深まってきた秋のおともに。『岸辺露伴、ルーヴルへ行く』を紹介します。
ねえ この世で「最も黒い絵」って知ってる?
季節は秋。芸術の秋にふさわしい、芸術と漫画、アートとエンターテインメントが交錯する作品『岸辺露伴、ルーヴルへ行く』をご紹介します。
2009年1月、フランス・パリのルーヴル美術館でのテーマ企画展「小さなデッサン展 ― 漫画の世界でルーヴルを ― 」の会場に荒木飛呂彦先生の原画が展示されました。古今東西の美が集結したルーヴル美術館に、日本の漫画家の絵が展示されるのはもちろんはじめての出来事。
その企画展で荒木先生がルーヴル美術館の展開するBD(バンド・シネ/漫画)プロジェクト第5弾作品として、フルカラー読切作品を描き下ろすことが発表されました。
その読切作品が、今回ご紹介する『岸辺露伴、ルーヴルへ行く』です。荒木先生といえば、言わずもがな『ジョジョの奇妙な冒険』の作者であり、今回の作品の主人公である岸辺露伴はジョジョ第4部の人気キャラクターです。
ぼくの名前は岸辺露伴(27)
両親が付けてくれた名前で「露」は はかなきもの
そして「伴」はともにすごすという意味
職業はマンガ家で 国籍は日本
そしてあまり重要な事柄ではないし
必要な時もたいしてない行動なのだが……
人を『本』にして その人物の『人生』を文字で読むことができる能力を持っている
ジョジョではおなじみのスタンド能力。露伴は“ヘブンズドアー”というスタンドを持っており、人間を本に変え、その人の記憶や性格などを読みとり、余白部分に新たな事項を書き込むことでその行動を制限することができます。
物語は17歳の露伴がある一人の女性と出会うことから始まります。
当時、デビューを目指し、新人マンガコンテスト投稿用のマンガ原稿を描くために祖母の経営するアパートに滞在していた露伴は、そこで藤倉 奈々瀬という女性に出会い、彼女からこの世で最も黒く、邪悪な絵の話を聞かされます。
その後、奈々瀬は失踪。それから10年経ったある日のこと、突然その絵について思い出した露伴は、好奇心か、はたまた青春の慕情なのか、ルーヴル美術館を訪れることになり、そこで奇怪な事件に巻き込まれてしまうのです。
この作品、ジョジョを読んだことがないから、と敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで描かれている露伴は4部の露伴とは違い、いわばパラレルワールドのお話として、1の読切作品として成立している作品なので、ジョジョを知らない方でも楽しめますよ!
また、作品内に出てくる露伴のポーズには、ルーヴル所蔵のミケランジェロ・ブオナローティ作の彫刻「品詞の奴隷」のポーズをルーヴルへのオマージュとして取り入れているなど、エンターテインメントでありながらアートとしても楽しめる作品です。
皆さんも芸術の秋を感じながら、『岸辺露伴、ルーブルへ行く』を読んでみては?
(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)
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