個人出版著者が文学を破壊する

スクリプトで自動生成されたものをはじめ、個人出版される電子書籍の中にはひどい内容のものも多い。

» 2013年07月10日 12時15分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 ソーシャルメディアにスパムを撒き散らし、大量のひどい電子書籍を送り出す個人出版著者の絶え間ない活動が現代の電子書店を蝕んでいる。今日、内容も編集もひどい書籍の渦に出くわすことなくKobo、Barnes & NobleあるいはAmazonをブラウズすることはできない。

 これらすべての電子書店が出版社と契約している有名な著者の本とインディー著者の本を横並びでリストしている。ソーシャルメディアも売り上げを求めて書籍を売りつけようとしたり、文字通り懇願したりする人々の温床となっている。

 Bowker Market Researchは先日、個人出版電子書籍の売り上げが電子出版市場全体の12%を占めるとリポートした。クライム、SF、ファンタジー、ロマンス、ユーモアなどのジャンルでは、その数字は20%に達することもある。ただし、そうした書籍の95%はうんざりするような内容で、E・L・ジェームズ氏やカサンドラ・クレア氏の成功に習おうと、出版のトレンドに乗って金をもうけるためだけに書かれている。

 最近のロンドンでの出版会議で、Profile Booksの創設者でありマネージングディレクターのアンドリュー・フランクリン氏は個人出版著者を非難した。「個人出版された書籍のほとんどはひどい内容でまったくゴミのようであり、世界の何をも向上させません」。フランクリン氏は続けて「これらの書籍は出版された後、死の静寂(編注:ほとんど無反応)に包まれるので、個人出版の第1の経験は失望となります。Facebookの『友だち』やソーシャルメディア上の『いいね』が金で買えることを知って非常にショックを受けました。これが著作を肯定するものとして通用しており、そこに個人出版のひどく腐った世界が存在していると思うのです」。

 筆者はフランクリン氏に同意せざるを得ない。Amazonを例に取ると、同社が採用する唯一の品質管理プログラムがKindle Serialsで、同社の公式出版レーベルとなっている。ほかの個人出版プログラムは編集者による下読みなどを経ているわけではない。しかし、これらの電子書籍は主流の書籍と隣同士にリストされる。これにより高品質の電子書籍発見のプロセスには非常に時間が掛かることになる。スクリプトにより自動的に生成された書籍や、タイトルが変更され売りに出されたパブリックドメイン書籍の猛襲は言うまでもない。GoodReadsは、Amazonが良い書籍とひどい書籍を分ける際に何らかの基準を持ち込もうとしていたので、同社に買収された。

 Smashwordsは才能のない著者にインターネット上で著書を売り込むよう促した点で最も罪深い企業の1つだ。同社は無料のISBN番号すら提供し、ソニー、Apple、Kobo、Amazon、Barnes & Nobleなどのサイトに本を並べてくれる。Smashwordsは何でも受け入れるが、大半の素人による娯楽小説はまだ良い方だ。なぜなら、これらの著者は努力しており、主題に忠実であろうと熱心だからだ。

 Goog e-Readerは3000人ほどのTwitterフォロワーと5000人以上のFacebookの友だちを抱えているが、人々が電子書籍を売りつけようとするのを目にしなかった日はない。そこにマーケティングはなく、それを買う理由もなく、ただ「わたしの本を買って!」といわれる。インディー著者のほとんどは本を正当に売り込んだり、本が嫌いな人に本を買うように促すすべを心得ていない。

 インディー著者が達成したことの1つは、正統に出版を行った著者の作品の評価を下げたことだ。標準的なインディー著者のタイトルの価格は0.99〜2.99ドルで、出版社から発行されているタイトルは7.99〜12.99ドルだ。本の買い手はできるだけ少なく支払うように条件付けされており、より高価な本は買うことを考慮すらしない。

 筆者は個人出版著者の大半に対し永続的な怒りを覚えているが、ハイブリッドな著者に対しては尊敬の念がある。後者の人々はしばしば大手出版社で経験を積み、より管理が行き届いた状態で個人出版を行っている。例えばベラ・アンドレ氏は個人出版者の良い例で、大手との契約を獲得し、個人出版に戻った。彼女は非常にうまくやっている。

 筆者は超常的なロマンスやエロティカもどきに対して完全に我を失う前にどれだけ我慢できるか分からない。個人出版は請求書を支払う足しになるかもしれないが、現代文学を犠牲にしている。

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