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ビューワ開発者から見た、電子書籍業界のいま(前編)電子書籍覆面座談会(4/4 ページ)

電子書籍において、ビューワの操作性が読書体験に及ぼす影響は大きい。ユーザーとコンテンツの出会いを演出するのがビューワ開発者の力量だ。本企画では、電子書籍ビューワの開発者に集まっていただき、覆面座談会という形で電子書籍市場の今を聞いた。

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「書庫に保存したい」「買ったらすぐ読みたい」、相反する2つの需要


写真はezPDFreader(Android版)。画面下部に各ページのサムネイルを表示していることが分かる

―― 最近のビューワのトレンドとして、画面下部に各ページのサムネイルを表示できるというのがありますよね。国内でもそうですし、海外のPDFビューワ、例えばezPDFreaderにもあります。読み込みが遅いのが残念なんですが。

X 読み込みの遅さは、デバイスのハードウェアスペックが高くないので、どうしても出てきます。でもそれは過渡期ゆえのことであって、もう1〜2年もしたら解決するんじゃないかと。CPUを2〜3個に増やせば済みますから(笑)。

T ヤッパのビューワなんかは、ページをめくったら必ず全体表示するので、それ用に低い解像度の画像を用意していて、ペラペラめくる分にはかなり高速です。キャッシュもしているようですし、そこが1つの売りですよね。頻繁に拡大するユースケースが多いから、そうなっているんでしょうね、恐らく。

―― ガラケーでも、スペック依存の問題はありましたか?

T ガラケーは、auだとコンテンツサイズが1.5Mバイトまでという制限があるので、そこに縛られますね。よく「なぜコミックスを話数単位で分割するんだ」といわれるんですが、それは容量制限の問題です。コマ分割は画面サイズの問題で、コンテンツの分割は配信側の問題ということになります。また、スマートフォンでコンテンツサイズの制限が解除になったからといっても、例えば3G回線で50Mバイトのデータを落とすのはきついですからね。

 読者からすると「買ったらすぐに読みたい」なんですよ。繰り返して読む方はコンテンツを書棚に残しておきたがるんですけど、読み捨て的な需要も実は多くて、ストリーミングで今すぐ読みたいという相反する需要があったりして、とても難しい問題です。

―― ストリーミングだと、例えばマガストアですね。そういった仕様を最終的に決定しているのは誰なんですか。

T サービス側です。ストリーミングだとダウンロード側よりもDRMを考えなくて済むので、提供する側としては実装が楽なんですよ。DRMを考え出すと、結局出版社がコンテンツを出したくないとか、そういう話も出てくるので。

E Ink採用端末向けには設計に違いも

―― 少し話は変わりますが、電子書籍端末は液晶以外にE Inkを採用した製品もあります。E Ink向けのビューワでは、液晶の場合と設計を変えざるを得ないところがあるそうですね。

T ボタンを押したときの操作性ですね。普通ならボタン押しっぱなしでパッパッとめくるじゃないですか。ところがE Inkは画面の書き替えに時間が掛かるので、表示が間に合わなくてめくれないんですよ。E Inkを採用しているソニーの「Reader」やKDDIの「biblio Leaf SP02」では、液晶の端末と違って、ボタンを押していったん離すことでページがめくられますよね。

―― なるほど。押すだけじゃなくて、押して離さなくちゃいけない。

T ええ、離したときです。だから、押しっぱなしでは連続めくりができません。製品によって多少違いますけど、E Inkはページが切り替わるまで確か0.8秒くらい掛かるので、自然とそうした設計になります。


ビューワ開発者から見た、電子書籍業界のいま(後編)では、 デジタルコミックやEPUB 3の今が開発者視点で語られます。こちらも合わせてご覧ください。


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