暑〜い夜に、実話怪談で涼をとる――動画も添えて夏休みこそいいとこ見せたい見てみたい!

子どもたちと過ごす時間が少しだけ増える夏休み。今年の夏は、いつもより尊敬されるお父さんになるべく、こんな本を手にとってみてはいかが?

» 2013年07月31日 12時00分 公開
[岡田篤彦,ITmedia]
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 夏休みが始まった。戻り梅雨のためか蒸し暑く、寝苦しい夜が続いている。そんな夜は、無理やり寝ないで、家族みんなで集まって、「怪談会」はいかがだろうか。明かりを消せば、涼しさ満点。子供たちが学校で見聞きした「学校の怪談」の後にトリとして話してみるのもいいかもしれない。

 「夏休みこそいいとこ見せたい見てみたい!」特集第4回目は、そんな話のネタになる本をご紹介する第二弾。ただし、怖がらせすぎないように。

日常生活に潜む実話怪談を集めた『恐怖箱 百聞』

 編著の加藤一氏は、怪談界隈では、裏に表にと大活躍だ。竹の子書房で、無料で怪談含む電子書籍を配布する活動の中心人物でもある。

 今回ご紹介する『恐怖箱 百聞』は、加藤一氏をはじめ、神沼三平太氏、高田公太氏、ねこや堂氏と執筆陣が豪華なだけではない。表紙は近藤宗臣氏が手がけており、怪談書籍としてはなかなか贅沢にしつらえられている。恐怖箱と命名されたシリーズの20作品目。

『恐怖箱 百聞』

 実話怪談の中では有名どころがこぞって取材し、議論し、一冊に収まり切らない程の内容を激論の末に収めたという、怪談がバトルプルーフされた珠玉の一冊。

 できれば、日常が続いて欲しかった、という怪異を、丁寧な取材と、巧みな文章、そして、短編集ならではのさすがともいえる切れ味のある作品に仕上げてある。短いものは1ページにも満たないが、足元からジワジワ来る恐怖、そんな体験ができるもの、この本の特徴だ。

 『恐怖箱 百聞』は、実話怪談なので、最後まで読んでもオチや理由が提示されない。それが更に恐怖を増幅させる。そのため、同書を読むにはそれなりの覚悟がいる。どこから読み始めても、その切れ味は、まるで魔剣のように読み手に容赦なく斬りつける。ぜひ同書を堪能していただきたい。

 今回、数も多くどれも味わい深いこれらの作品の中から、どの部分を紹介しようかと相当苦労したが、次のものを紹介したい。

「エスカレーター」神沼三平太

 誰もがよく見かけ、使うことのある、街中にあるエスカレータ。自然な光景だからこそ、異常なことが起きれば、より恐怖を感じやすくなるという見本のような話がこれである。この怪談は、まるで恐怖と不思議の交差点に迷いこんでしまったかのような感覚を読む人に与える。

 工藤さんが長い上りエスカレーターに乗ることからこの話は始まる。彼よりも少し前には、スーツケースを持ったサラリーマンが乗っていた。そのサラリーマンが前のめりに倒れたのを見た工藤さんが痛い膝をおして、駆けつける。

 迫るエスカレーターの終着点。なおも起きようとしないサラリーマン。そして……

 容赦なく昇っていくエスカレーターが読者をハラハラさせる。そして、後に残されたスーツケースが謎を深める……

「風の子供」ねこや堂

 まるで、遠い昔の日本の原風景を描いた、一篇の詩を読んでいるような怪談。しかしこの不思議な男の子が現れたのは、昔の話などではなく、この時代に起きたできごと。

 ぜひとも、想像力を働かせながら読んで欲しい一作である。

「通勤電車」ねこや堂

 これは、非常に短い作品である。ページを開いた瞬間に読み終えてしまうほどだ。そして、そこには日常の描写が描かれているだけなのだが、実は霊が見える人ならではの表現と描写が詰まっている作品なのだ。

 こんな怪談はほかに見たことも聞いたこともない。霊が見えるとはどういうことかなのか、その一端が垣間見られるような作品である。

「頁」加藤一

 怪談本で本の話題はかなり強烈だ。今、その場で本を開いて読んでいるのだから。

 物語の主人公が、那覇の本屋で、古本とは思えない綺麗さを気に入って一冊の本を買った。ところが翌日、目に違和感を覚える。左目が真っ赤に腫れ上がってしまったのだ。

 そのため予定していた外出を取りやめ、昨日購入した本を読みだした。読みだしたところで、その本にあるものが挟まっていることに気づいた。これを挟んだのは誰? まさか自分? そして、一週間以上続いた左目の痛みは、何が原因だったのか。

 謎が解けず、恐怖とも嫌悪感ともつかない、嫌な後味の残る怪談。

「バーボンさん」 高田公太

 わたしにも行きつけのバーがいくつかあり、そこではいろんなことが起きるが、このような怪異は、実は日常茶飯事的に起きていることなのだ。

 ドランカーたちがシンパシーを感じているにもかかわらず、誰も目にしたことのない「バーボンさん」と呼ばれているもの。怪談会を開いていると、日本の各地で耳にするバーボンさんの存在。

 一杯やりながら、「俺のバーボンさん」を見つけるのも一興か、と思わせてくれるようなそんな話である。

「砂利の敷地」高田公太

 唐突に青森訛りから始まるこの怪談は、拍子抜けするくらい、最初はなにもなく、普通の会話が進んでいく。ところが物語の主人公・前田氏と氏の会社社長が工事の仕事を断ることから、前田氏の不思議な体験は始まる。

 なぜその社長は工事を断ったのか。そこに突如として現れた子供は何だったのか。そして、しばらくして、その場を訪れた前田氏が見たものは……

 読み始めとは異なり、後半からねっとりとした怪談になっているこの作品。青森のお国訛りと、そして、古い家の昔から風習。やはり怪談は土地土地にあるのだと再認識させてくれる怪談。

「消えた少年たち」

 実は岡田氏も不思議な体験をしているが、今回は特別に幼少の頃、北海道で経験したエピソードを語ってくれた。やわらかな語り口だが、どことなく寂しげな「不思議体験」をどうぞ。

幼少の頃、北海道で体験した出来事。実話のため、オチはない。場所提供――中野26chart

プロフィール

岡田篤彦

株式会社SPPS 取締役副社長兼最高技術責任者。ソフトウエアのテスト、品質保証、マネージメント専門家。

 ITの世界にどっぷりと浸かっているが、自身の怪異体験から、怪異の存在を認めざるを得ないでいる、怪異懐疑派。怪異現象については、分析、解説を行なうのが悪い癖。

 北海道富良野「FMラジオふらの」の「不安奇異夜話富良野之怪ラジヲ変」を中心にネット怪談番組に出演中。

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