第16回国際電子出版EXPO、こんな展示もありました:e-Book Expo Tokyo 2012 Report
電子書籍サービスやソリューションの展示会「第16回国際電子出版EXPO」。各社のブースでさまざまな展示が行われているが、今後が注目されるものを幾つかピックアップした。
電子書籍サービスやソリューションの展示会「第16回国際電子出版EXPO」。楽天のKoboやAmazon.comのKindleなどの本格参入で注目が集まる電子書籍市場の最新動向が詰まった展示会には、各社どんなソリューションを展示しているのだろうか。すでに幾つか紹介しているが、ここでは筆者が気になった展示を3つほど紹介したい。
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EPUB3へのコミットを強めるモリサワ
モリサワのブースでは、先日発表された電子コミックソリューション「MCComic」などが参考出展されている。
楽天が発売するKobo Touchにモリサワフォントが搭載されるなど、電子書籍市場でもひんぱんにその名を目にする同社。電子書籍関連のソリューションは、書籍、雑誌、コミックを1つのソリューションでまとめるのではなく、それぞれの日本語組版事情なども踏まえた上で制作から閲覧までをカバーするソリューションを用意している。電子書籍は「MCBook」、電子雑誌は「MCMagazine」、そして電子コミック向けが「MCComic」だ。
MCComicは、PDFやJPEGデータなどから固定レイアウト型のEPUBを作成できるオーサリングツール「MCComic Maker」と、閲覧のためのビューワライブラリ「MCComic ビューワライブラリ」で構成される。後者は組み込み用のライブラリとして提供され、iOSやAndroidにも対応している。
ブースではMCComic Makerのデモも見ることができるが、画像データを取り込み、綴じ方向やページだてなどを設定するだけでEPUB3ファイルを作成できた。富士フイルムが同EXPOで展示している「GT-MangaAuthor」と同じジャンルといえるが、モリサワは制作から閲覧までをカバーする考え。なお、MCComicのリリースは今秋を予定している。
MCMagazineやMCBookのソリューションも、世界的に広く用いられている標準として国内での普及も進むEPUBへのサポートを強化している。また、電子雑誌のソリューションであるMCMagazineは、AppleがiOS5から追加した電子雑誌の定期購読・管理が行える「Newsstand」に対応している。
富士通はBooksVのノウハウを「電子書籍ストア運営支援サービス」として提供
富士通のブースでは、同社の電子書店である「BooksV」関連の展示が多い。利用できるプラットフォームの拡大を進め、Windows 8向けのアプリなども参考展示されていた。iOSにも近々対応予定としている。このほか、本との出会いを楽しむ「つながりブックガイド」というアプリも展示されていた。
同社ブースで注目は、BooksVの運営ノウハウを「電子書籍ストア運営支援サービス」として提供することが示されていることだろう。シャープも先日「book-in-the-box」を発表しているが、運営に必要なソリューションをまとめて提供する動きが大手ベンダーから相次いでいる。
ヤフーはアプリからの脱却を図るサービス作りへ舵を切る
巨大な黒船のオブジェが目を引くヤフーのブースでは、電子書籍サービスのプラットフォーム依存を減らす取り組みが紹介されている。
同社は今回のEXPOに先立ち、自社の電子書籍サービス「Yahoo!ブックストア」でボイジャーの「BinB」をベースにした新しい閲覧環境の提供を開始している。BinBはWebブラウザで本を読む(Books in Browsers)という考え方に基づいて開発されたHTML5ベースのビューワで、特別なアプリなどがなくてもWebブラウザがあればコンテンツを読むことができるのが特徴。デバイスやOSを問わずにサービスを提供していこうとする同社の考えが黒船というイメージで表現されているのだろう。なお、既存のアプリも平行して提供され、オフライン環境での閲覧などで使い分けを推奨している。
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