「ブログ感覚で作れる電子書籍」の快進撃〜「パブー」吉田氏に聞く(前編)(4/4 ページ)
ブログ感覚で電子書籍を作成でき、そのままオンラインで販売までできてしまうpaperboy&co.のサービス「パブー」。最近ではプロ作家の利用も増えるなど、成長著しいが、その企画当初から今日に至るまでのエピソードを、同社の取締役副社長で、パブーの責任者を務める吉田健吾氏が明かした。
── 田中圭一氏のプロデュースで話題になったマンガ制作ソフト「コミPo!」*との連携も発表されていますが、こちらについてはいかがですか。
吉田 コミPo!さんは作品の発表の場を持つつもりはないとお考えのようで、作ったものが見られるところがほしいということで、コミPo!の記者発表会の時にパブーをご紹介いただきました。今後どのように展開するかはまだ分かりませんが、漫画を描ける人が使うというよりは、ラノベや小説を作ってるけど絵が描けない、という人のためのアシストツールになるかもしれないと思っていて、そういったところにコミPo!がコンテンツの一部として入ってくるのは面白いかもしれないですね。
── 全ページ漫画で作るのではなく、挿絵的な利用ということですね。
吉田 そうですね。うめさんもコミPo!があるとネームを描くのがすごく楽になるといったようなことをおっしゃっていて、田中さんも自分が描けない絵柄で漫画が描けるといったようなことをおっしゃっています。そういう使い方ももちろんあると思いますが、現状のパブーユーザーさんだと、絵が描ける人は自分の絵で描きたいと思うでしょうし、どちらかといえばコンテンツの一部として使われるケースの方が多いのかなという気がしています。ただ、今後もっとキャラクターが増えてコミPo!自体が盛り上がってくると、独り歩きというか、初音ミクのようにコンテンツをジェネレートする、コミュニティーのようなものが発展していく可能性はもちろんあると思っています。
── 一般書については、今回佐々木俊尚氏のコンテンツが発売されましたが、あれはどういういきさつなんですか?
吉田 昨年、「電子書籍の衝撃」という本を佐々木さんが出されたときに、ブクログにインタビュー記事を掲載するためにお会いしたんですね。ちょうどそのときパブーを構想していたところで、「うちもこういうものを作ろうと思っています」と話し、パブーが完成した時点でうめさんと同じくリリース前に事前にご連絡して、「もしよろしければテスト利用していただけたらありがたいです」とお願いしたんです。
佐々木さんには1つはテレビ用の未発表原稿、たしか「クローズアップ現代」用のものだったと思いますが、1つ作品をアップしていただきました。そういったつながりがあったんですけど、今回は佐々木さんの方から「こういうことってできますか?」とメルマガのコンテンツ販売のお話を頂いたので、1つ1つの単品のものと、パックにしたものと両方でやってみたらどうでしょうかと提案したりもしましたね。
── 既存の出版社との交渉はどなたがされたんでしょうか?
吉田 今回のケースは佐々木さんに交渉していただきました。うめさんもそうですが、出版社と話をつけて、出せるようになったので出したいんだということで。佐々木さんは手持ちの原稿を送っていただく形でしたね、出版社で校正をしたものではなくて。
── 編集者の手を経ていないものということですね。ということは、用字用語のレベルでは紙の本とは微妙に違うかもしれないという。
吉田 そうですね。その後ご自身で校正されたのかどうかはちょっと分からないのですが、元になったのは手持ちの原稿だと聞いています。うめさんもそうですね。うめさんの場合「東京トイボックス」は出版社のアカウントになっていますけど、実際にはうめさんが調整をされたそうです。後は「ザッポスの奇跡」も著者がご自身でされたものですね。ある日パブーを見たら「ザッポスの奇跡」という既刊本が上がっていたので、最初は海賊版かと思いました(笑)。著者本人が公開された本であればちゃんと宣伝させてほしいということでご連絡したのですが、そうしたら自分でやってますと連絡をいただきました。こちらも著者自身で出版社と話をつけていただいたという形ですね。
── ほかの作家も、パブーで既刊の本を出したければ出版社との交渉は自分でやってくださいというのが基本のスタンスになるわけですね。
吉田 そうですね、われわれは過去の事例をお伝えしたり相談したりはできますが、既刊本の著作権といったお話は、どうしても出版社と著者の間のことになってしまうので。
〜後編に続く
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
注釈
コミPo!:ウェブテクノロジ・コムが発表したマンガ制作ソフト。同社取締役で漫画家としても知られる田中圭一氏がプロデュースしたことでも話題に。
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