紙も買う、サービス終了に不安――電子書籍ユーザー調査Fastask調査

有料の電子書籍購入経験者を対象にアンケート調査で、「じっくり読みたいときには紙の本を買う」「現在利用しているサービスがなくなってしまうか不安」が6割近いという結果になった。

» 2013年08月29日 11時15分 公開
[渡辺まりか,ITmedia]

 ジャストシステムはセルフ型ネットリサーチ「Fastask(ファストアスク)」で電子書籍購入者の利用状況アンケート調査を行い、その結果を発表した。調査対象は有料の電子書籍購入経験者、20代から60代の男女650名。調査期間は7月23日から7月24日。

 調査によると、電子書籍1カ月の平均購入金額は1000円以上3000円未満と100円以上500円未満が最多で20.6%、「2013年に入ってから購入していない」が15.5%だった。年代別では、20代は500円以上1000円未満が最多で17.7%だったが、1万円以上購入している比率は全年代の中で最も高く9.2%。30代40代では100円以上500円未満が最多で25.4%、「2013年に入ってから有料の電子書籍は購入していない」が最も高かったのは50代の21.5%となった。60代では1000円以上3000円未満が26.9%と全年代の中で高い比率を占めたが、1万円以上購入しているという回答者も3.1%いた。

「2013年に入ってからの1カ月あたりの電子書籍の購入平均金額」

電子書籍利用者も紙の書籍を利用している

 興味深いのは、2013年に入ってから紙の書籍の1カ月平均購入金額で、電子書籍を利用しているのに、1000円以上購入している人が60.0%で、中でも1万円以上と回答した人が6.2%おり、電子書籍の同項目の3.5%を上回った。

「2013年に入ってからの1カ月あたりの紙の本の購入平均金額」

 また、紙の書籍の購入頻度も、「変わらない」と回答した人が全体の61.7%、「増えた」と回答したのは2.8%で合計すると「減った」と回答した32.2%の2倍という結果に。なお、年代別に見ると、「減った」と回答した人の最も多い年代は50代で38.5%、「増えた」と回答した年代は20代の6.2%が最多となった。

「有料の電子書籍を購入してからの紙の本の購入頻度」

 電子書籍を利用する理由は、複数回答と単一回答(最大の理由)の2通りで調査しており、いずれも「置き場所に困らないから」が最多(複数回答:58.5%、単一回答:27.8% 以下同様に列挙)で、次いで「電子書籍を入手するのが簡単だから」(44.5%、16.0%)、「何冊もの本を持ち運べるから」(41.2%、13.4%)「電子書籍端末だけでなくタブレットやスマートフォンでも読めるから」(41.2%、12.8%)となり、電子書籍ならではの利便性が大きな理由を占めていることが明らかになった。逆に、「人より進んで見られたいから」という項目は、全体の中で最少で4.5%だった。

 ある程度歳を重ねると、小さい文字が見づらくなるので、同設問(複数回答)の「拡大縮小など大きさを変えられるから」は50代で25.4%、60代では34.6%と、全年代の中でも高かったが、それでも、「置き場所に困らないから」がそれぞれ64.6%、56.9%だったことから、重要な理由ではないことが分かる。

「電子書籍を利用する理由」
「電子書籍を利用する一番大きな理由」

どのような環境で利用しているか

 利用端末(複数回答)の項目では、「PC(デスクトップ/ノート)」の44.2%が最多だったが、タブレットPC(iOS、Android、Kindle Fire、その他)の合計は半数以上の58.4%、スマートフォンの合計も44.5%となり、持ち運びに便利な端末で、移動中に利用している様子がうかがえる。

 なお、単一回答(最も利用する端末)ではタブレット端末の利用が36.4%、PCが25.3%、スマートフォン20.5%、電子書籍専用端末15.1%となり、表示領域の大きな画面での閲覧が好まれているようだ。

「電子書籍の閲覧で利用する端末」
「電子書籍の閲覧で最も利用する端末」

 「同じタイトルで紙の本と電子書籍があった場合、電子書籍を選択する」に対しては「どちらともいえない」が41.4%で「あてはまる」「ややあてはまる」の合計36.8%を上回り、どちらを選ぶかはその時々であることがうかがえる。

「じっくり読むときは紙」、サービスに対する不安も

 電子書籍特有の問題の、「自分が本のどの部分を読んでいるのかが分からないのが不満だ」という項目では「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の合計が40.9%で「あてはまる」「ややあてはまる」の35.7%を上回り、特に問題にはしていないようだ。ただし、「じっくり読みたいと思う本は電子書籍よりも紙の本を選ぶ」では、「あてはまる」「ややあてはまる」が58.9%で「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の16.8%を3倍も上回った。

 サービスには「現在利用しているサービスが突然終了して、今まで購入した本が利用できなくならないか心配だ」に「あてはまる」「ややあてはまる」が56.8%と6割近い人が不安を抱いていることが分かった。

 購入価格では「前から欲しいと思っていた本でなくても、セール価格になっていると購入してしまうことがある」に対して「あてはまる」「ややあてはまる」の合計が43.8%、「電子書籍を購入する場合、紙の本と比較して妥当と思われる金額」は「50%以下」と答えた人の合計が71.1%で、紙の書籍よりお得に購入したいという利用者意識が垣間見られた。

「電子書籍を購入する場合、紙の本と比較して妥当と思われる金額」

 今回、電子書籍を購入したことのある人たちが調査対象だったが、電子書籍を利用するようになっても、紙の書籍の購入頻度に変化がないこと、また紙と電子版を使い分けている状況が浮かび上がってきた。BookLiveが7月3日から6日、東京国際ブックフェア来場者向けに実施した「電子書籍の利用に関する意識調査」では対象が今回とは異なっているので、比較してみるのも興味深いかもしれない。

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