従来の出版社、インディー著者の経験に学ぶ

この作品の続きはいつ刊行されるのか――続きを楽しみにしているファンを待たせることなく作品を提供するノウハウを出版社がどう自らの糧としていくかが注目される。

» 2014年03月11日 14時41分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 出版業界で一番イラッとしたことは何か? ――従来型の方法で出版したことのある著者にこう問えば、その答えはかなり多岐に渡るかもしれない。

 Digital Book WorldとWriter's Digestが実施した9000人の著者への調査では、クリエイティブへのコントロールの欠如・著作権料・編集決定権などが挙げられているが、いまだに著者を悩ませるもう1つの要因は、出版業界での一見ランダムで長期間に渡る出版遅延によるものだ。従来の出版業界が必要とするようなプロジェクトを待っている時間はないと何人かの著者が公に述べたように、この要因は実際には紙と電子のハイブリッド出版を促進する役割を果たしてきた。

 現在、デジタルファーストで出版する初期投資の低さと、自主出版作家が示した先例のおかげで、出版業界には新たなトレンドが生まれている。より多くの出版社が、作品――特にシリーズ物の続編――をこれまでにない早さで読者に届けることを可能にしており、作品公開に向け人為的に設定される長期の待機時間をなくしつつある。

 プロセスの高速化の一部は、ヒュー・ハウイー氏、C・J・ライオンズ氏のような成功した“ハイブリッド著者”のおかげかもしれない。2013年、ニューヨークで開催されたBookExpoでライオンズ氏は、新作のリリースにしばしば2年間もの間隔を空けるダン·ブラウン氏のような著名作家との比較を行った。

 「作品のファンが次に何が起こるかを知るために2年間待たなければならないとすると、わたしの家の窓にレンガを投げ込むかもしれません」とライオンズ氏は、ほかの出席者に対して述べた。

 一方、Digital Book Worldで新たな造語“ハイブリッド著者”についてインタビューを受けたハウイー氏は、ファンは自分の好きな作家の新コンテンツに瞬時にアクセスすることを求めているという旨の重要な発言を行った。彼は、読者が『Silo Saga』の第1話をダウンロードしてわずか数時間後に、続きがいつ入手できるのか知ろうとメールを送ってくることを指摘した。ハウイー氏の主張は、彼自身の決まり文句である「第1巻の最高のプロモーション方法は第2巻を書くこと」に集約されており、ファンは続きを読むのに果てしなく待つ必要はないと理解しつつ、シリーズに没頭することができる。

 『Fifty Shades of Grey』3部作やベラ・アンドレ氏のマルチタイトル、『The Sullivans』のような自主出版作品が最終的に従来の方法で出版されたシリーズの成功に従って、ファンは従来の出版業界だと1年を超えることもある出版遅延を経験することなく、続きを読むオプションを期待するようになった。今、出版社は細心の注意を払い、作品の市場投入までの時間に、人為的に設定された待機時間を含まないようにする取り組みを行っている。

 Good E-Readerが取り上げた最初の成功したシリーズの1つは、ブリタニー・ゲラゴテリス氏がWattpadから発信しているシリーズで、Simon & Schsterによる出版が決まった。2013年7月に出版されたシリーズ最初の本『Life’s Witch』から始まり、シリーズの残りの2タイトルは先月末までに両方購入可能となった。

 出版社が自主出版を非常に魅力的なものにするより多くのアイデア――より高額の著作権料・より広範なクリエイティブへのコントロール・作品の市場投入までの時間短縮――を採用し始めるにつれ、このようなタイプのビジネス上の関係の人気復活が始まるかもしれない。今のところ、これまで以上により多くの著者が、自分の作品を出版する前に出版業界に背を向けつつあり、出版社がそれらの著者を呼び戻すためにどこまで踏み込むのか興味深い。

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