電子書籍サービス市場は2015年に3500億円超へ――それってどのくらいすごいの?
「2010年度の電子書籍サービス市場は640億円。2015年には3501億円へ」――MM総研は、電子書籍サービスおよび電子書籍端末の市場規模についてこんな調査結果をまとめた。
「2010年度の電子書籍サービス市場は640億円。2015年には3501億円へ」――MM総研は4月14日、15歳以上のインターネット利用者2500名に対するWebアンケートの結果から、電子書籍サービスおよび電子書籍端末の市場規模についてこんな調査結果をまとめた。
電子書籍市場は今後どんなジャンルの成長が期待されるか?
有料電子書籍の利用者127人に電子書籍の利用ジャンルおよび購入金額を分析した結果、同社が算出した2010年度の電子書籍サービス市場は640億円。これが2015年には3501億円に成長するという。CAGR(年平均成長率)では40.5%で推移することになる。
2010年度の640億円という内訳を「書籍」と「雑誌/マンガ/写真集」に分けてみてみると、前者が362億円、後者が278億円だという。全ジャンルの中では「マンガ・コミック単行本」の約162億円が突出しており、市場の25%を占めた。現時点の電子書籍市場は漫画やコミックがけん引しているということが改めて浮き彫りとなった格好だ。
この市場規模を相対的に理解するため、紙書籍の市場規模についてもまとめられている。これによると、2010年度における新品/中古の紙書籍(雑誌/マンガ/写真集含む)の購入金額は2兆5378億円。このうち書籍が1兆7321億円、雑誌/マンガ/写真集」が8057億円とある。つまり、出版市場全体で考えれば、現時点の電子書籍市場はごく小さな市場であるといえる。2015年時点の紙書籍の市場規模については言及がないため比較は難しいが、出版市場の1割〜2割程度が電子書籍市場であると考えられる。
現時点の電子書籍市場は漫画やコミックがけん引していることは上述したが、同調査では、「医療・学問・語学・資格・就職・参考書・辞典」「趣味・生活・実用」「推理・ミステリー・ホラー・SF」といったジャンルの成長が著しくなるとしており、金額規模ではそれぞれ300億円以上になる見通しだとしている。
2015年には月2000円くらいは電子書籍を購入する時代に?
一方、電子書籍端末の市場規模についても触れられている。同社がこの調査で定義している「電子書籍端末」は、「電子書籍専用端末」「タブレット端末」で、後者は、iOSやAndroidOSを搭載し、5インチ以上のディスプレイを備えるタブレット型の端末だ。
レポートによると、2010年度では113万台(電子書籍専用端末が16万台、タブレット端末が97万台)だった電子書籍端末出荷(または販売)台数はCAGR 41.4%で推移、2015年度には639万台(電子書籍専用端末が198万台、タブレット端末が441万台)まで拡大すると予測している。これに伴い、電子書籍端末の利用者数も2015年度末には1696万人(電子書籍専用端末が506万人、タブレット端末が1190万人)まで拡大するという。
ちなみに、市場規模を利用者数で割って、さらにそれを12で割ると一人当たりの月間利用金額に近似した額になると思われるが、2015年では約1720円となる。2015年には月に2000円くらいは電子書籍を購入するのが自然になるのだろうか。
現時点で電子書籍の認知度は92.5%、利用者は18.5%
このほか、2010年時点で電子書籍を「知っている」と回答したのは全体の9割を超える2312人で、認知度は高い。しかし一方で、有料/無料を合算しても2割に満たない利用状況にとどまっている。また、利用端末も「携帯電話・PHS」や「デスクトップPC」などが主流だ。
電子書籍の利用意向について、ポジティブな意見の代表格は、「書籍の保管に場所をとらない」「いつでもどこでも書籍を読める・購入できる」「多くの書籍を持ち運べる」など。反対にネガティブな意見としては、「紙で書籍を読むことに慣れている」「電子画面で書籍を読むのは疲れる」「専用の端末を持っていない」などが挙がっている。
MM総研では電子書籍市場が拡大するための最大のポイントとして、「コンテンツの品ぞろえ」「紙書籍よりもリーズナブルな価格設定」を挙げてレポートを結んでいる。
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