マイクロコンテンツの進化形――1周年を迎えたKindleストアで「Kindle 連載」始まる

作品を連載形式で配信するAmazonの新たな取り組み「Kindle 連載」。1周年を迎え、好調な立ち上がりを見せるKindleストアの新たな武器になるか。

» 2013年10月28日 15時00分 公開
[西尾泰三,eBook USER]

 アマゾンジャパンは10月25日、“マイクロコンテンツの進化形”とうたう電子書籍の新たな配信サービス「Kindle 連載」を同日から開始した。

 同サービスは、作品を連載形式で配信するもの。海外では「Kindle Serials」の名称で展開されている。Kindle連載の対象作品はあらかじめ話数、配信予定日が決められており、読者が作品を購入し、新たな話が配信開始されると自動的にKindle端末あるいはKindleアプリに配信される(メールでも通知される)。すでに数話進んでいる状態――例えば3話まで配信済み――の作品を購入した場合は、そこまでの話をすべて読むことができる。もちろん追加料金などは発生しない。

 イメージとしては、タイトルの外枠があり、時間の経過とともに話が増えていくもの。紙で連載されている作品が単行本化されるまでの待ち時間がないものと考えてもよいだろう。連載が終了し、1つの作品となった段階でKindle連載のカテゴリから外れ、通常のKindle本として配信される。また、予定通りに配信が行われない場合などは返金対応となる。

 10月25日から始まったKindle連載コーナーには、藤井太洋氏の『UNDERGROUND MARKET ヒステリアン・ケース』、鈴木みそ氏の『マスゴミ』、林真理子さんの『美女入門パート12』、うめ氏の『東京トイボックス 0』、朝日新聞朝刊に掲載された連載をまとめた『教育進化論 子どもの未来をきりひらく「学び」革命』など小説、コミック18作品が並んでいる。このほか、今年で著作権保護期間が終了した吉川英治氏の『宮本武蔵』が無料で用意されており、Kindle 連載がどのようなものか体験するためのものとなっている。

Kindle 連載などについて説明したアマゾンジャパンKindleコンテンツ事業部事業部長の友田雄介氏

 Kindle連載は常時20前後の作品が並び、連載終了でこの枠から外れた作品の代わりに新たなKindle連載作品が登場する形となる。その選定はアマゾンジャパンが行う。この取り組みで、Amazonは基本的に配信、つまり売る部分だけに特化し、作品の校正などいわゆる“出版社の機能”的な部分は担わない考えだという(ちなみに、Amazonは海外では自社で出版レーベルを複数有し、そこから多くの作品をリリースしている)。

 また、入稿システムはKindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)とほぼ同じものが別系統で存在しているが、現時点では個人出版の作品を扱う考えはなく、出版社との連携が前提となったサービスとなっている(実際に、10月25日に配信開始された作品はどれも何らかの形で出版社などが介在している)。

 Kindle 連載の発表は、同日のプレス向け発表会で行われた。ここではKindleストアの現状についても言及があり、Kindleストアの日本語書籍は14万8000点以上に増え、日本のKindleストアにおける紙本に対するKindle本の売り上げ比率は、2007年にオープンした米国のKindleストアの1年目と比べると明らかに高く、米国でのオープンから少し遅れてスタートし、現在ではKindleが高いシェアを持つ英国でのそれとほぼ同じものになっている。非英語圏のドイツと比べても高く、日本での展開に自信を見せている。

修正履歴:初出時、「実際に、10月25日に配信開始された作品はどれも完全新作ではなく、何らかの形で出版社などが刊行する紙媒体で掲載、または掲載されるもの」と表記していましたが、完全新作も存在するため、出版社の介在に関する文言を修正しました(2013年10月28日 20:23)。


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