Espresso Book Machine、セルフパブリッシングの一部を効率化

プリント・オン・デマンド機器「Espresso Book Machine」は、セルフパブリッシング作家と消費者の需要に応える存在となっていくだろうか。

» 2014年05月28日 13時39分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]

 キオスク方式の印刷機、Espresso Book Machine(EBM)は、本の「印刷」と「販売」に革命を起こすべく生み出された。

 こうしたスタンドアロン機器の登場は、書店の置き換えにつながるのではないかと見られていた。つまり、未来の顧客というのは、出版物の置かれていない小型の小売スペースに入店し、機器の画面から作品を選択し、きれいに製本された本を印刷機が吐き出すまで1分ほど待ってそれを受け取ることになるだろうと思われていたのだ。

 EBMは顧客にどんな本でもすぐに提供するだけでない。書店に対しても、本が破れたり盗まれたりすることや、人気作品の店頭在庫がなく顧客を逃すといった機会損失から解き放ち、究極的には、書店を均一化してしまうのではないかと見られていた。

 しかし不幸にも、EBMはほとんどの書店にとってあまりにも高額で、導入の検討すらされなかった。ライセンス料だけでも多くの独立系書店の手に届くところにはなく、そうした懸念が多くのオーナーを消極的にしてしまった。

 ただし、一部の書店で導入されているEBMはうまくいっている。それは、特定の教科書や学術書、絶版になった書籍のようなニッチ市場、あるいは本が届くのを待ちたくない顧客にうまくハマったからだ。

 米国の書店チェーンBooks-A-Millionでは、EBMに新たな顧客を見いだしている。その顧客とは、少量印刷が必要なセルフパブリッシング作家だ。

 プリント・オン・デマンド企業は、(自費出版を手掛ける)ヴァニティ・プレスがやっているような大量かつ高額な印刷代を作家に求めないことで、セルフパブリッシング業界に革命を起こした。しかし作家は、そうした作業をサポートしてくれるエキスパートと直接作業するのを好む場合もある。

 Books-A-Millionのトレバー・コナットザー氏は、作家と消費者が本を作成したり購入したりするプロセスについて話す中で、EBMの利用者はEBMから生み出される本の仕上がりに常に楽しげな驚きを見せるという。

 「実際にEBMのメインの用途はセルフパブリッシングです。一部の考古学書籍のような無名の学術書を求めるニッチな顧客も数人いましたが、セルフパブリッシング作家が来店し、自分のタイトルを数部印刷しているケースがほとんどです」(コナットザー氏)

 コナットザー氏はEBMの重要性について、EBMが生み出す本の仕上がりのよさを強調しながら、「ハードウェア的にみれば最終工程の印刷機以外はほとんどまったく同じで、本の制作を少しばかりスムーズにしているのです」と話す。その仕上がりは、とりわけ児童書・写真集などのフルカラー作品では、店内で販売されている書籍とまったく変わらない。

 セルフパブリッシング作家と消費者の需要に応えるという点で、EBMにはより大きく前進してほしいと思う。技術的には堅実で、現在の出版環境では重要なEBMをより広いマーケットに配置すればよいだけのことだ。

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