出版業界はタブレットに時間を浪費しているか

出版社が提供する電子書店型のアプリは、小売業者の依存度を下げるかもしれないが、まずそのアプリを見つけてもらい、そしてインストールさせるハードルのほかにもさまざまな課題がある。

» 2014年01月15日 14時30分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]
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 Digital Book Worldで自社プラットフォームを披露した企業によると、2013年に予想していた大きなトレンドの1つは、出版社と著者向けにブランド化し、出版社が電子書籍やオーディオブック、そのほかデジタルコンテンツについて小売業者を完全に切り離せるオンライン小売ストアになることだった。

 この動きはAmazonやBarnes & Nobleといった小売業者に依存することなく、また、著作権者の売り上げの一部を犠牲にすることもなく、顧客が購入を行う際に出版社のWebサイトへ誘導することを狙ったものだ。

 しかし、アイルランドのアクセス調査会社StatCounterが最近公開したタブレットオーナーのコンテンツ消費動向に関する新たなデータは、出版社が自社の経営資源の投入先を間違えていたことに気づきを与える一助となるかもしれない。

 StatCounterは、タブレットオーナーが世界のインターネット利用全体の5%以下を占めるに過ぎず、インターネット利用に関してはスマートフォンの後塵を拝しているとしている。加えて言えば、この調査結果では、デスクトップPCが依然として信じられないほど大きな差をつけてトップを占めている。

 この情報自体はタブレット上の読書活動にほとんど影響しないが、確実に明らかにしているのは、タブレットオーナーはアプリ内で読書している可能性はあるが、出版社ブランドのアプリを発見するほど長時間、インターネットをブラウズしているわけではないということだ。消費者は自身が利用する小売業者のWebサイトへひょいと移動して、書籍を購入し、自分のデバイスやタブレットアプリへ直接送信している。

 このことは、出版社が電子書籍アプリを開発する際、アプリ内購入のインセンティブなどを用意できるとしても、購入したい本のタイトル、場合によっては著者名や出版社名すらも知っておくようエンドユーザーに暗黙的に求めることを意味する。複数の出版社がどの電子書店にもアクセスできるアプリを共同して開発しなければ、消費者がそれぞれの出版社のアプリをダウンロードして利用するといったことはまず起こらないだろう。

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