電子書籍元年は真実か? データで裏付けられた電子書籍市場の現在
矢野経済研究所がまとめた「電子書籍市場に関する調査結果」で、2009年度の国内電子書籍市場規模は前年度比で119.6%の610億円となった。電子書籍元年と呼ばれることもある2010年度については、前年度比109.8%の670億円程度に落ち着く見込み。
2009年度は610億円の市場規模、2010年は670億円の見込み
矢野経済研究所は11月18日、国内の電子書籍市場に関するレポート「電子書籍市場に関する調査結果」を発表した。
この調査は、出版社、書店およびその関連企業、業界団体に対して、2010年6〜11月にかけて実施されたもの。同調査では、携帯電話向け、パソコン・PDA向け、電子書籍リーダー向けに配信される電子書籍コンテンツの事業者売上高を電子書籍市場と定義しており、コンテンツを表示させる端末の代金やデータダウンロードにかかる通信費、広告収入などは含まれない。
同調査によると、2009年度の国内電子書籍市場規模は610億円。これは前年度比で119.6%となる。国内電子書籍市場規模についてはインプレスR&Dも7月に調査結果を発表しているが、こちらは574億円だった。
アップルが2010年5月に国内市場に投入したタブレット端末「iPad」など、2010年は「電子書籍元年」と呼ばれることが多いが、実際には、それ以前から旧作の漫画をパソコンや携帯電話向けに配信しており、日本はすでに「電子書籍大国」であるとレポート。
しかし、「電子書籍元年」であるはずの2010年度の国内電子書籍市場は、「電子書籍端末の多様化・高機能化、書籍・雑誌の電子化の進展により、2010年は同市場にとって、新たなるスタート、大幅な市場拡大に向かう年になったといえる」としながらも、2010年度の電子書籍市場規模は前年度比109.8%の670億円と見込んでおり、成長率でいえば2009年度から大きく減衰している。とはいえ、出版業界の市場規模が2兆円を割り込み、マイナス成長となっていることを考えれば、相対的に電子書籍市場が盛り上がっているというのは間違いない。
同社が発表している電子書籍市場規模推移のグラフでは、2013年には電子書籍リーダー向け電子書籍市場が大幅に成長していることから、国内で立ち上がり始めた配信プラットフォームが市場に受け入れられるには数年を要すると考えられる。
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