「だいぶお金を使った」――漫画制作ソフト「Cloud Alpaca」は開発に1億円かけたが、利用は完全無料だ。赤字ながら無償提供を続ける理由は――。
昨年末に登場した漫画制作ソフト「Cloud Alpaca」(クラウドアルパカ)は、ネットユーザーを驚かせた。数千円〜数万円程度が一般的な漫画制作ソフトの相場だが、Cloud Alpacaは完全無料。漫画制作のツールだけでなく人物や背景、スクリーントーンなど素材まで無料なのは極めて異例だ。
「だいぶお金を使った」――「Cloud Alpaca」を提供するベンチャー企業・MediBangの高島秀行社長は笑う。約1億円かけて開発しており、今後も素材の追加などアップデートを続けるが、基本的な機能は無料を貫く予定。春にはタブレット版も無料公開する計画だ。
狙いは、漫画制作ソフト市場で圧倒的なシェアを獲得すること。日本中、世界中の漫画家にCloud Alpacaを使ってもらうことで同社プラットフォーム上に作家を集め、人気作を生み出して収益につなげていく計画だ。「漫画制作に革命を起こしたい」と高島社長は意気込む。
Cloud Alpacaは、漫画制作の効率を高める狙いで開発したPC/Mac対応のソフトだ。ピージーエヌの無料ペイントソフト「Fire Alpaca」をベースに、吹き出しやスクリーントーン、人物・背景素材など漫画に必要な機能を追加。素材は日々追加しており、数十万、数百万という単位でそろえていくという。
ソフト上で制作したデータはすべてクラウド上に保存され、複数人が同時に別の場所からデータを読み書きする「チーム制作」も可能だ。作成した漫画はEPUBで出力でき、同社が運営する電子書籍販売サイト「MediBang!」にアップロードして有料/無料で公開できるほか、MediBang!からKindleストアに簡単に配信・販売できる。
ユーザーインタフェースは日本語だけではなく、英語や中国語、韓国語、スペイン語、フランス語などにも対応。昨年11月の公開以来、約4万5000回ダウンロードされており、うち3割が海外からだ。韓国(全体の10%)、米国(同)、中国(7%)からのダウンロードが多いという。
「音楽のように、漫画制作を変えていきたい」――高島社長はこう話す。
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