2011年度の電子書籍市場は629億円――マイナス成長は危険なシグナルか?
インターネットメディア総合研究所がまとめた電子書籍の市場規模は2011年度で629億円。前年比マイナス3.2%とさえないが、2016年には2000億円に達すると予測している。
インターネットメディア総合研究所は7月3日、電子書籍の市場規模に関する調査報告書をまとめた。この調査はインプレスR&Dのシンクタンク部門である同社が主要な電子書籍関連事業者へのヒアリング調査やアンケート、ユーザーへのアンケートなどを基に分析したもので、詳細は『電子書籍ビジネス調査報告書2012』として発行予定。
レポートによると、2011年度の電子書籍市場規模は629億円と推計。同社がまとめた2010年度の同市場規模は650億円だったため、3.2%のマイナス成長となる。この理由について同社はフィーチャーフォンからスマートフォンへのデジタルコンテンツのシフトがスムースに進んでいないことを挙げている。
実際、ケータイ向け電子書籍市場、いわゆる“ケータイコミック”は現在も全体の約76%を占める480億円市場。ただし、前年度比で16%マイナスとなっており、2012年度以降も減少傾向が見込まれている。
一方、スマートフォンやタブレット向けの電子書籍市場は2010年度の24億円から363%増となる112億円へと急速に拡大した。しかし、ケータイ向け電子書籍市場の受け皿としてはまだ十分に機能しておらず、予想されていた海外事業者の参入が遅れたことなども影響し、ケータイ向け電子書籍市場の落ち込みを補完できなかったといえる。なお、2012年度の市場規模を713億円と予想、ケータイ向け電子書籍市場とスマートフォンやタブレット向けの電子書籍市場が逆転するのは2013年と予測している。
同社はこれらのデータを基に2016年の市場規模も推計。これによると2011年度比で3.1倍となる2000億円と予測している。ちなみに同社が昨年発表した「電子書籍ビジネス調査報告書2011」では、2015年に2000億円程度と予測しており、失われた1年が発生しているかのようだ。
また、電子雑誌市場についても言及があり、2011年度は前年度比267%増の22億円。2016年度には350億円程度になると予想している。
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