神保町の大型書店「書泉グランデ」で、シャッツキステのメイドたちによるデート企画を実施。いつもは本を紹介する側のメイドたちですが、今回はお薦めの本を店員に紹介してもらったようです。
毎週金曜に連載している、秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」のメイドたちによる本紹介。2013年4月にスタートしたこの企画も、もう少しで丸2年、紹介した本も前回で91冊に達しました。
エリス、レイラ、サヤの3人が司書メイドのミソノにお薦めの本を紹介していき、好感度パラメーターが100%になるとミソノとのデート権を獲得できるという本企画。前回、前々回でついにレイラとサヤの2人が100%となり、ミソノと3人でデートをすることになりました。
本記事では、メイドたちの後ろをこっそりと付いていき、デートの様子を写真付きでリポートしていきます。雨のそぼ降る夜の神保町に繰り出した3人が向かったのは、本の砦(とりで)「書泉グランデ」。うわさによると、ここには「書店男子」に選ばれた執事がいるとのことですが……。
近藤さん「ようこそ書泉グランデへ。こよいはどのような本をお探しですか?」
あら、執事さん? こちらの店員さんなのかしら!
本屋さんに執事服が素敵にマッチしていますね!
せっかくですから、ぜひおすすめの本を紹介してもらいましょうよ!
近藤さん「当店では、地下1階から地上6階までさまざまな本を取りそろえてございます。それぞれの階にジャンルごとの担当者がおりますので、お気に召すような本を紹介するよう伝えておきましょう。それではまず、3階にお上がりください」
何やら胸の高鳴りが……! ありがとうございます、3階に行ってみますね!
3階に通された3人の目の前には、棚いっぱいに並べられたさまざまなボードゲームが。ボードゲームをフロア一面という規模で展開する書店は、担当者によるとおそらく日本でもここぐらいとのこと。
普段からシャッツキステでボードゲームの企画を担当しているレイラは、フロアに着くなり走り出しそうなテンションに。どうやら最初はレイラとミソノのデートタイムのようです。
すごい! 本屋さんなのに、こんなにボードゲームがそろっているなんて! 夢のようだわ!
担当さん「よろしければ、お薦めのボードゲームを紹介しましょうか?」
ぜひお願いします!
担当さん「では、こちらの『ガイスター』などはいかがでしょうか。今日はデートとのことなので、2人で向かい合ってコマを進めるガイスターはうってつけだと思いますよ」
あら! ガイスターは当館でもとっても人気の高いゲームなのよ。
担当さん「おや、ご存じでしたか。当店でも売り上げベスト10に入る人気ゲームです。盤に向き合って、かわいいおばけのコマを動かして対戦するうちに、2人の仲もさらに親密になること請け合いです」
ほかにはどんなボードゲームがありますか?
担当さん「こちらの『ヒットマンガ』は、マンガのふきだしに言葉を当てはめるゲームです。大勢でプレイするとより楽しむことができるゲームとなっております。こちらの『海底探索』もお薦めですよ」
このデザイン、いい仕事してるわね!
ここには国内外を問わず、いろんなボードゲームがあるんですねー。
担当さん「独自ルートを開拓していまして、ここにしか置いていないような海外のボードゲームもあります。国内のボードゲームは、4年ほど前から取り扱うようになりました。もちろんボードゲーム関連の本もご用意しています。こちらの『ドイツゲームどうでしょう 2010』はさまざまなボードゲームのレビューが掲載されていますよ」
2010年の本だと少し前ですが、むしろ、なかなか手に入らないゲームや、絶版になってしまったものなどのアーカイブとしてもありがたいです。……さて、レイラさんが気になるものはありましたか?
うーん、私はこれ! 最初に紹介していただいたガイスターね。私たち、まだガイスターで対戦したことってなかったんじゃないかしら。
あら、そういえば。
今度2人で対戦しましょう! というわけで、ご紹介いただきありがとうございました。とても楽しかったわ!
ボードゲームフロアを満喫したあと3人が足を踏み入れたのは、何やらさまざまなグッズが販売されている地下フロア。メイドたちが入って来たのを見とめた眼光鋭いフロア担当者が近づいてきました。
お店の階段を下るうちに、地下に来てしまったようなのだけど、ここは……?
写真集がたくさんありますね。
棚にさりげなく握力を鍛えるグッズが置いてあるのはなぜかしら……?
担当さん「それは、ここがプロレスの専門フロアだからですよ、メイドさんたち! あ、ちなみに私はカメラNGで(小声)」
まぁ、プロレス! 実は私、プロレスって物語が感じられるスポーツだなぁと思って興味があったんです。でもなかなかその世界を知るきっかけがなくて。
ミソノさんがプロレス?
い、意外ね。
担当さん「なるほど、それならまず手始めにこちらの『プ女子百景』をどうぞ」
プ女子?
