Kindle MatchBook、書籍販売業界を混乱させる

読者が紙書籍を買うと電子書籍を低価格で提供する「Kindle MatchBook」は、『一度購入すれば、どこでも読める』という考え方を促進し、従来の書籍販売業界への警鐘となるだろう。

» 2013年10月18日 17時12分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 シアトルに拠点を置く電子商取引の巨大企業Amazon.comは9月に、従来の書籍販売業界をひどく混乱させる新プログラム「Kindle MatchBook」を10月から開始すると発表した。これは、読者が紙書籍を買うと電子書籍を低価格(0〜2.99ドル)で提供するプログラムで、読者に紙と電子書籍の両方を購入するインセンティブを提供するものだ。

 Matchbookは1万タイトル以上の作品を対象にスタート予定で、Harper CollinsやHoughton Mifflin Harcourtなどの出版社が同プログラムに参加している。Amazonは出版社に対し、プログラムへの加入と紙・電子書籍のバンドルを行うよう積極的に働きかけている。

 「顧客にとって新たに大きな利益になるだけでなく、既刊本の売り上げをさらに伸ばせる出版社と著者にとって、これは容易な選択肢です」とKindle Content担当副社長のラス・グランディネッティ氏は話す。

 オンデマンドでプリント版書籍を出版するCreatespaceとMatchbookとのシナジーを考えれば、個人出版著者がこのプラットフォームに作品を追加する当事者となるかもしれない。明らかに個人出版著者は従来の出版社よりもこのプログラムにより多くの価値を見出すのではないだろうか。

 多くの業界アナリストは、読者が紙版か電子版のどちらかを購入する傾向にあるとリポートしている。業界誌The Booksellerの編集者、フィリップ・ジョーンズ氏は「わたしの知る限り、ほとんどの人はどちらかのフォーマット、つまり、紙版か電子版を選択して本を読んでいるので、そのどちらも読むということはかなりまれなこと」だという。だが筆者はこの見解は見当違いで、CDを購入すると無料のMP3データを提供するAmazon AutoRipUltravioletと同様にMatchbookは成功すると考える。

 消費者は選択肢を好んでおり、一部の人は電子書籍革命に参加するか迷っている可能性がある。Ultravioletは無料電子データをDVD・Blu-Rayとバンドルすることで大きな成功を収めているし、Barnes & NobleはUltravioletと提携したNOOK Videoプログラムでそれなりの成功を収めている。明らかに、物理メディアを購入するすべての人が電子データを利用する訳ではない。これらの人はiTunesやGoogle TVを利用していても、より多くをオンラインで購入し続けている。Amazonは無料または割引価格で提供される電子書籍の魅力が、より多くのユーザーをKindleに引き付けることに賭けている。

 Amazonのジェフ・ベゾスCEOは昨年、Kindleハードウェアはまったく利益を出していないとBBCに語った。代わりに、このデバイスはユーザーに利益の出るKindle対応電子書籍・関連製品を確実に購入させることを狙っている。

 Matchbookが勢いを見せれば、従来の書籍販売業界に警告を発するだろう。出版社と書籍販売者は代替ビジネスモデルを採用しコンテンツをバンドルする必要性を感じるはずだ。これにより誰もが売り込もうとしている『一度購入すれば、どこでも読める』という考え方が促進されるだろう。

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