読後の不気味さがたまらない――『人間椅子』を含む『江戸川乱歩傑作選』私設図書館シャッツキステ3冊目

本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。連載3回目は私設図書館シャッツキステでミソノを手伝っている司書見習いメイドが登場。小説好きな彼女が手にしているのは……。

» 2013年05月17日 12時00分 公開
[ITmedia]
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 この街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。そこには書架を守る司書がいます。

 ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドたちもいるようです……。

 ひそかに好感度を上げて、年に一度行われる本の展覧会にミソノさんとご一緒できるよう、お気に入りの一冊を持って、今日も書架にメイドがやってきました。

サヤ

ミソノさん! 江戸川乱歩はお好きですか?! 


ミソノ

あら、サヤちゃん。

ええ。『怪人二十面相』など、よく読みましたよー。


サヤ

そうなんですね。ちょっとこれを見てみてください。黒い表紙に金で箔押しされたタイトル……何だか怪しい雰囲気のするこの本は、江戸川乱歩の短編を集めた、『江戸川乱歩傑作選』です。

乱歩の短編の中でも比較的初期のもの、処女作の『二銭銅貨』や『D坂の殺人事件』など9編が収録されています。短編なので、乱歩とかちょっと難しそうだなぁという方にも読みやすいですよ。

『江戸川乱歩傑作選』新潮文庫

ミソノ

とっても有名な作家さんでも、意外と手に取る機会がなくて……という時に、短編からさらりと入っていけるのはうれしいですね。


サヤ

 9つある短編の中でもわたしが一番気に入っているのは、『人間椅子』です。

 とっても不思議で印象的なタイトルですが、このタイトルを見てどんな内容を想像しますか? 人間の椅子……そう、人間が椅子になるのです! 『人間椅子』はおおざっぱに言ってしまうと、一人の家具職人が自分の作った椅子の中に入って、座った相手に恋(?)をするというお話なのです。

 これだけ聞いても正直よく分からないですよね、いえ分からなくて当然だと思います。とにかく何だか気味が悪いなぁということだけご理解いただければそれで十分です。この作品は本当に気味が悪いんです。わたしがいままで読んだ本の中で一番と言ってもいいかもしれません。

 普通「気味が悪い」という言葉は否定的な意味を込めて使うものですが、『人間椅子』に対しては、すごく肯定的というか、称賛の意を込めて使っています。独特の怪しい雰囲気が言いようもなく魅力的で、続きが気になり、ついついページをめくる手が止まらなくなってしまうのです。

 この怪しく不気味な感じが同作品の魅力で、面白いところだとわたしは思っています。ぜひ一度読んでみて、この気味の悪さを味わっていただきたいところですね。読んだ後は思わず椅子から立ち上がって、座っていた椅子をまじまじと見つめてしまうこと間違いなしです!

 どうでしょう、ミソノさん、この本が気になってきませんか?

ミソノ

そうですねぇ……。サヤちゃん、「クッションに最適な素材は生肉」という説を聞いたことがありますか?


サヤ

え……?


ミソノ

わたくしはその説を聞いたときに『人間椅子』を思い浮かべました。もしかすると、意外と座り心地が良いのかもしれませんね。


サヤ

えっえっ……?!


ミソノ

うふふふふ。


ミソノの好感度パラメーター

本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?

エリス:5% レイラ:7% サヤ:5%


本日のメイド

サヤ サヤ:三度のご飯より小説が好きな新米メイド。司書見習いとして、本棚整理などミソノの仕事をよく手伝っている。好きなジャンル:近現代文学、少女漫画
ミソノ ミソノ:いつもニコニコ、図書館を影から支える司書メイド。好きなジャンル:絵本、児童書、旅行記、本、紙、図書館

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