お約束を守らなければ世界は滅びる? 『約束使い!1 ノーラ・ポムポムのお約束』

「約束の展開」がこれでもかとばかりに詰め込まれた作品『約束使い!1 ノーラ・ポムポムのお約束』を紹介します。

» 2013年11月19日 16時30分 公開
[ラノコミどっとこむ]
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 お約束。

 それは創作物の世界においては、王道や、テンプレートとされている定番の設定や展開のこと。どこにでもいそうなごく普通の主人公の目の前に、ある日突然、なぞの美少女転校生が現れて、いままでの平凡な学園生活がハチャメチャなものになったり、その主人公の周りには、なぜか、ツンデレな幼なじみや、地味だけどスタイル抜群な委員長がいて、いつのまにか美少女転校生も交えて全員からモテモテになったり……なんていうのはハーレム系ラブコメによくあるお約束の展開である。

 『約束使い!1 ノーラ・ポムポムのお約束』(講談社ラノベ文庫)は、そんな“お約束”をテーマにした、魔法使いの女の子と、ある少年の物語だ。

 平凡な少年、金山 堅道(かねやま かたみち)の下に、ある日、突然魔法少女が降ってくる。

私の名はノーラ。ノーラ・イビルデッド・フランソワ・ポムポム。
レベル『うっかりさん』の魔法使いにして約束使いなのさ!

 ノーラと名乗るその少女は堅道の家にそのまま居つき、次々となぞの魔法をかけていく。魔法使いであるのと同時に『約束使い』でもあるというノーラは、物語の王道の流れ=“お約束”を守らせるために、あらゆる手段を使って行動し、その度に困った事件を引き起こしていく。

 そう、ノーラの思い描いている約束とは、漫画やアニメなどの世界に出てくる知識で構成された、ちょっと偏ったお約束だったのだ。そうとは知らずにノーラと契約してしまった堅道は、彼女とともに行動する中で数多くの事件に巻き込まれてしまう。

 そんな中現れる、ノーラのライバル、“約束やぶり”の魔法使い・キティにより学園は大混乱に。さらには、堅道の幼なじみである織櫛 美夏(おりぐし みか)やクラス委員の天ケ瀬 優子(あまがせ ゆうこ)も巻き込んでいって事態はよりややこしいことに……。

 といったこの物語。既にあらすじをご紹介しただけで、どこからツッコミを入れたらいいのか、いやこれはもうツッコんだら負けというやつなのではないかと思ってしまうぐらい、お約束がふんだんに盛り込まれているのは明らかである。かくいうわたしもいったい、どれだけの数のお約束が描かれているのかと数えてみようと思ったが、数ページ読んであきらめてしまった。

 なぜなら、トッポも驚くほどに、この小説は最初から最後までお約束たっぷりなのだ。

 突然現れる魔法使いの女の子(ロリ)!

 それに数ページで順応する、平凡なはずなのに驚きの適応能力を持つ主人公!

 なぜだか優しい、いとこのお姉さん!

 やっぱりいるよね、ツンデレ幼なじ!

 こっちも必要だよね、眼鏡っ子委員長(巨乳)!

 またしても突然現れる魔法使いの女の子その2(ロリ2)!

 狙ったかのように現れる悪の組織(変態)!

 明らかにされる主人公とヒロインの過去!

 お分かりいただけただろうか。これでもかというほど、お約束のオンパレードである。それに加えて、ヒロインであるノーラ。漫画や深夜アニメの知識から構成されている彼女のお約束は、言ってしまえばおっさんそのものだ。女子の体操着はブルマであるべきだと考えるノーラは、あろうことか、魔法で女生徒たちの服装をブルマに変えてしまう。完全におっさん、アウトである。

 ロリなのにおっさん。一見、そんな期待を裏切る展開はお約束じゃないのでは? とも思うが、こういったパターン破りを少し仕込んでいるのも、ある意味、お約束なのかもしれない。

 とにもかくにもこの作品、細けぇこたぁいいんだよ! 精神で読み進めていくのが一番良いと思われる。何しろそれもまた、暗黙のルール。お約束なのだ。

(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)

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