担当さん「全力でプロレス技を掛けあう女子の姿を描いたイラスト集です」
おしゃれな感じのさっぱりした絵柄だけど、この技を掛けあう女の子たちの苦悶の表情は真剣そのものね。
あら? この塀の上を歩いているイラストは?
担当さん「あ、これは“拝み渡り”ですね。本来はロープ上を歩きながら相手の手に深刻なダメージを与える技です」
それを壁の上を歩く女の子に置き換えているんですね。それにしても、こうやって手をとって高所を歩くなんて、きっと対戦相手の方も協力して……。
担当さん「何をおっしゃいます、真剣勝負ですよ! このイラストはかわいく描かれていますけど、実際は手首に計り知れないダメ―ジがですねぇ……!」
な、なるほど、奥が深いです……。
写真集もたくさんありますね。
担当さん「そちらの『しんにちLOVE』は、人気の『新日本プロレスリング』という団体にスポットを当てた写真満載の本ですね」
好きなものとか、選手のいろいろな情報が載ってるのね。これで選手のキャラクターをつかんで、応援したい人を見つけるのかしら。
担当さん「応援したい選手が決まったら『この選手のライバルは誰だろうか』みたいに興味の幅を広げるのがお薦めです」
本を読んで興味が出たら試合を見に行ってみたくなるけれど、私たちが見に行ってもいいものかしら。
担当さん「もちろん! 今は女性のプロレスファンも多いんですよ。当店でも試合のチケットを販売しています」
プロレスのチケットを本屋さんで買えちゃうんですか?
担当さん「レジにて受け付けております! 華やかな衣装や、技の多彩さ、エンターテイメント要素もありつつ戦いは真剣そのもの。プロレスはいろいろな楽しみ方ができます!」
これをきっかけに一度試合を見に行ってみようかしら!
近藤さん「1階文芸のフロアへようこそ。ほかのフロアはいかがでしたか?」
とっても楽しかったです。文学メイドのサヤちゃんはこのフロアが気になるんじゃないかしら?
読みたい本が棚にいっぱいあります! でも最近、作家さんの新規開拓がなかなかできていないので、お薦めの本を教えてもらいたいです。
近藤さん「こちらの『ラッフルズ・ホームズの冒険』はいかがでしょう。物語の前半では、かの名探偵シャーロック・ホームズを父に持つ主人公・ラッフルズ・ホームズが事件を解決する様子が楽しめます。出版元の論創社は、あまり翻訳されない珍しいミステリーを取り上げることで知られているのですよ」
スピンアウト作品みたい!
近藤さん「後半では、何とすでにあの世の人となっているホームズが登場し推理を披露(ひろう)するというトンデモ設定。少し古風な舞台背景で、今どきの科学的な捜査の描写はないですが、その分登場人物の心の機微や、心情がよく感じられる作品となっております。短編集なので気軽にお読みになれるかと」
ホームズの作者・コナン・ドイルはオカルトもお好きだったと言いますものね。ぴったりかも。
近藤さん「筒井康隆さんの『旅のラゴス』も面白い作品ですよ。文明の盛衰や人間にとっての幸せとは何かを描く著者の視点には、悟りのようなものを感じます」
実は私、筒井さんの本で挫折した経験があって……。ミソノさんは筒井さんにどんなイメージがありますか?
私は『時をかける少女』みたいな、ジュブナイル小説のイメージがあるわ。そんな著者の悟りってどんなものなのか気になるわね。
近藤さん「旅のラゴスは、もともと絶版になっていた本なのですが、多くの読者の声により復刊されたという経緯を持っています。一度読まれてみるのもいいかもしれませんね」
はい! 仕切り直して、この本をぜひ読んでみたいと思います。
良い本が見つかってよかったわね! ところで、執事服がとてもよくお似合いの近藤さんは、書店員さんとして長くお勤めなのでしょうか?
近藤さん「書店員をして38年になります」
大ベテランですね!
近藤さん「長く本に関わってきましたが、楽しい本をお客さまに手に取っていただきたいと、取次を駆け回っていた年若きころとその思いは変わりません。ここには多くの出会いがあります。さまざまな年代の皆さまに訪れていただき、まだ見ぬ面白い本に出会っていただけたらうれしいです」
今日は私たちもいっぱい楽しませていただきました!
どのフロアも本当にわくわくしたわね!
書店デート、またしたいです!
近藤さん「ありがとうございます。そのときはぜひまた、書泉グランデにお立ち寄りください。良き本をご用意してお待ちしております」
書店デートを楽しんだ3人が外へ出ると、雨はすっかり上がっていました。メイドたちを見送る執事服のシルエットが夜の闇にまぎれて見えなくなるまで、3人は何度も振り返っては「ごきげんよう」と手を振っていたのでした。
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