名称変更に際して記者会見を開催。これからの取り組みが発表された。
漫画家の赤松健氏が代表取締役社長を務める「Jコミ」が7月11日にバージョンアップし、新たに「絶版マンガ図書館」へと名称を変更する。それに伴い7月10日、報道記者やファンを対象とした会見が都内で開催された。
Jコミではこれまで、マンガ内に入れた広告の収益を作家へ100%還元する取り組みや、電子透かしの入ったマンガ(PDF)の限定販売とクラウドファンディングを組み合わせた「JコミFANディング」、5月16日に正式版をスタートさせたプリンドオンデマンドサービス「Jコミで印刷できるってよHD」などの取り組みを行ってきた。
中でも広告収益は、発表から10年以上経過している作品にとっては効果的で、電子書籍の売り上げが年1000円を切っている作品にとっては、Jコミに掲載したほうが利益があるという(年に1万円以上の利益をだしている作品は、有料配信のままのほうがいいとのこと)。
赤松氏はまず、マンガの海賊版について言及。ネットを使い、自身の作品『ラブひな』の海賊版が簡単にダウンロードできてしまうことを説明した後、海賊版の撃滅を訴えた。
絶版マンガ図書館では、大きく2つの目的が掲げられている。それは「古今東西の全てのマンガ(ただし出版社がもう扱っていないもの)を収集し、『日本のマンガ文化の100%保存』の一翼を担う」こと、そして「絶版マンガの海賊版を、完全に撃滅する」こと。さらにそれに関連した、9つのキーワードが挙げられた。
電子書籍版YouTubeとは、まず読者がある作品(Aとする)の資料をアップロードすると、絶版かどうかを判断するアルゴリズムにより判定が行われ、おそらく絶版であると判断されたものはランダムに選ばれた5ページを透かし入りで公開される。その後、Aの作者から連絡が入り公開を承諾してもらえれば広告入りで公開するというもの。
公開されたマンガは、スマホの専用アプリや、今回提携が発表されたSBイノベンチャーの電子コミックアプリ「ハートコミックス」で配信されるほか、希望があればKDPへの登録代行や、GoogleへのDMCA侵害申し立ても行うという。なお、特にYouTubeとした意味はないようだ。
Jコミでは、「赤松健による作品解説」という赤松氏が作品を解説するものがあったが、絶版マンガ図書館では新たに書き込み可能なWiki欄を用意。ファンや作家本人が書き込めるため、Wikipediaの情報よりマニアックな内容になるのではとのこと。
東京大学の相澤研究室と共同で、マンガのフキダシ部分を自動でデータ化し、翻訳する取り組みも行っている。精度は完全ではないものの、英語やドイツ語などさまざまな言語に翻訳可能。また読み上げ機能もある。
さらに、データ化したフキダシのセリフと広告を結び付けることも考えており、読書中にセリフに関連した商品をお勧めしたり、単語の検索結果に絶版マンガ図書館のマンガが表示されたりといったことを実施していきたいという。
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