個人作品を手間なく連携配信できるパブーのプロ版を試す(2/2 ページ)

» 2013年02月25日 09時00分 公開
[鷹野 凌,ITmedia]
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気になったところ

 実際に外部ストア連携機能を利用してみると、幾つか気に掛かる点があった。例えば、[本・表紙の設定]に記入した[概要]がそのまま、外部ストアと共通の内容説明として使用されること。パブーのデータにはDRMがかかっていないのでユーザーがどのビューワを使用するか選べるが、外部ストアの場合DRMでアプリが固定されているといった違いがある。しかしストアごとに異なる内容説明にはできないのだ。パブーのユーザー向けには「iBooksのスクロールモードでご覧ください」と書きたいのだが、KoboやKindleで見たユーザーには意味が分からないという状態になってしまう。

 また、配信や更新に時間がかかることにも触れておきたい。外部ストア連携を設定してから、作品がKoboイーブックストアへ配信されたのは約2日後、Kindleストアへ配信されたのは約4日後だった。内容紹介の修正依頼を行い、Koboイーブックストアに反映されたのはやはり約2日後、Kindleは本稿執筆時点で2週間以上経っているがいまだに反映されていない。パブーに問い合わせをしてみたが、パブー側の申請処理はすぐに行っており、Amazon側が手間取っているという状況のようだ。パブーを介さずKDPで直接出版されている方に確認したところ、直接やっている場合は申請から48時間以内に配信開始されることになっており、内容説明文の修正も翌日には反映されているそうだ。なお、現在では「外部ストアでの配信開始、更新、削除についてはストア側で対応が必要なため、お申し込みいただいてもお時間をいただいてる場合がございます。あしからずご了承ください。」というお知らせが出ている。

 他にも、Kindle Paperwhiteは目次に対応しており(目次データが用意されていれば)自由に章やページを移動できるのだが、AndroidやiOSで配信されているKindleアプリでは目次が表示されないという問題がある。そのため、Kindleアプリでも自由に章やページを移動できるような目次を用意したい場合は、通常のページと同じ体裁で各ページにリンクを貼ったものを用意すればいいのだが、パブーのエディタは同一書籍内リンクに対応していない。このため、パブーの提供しているエディタでは、現状のKindleアプリで利用できる目次を用意できないということになる。小説や漫画であればさほど問題にはならないかもしれないが、ガイドや実用書の場合は目次がないと不便だ。


Koboではちゃんと目次が表示され移動できる
Kindleアプリでは[目次]がグレーになっておりタップできない
KindlePaperwhiteではちゃんと目次が表示され移動できる

 もっとも、プロ版であれば自作EPUBがアップロードできるので、パブーの提供しているエディタが不満であれば、ローカルに制作環境を用意してしまうのも手だろう。自作EPUBのアップロードであれば、EPUB 3で縦書きの書籍を配信することも可能だ。ただしその場合、パブーには別途試し読み用のページを自分で作成する必要がある。EPUBをインポートしてパブー用のページを自動作成する機能は、JUSTアカウント(一太郎ユーザー)での認証が必要だ。


自作PDF・EPUBファイルのアップロード画面
自作EPUBをアップロードしただけではパブーに試し読みページが用意されない

 また、KoboイーブックストアやKindleストアで売れた冊数が、即座には把握できないのも辛いところだ。これは直接契約しているわけではない以上致し方のない部分ではあるが、パブーで売れた分はその日のうちに把握できるだけに寂しく感じられる。実は筆者の本は、Kindleストアで配信開始された日に、Kindleストアのヒット商品1位に、紙書籍まで含めた「コンピュータ・IT」のベストセラーでも10位にランクインしていた。しかし、これが何冊売れてこういう順位になったのか、現時点ではまったく分からないのだ。規約には「当月分を翌月末までに報告」となっているので、2月に売れた分は3月末までには分かるという形だ。


なんとKindleストアのヒット商品で1位になっていた……が、何冊売れたのかは3月末まで分からない
パブーで売れた分はその日のうちに把握できる

 また、パブーの支払いサイクルは80日となっている。KDPの場合支払いサイクルは60日なので、例えば2月に売れた分は4月末に支払われる。しかし、パブーで外部ストア連携をした場合、2月に売れた分は5月20日に支払われることになる。この辺りは複数の電子書店へ手間なく配信できるメリットとのトレードオフになるだろう。

 最後に料率について。これはそれぞれのストアで異なる。パブーで売れた場合の料率は70%、Koboイーブックストアで売れた場合は50%、Kindleストアで売れた場合は35%だ。パブーで売れるのが料率的には一番よいわけだが、ユーザーの母数や集客・プロモーションのことを考えると妥当な数字だろう。KDPで個人出版する場合、料率は35%と70%から選択できるが、70%の場合1Mバイト1円の通信費負担、一定期間独占契約になるなどの縛りがある。35%の料率はパブーを経由しても同じなので、前述の手数料を考慮すると、パブー経由の方がよい条件だとも言える。

 これは私見だが、いくらKindleストアが急激にシェアを伸ばしているとはいえ、Kindleストア単独で販売するより、なるべく多くの電子書店に並べた方がより多くの人の目に触れる(=販売機会が増える)のは間違いない。しかし、それぞれの電子書店で出版の手続きをするのはそれなりの手間が掛かる。著者と複数の電子書店との間に立ち、そうした手間を軽減してくれるこういったサービスには確実に需要があるだろう。

 だから今後、パブーが提携先をさらに拡大してくれることを筆者は期待したい。KoboイーブックストアやKindleストアと提携し、次にGooglePlayブックスが予定されているということは、近日中にオープンが噂されているAppleのiBookstoreも連携の視野に入れていることだろう。

 ここで、何年も前からサービスを展開しているhontoやBookLive!やGALAPAGOS STOREやReader Storeといった国内勢の電子書店の名前が挙がらないのは非常に寂しいことだ。これはパブー側の問題ではなく、電子書店側の問題だろう。取次に対する配慮といった諸事情があると推察するが、このままでは海外勢にどんどん差を広げられる一方だろう。既に、個人が自主出版した書籍を、たやすく大型電子書店へ並べられる時代がきているのだ。

著者プロフィール:

 フリーライター。ブログ「見て歩く者」で、小説・漫画・アニメ・ゲームなどの創作物語(特にSF)、ボカロ・東方、政治・法律・経済・国際関係などの時事問題、電子書籍・SNSなどのIT関連、天文・地球物理・ロボットなどの先端科学分野などについて執筆。電子書籍『これもうきっとGoogle+ガイドブック』を自主出版で配信中。

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