GoodEReader.comではカナダやドイツといった西側諸国で電子出版に何らかの制限があることをレポートしてきた。これらの国々では現在の法律と文化的標準が電子書籍成功への障害となっている。しかし、技術的革新の1つの温床である日本でも同様の状況にあると誰が想定しただろうか。
テクノロジーとガジェット全般を受け入れることに定評のある日本で、電子書籍がこれまでのところあまり成功していないことは多くのマーケットウオッチャーを当惑させている。検索機能を欠く電子書籍ストアや、電子書籍を読むのに必要以上のソフトウェアが必要となるといった障害が多くの日本人読者に電子書籍トレンドの行き先を傍観させている。
今年のBookExpo America、あるいはIDPF ConferenceでIDPFが発表したOpen EPUB 3は業界で不可欠な革新として支持されている。これは、EPUB 3では日本語のように左から右へと読まない言語もサポートしているためだ。EPUB 3の特徴は会議場を埋め尽くした聴衆から文字通り拍手喝さいを受けたが、ではなぜこの機能が日本のエンドユーザーにはいまだにもたらされていないのか。日本の読者が慣れている縦書きフォーマットで入手できる日本語タイトルはほとんどなく、KindleやAppleの読書向けアプリでさえほとんど成功を収めていない。
電子読書に対するユーザーの抵抗は、日本の現状を踏まえると敢えて電子書籍を探したり、ダウンロードしたり、読んだりすることが簡単ではないことと大いに関係している。電子読書向けの多くのタブレットとPCベースのアプリを提供する西側の多くの電子書籍プラットフォームとは異なり、日本の多くの出版社はユーザーに各出版社から電子書籍を読むための別アプリをダウンロードするよう要求しており、ユーザーの電子ライブラリ全体の統合を不可能にしている。同時に、ほとんどの電子書籍は紙書籍のほぼ80%の価格で販売されており、現在の電子書籍の小売価格では何十ものアプリをわざわざダウンロードする価値はない。
幸いにも、とりわけKobo、Amazonのようなタイトルをまとめる力を持つ大規模な流通業者のおかげで、ますます多くの海外の電子書籍ストアが世界的に開店している。よりさまざまな書籍が幾つかのデバイスを通じて読めるフォーマットで入手できるようになるにつれ、より多くの海外の読者たちは電子書籍と市場が維持している需要へ目を向けそうだ。
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