三省堂書店とBookLiveが事業提携――書店の未来は?
三省堂書店とBookLiveが事業提携および戦略的パートナーシップを構築していくことで合意した。「電子書籍ストア」と「リアル書店」の連携による新たなバリューチェーンの構築で、読者と書籍の接点を最大化する魅力的な施策が出てくるだろうか。
三省堂書店とBookLiveが事業提携および戦略的パートナーシップを構築していくことで合意した。1881年に創業し、国内35店舗、海外5店舗、外商10拠点を構える老舗書店と、電子書籍ストア「BookLive!」がパートナーとしてビジネスの拡大を図る。
両社はこの合意に基づき、会員サービスの連携を図るとともに、両社会員への情報提供や販促プロモーションの連携により相互送客を推進したい考え。また、三省堂書店内での電子書籍販売と決済システムの連携、購買情報の一元管理なども予定されている。具体的な施策については2012年春をめどに順次実施するとしている。
書籍における紙と電子を連携する動きは各社が模索している。紀伊國屋書店やCCC、丸善やbk1、ジュンク堂などを傘下に持つ大日本印刷もこうした書店とネットの融合を進めている。これらが基本的にグループ内で行われているのに対し、今回のBookLiveと三省堂書店の事業提携は、独立する企業が提携した点がポイントとなる。
これまで日本の出版業界は、出版流通で培ってきたバリューチェーンが重要な意味を持っていた。そのエンドポイントに当たるのは書店だが、日本書店商業組合連合会(日書連)の調べによると、日本国内の書店数は1986年の1万2935店をピークに減少を続けており、2011年10月1日時点で4854店と5000店を割り込むに至っている。
厳しい生存競争にさらされている書店と、まだ十分に活性化されていない感のある電子書籍ストア。書籍市場の拡大と新たなビジネスモデルの創出を狙ってお互いが提携先を探していた中で利害関係が一致しての提携発表となった。
三省堂書店によると、ほかの電子書籍ストアとこうした提携を行うことは現時点で考えていないとし、まずはしっかりこの提携で結果を出していきたい考えだ。「電子書籍ストア」と「リアル書店」の連携による新たなバリューチェーンの構築で、読者と書籍の接点を最大化する魅力的な施策が出てくるだろうか。
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