本の売り手としての出版社?
Discoverabilityという単語は今後の電子書籍市場で盛んに議論されていくことになるだろう。先日開催されたO'Reilly TOCのトピックと合わせて紹介しよう。
どのような出版イベントでも、ディスカッションとパネルプレゼンテーションには共通性やテーマが存在する。時にそのテーマは率直でプログラムに印刷されるが、それ以外の場合はイベントを通じての出席者の解説やうわさにすぎないこともある。
今年のTOC(O'Reilly Tools of Change for Publishing Conference)で展示者の間でしばしば取り上げられたトピックの1つが、大手オンライン小売企業との関係を持たず、自社ブランドの電子書籍ストア開設を選択する出版社のコンセプトだ。今年のTOCで展示を行った企業のうち、3社以上があらゆる規模の出版社が自社電子コンテンツを流通させ、自社オンライン電子書籍ストアで販売するのをサポートする事業を行なっている。
Impelsysが保有するiPublishはコンテンツを販売する出版社をサポートするための事業を行なっている企業の1つで、事業の詳細について、iPublishのスポークスマンはGoodEReaderとのインタビューで以下のように語った。
「人々はAmazon、Barnes & Nobleに対して神経質になっており、自社売り上げの半分以上を占める可能性のある企業に自社コンテンツを委ねることを懸念しています。わたしたちが実現したいのは、自社ブランドサイト作成により出版社に電子書籍に関するオプションのコントロールを失わせないこと、われわれのツールと機能を利用してもらうことです」。
流通企業を通してコンテンツを販売する出版社が直面する問題の1つは、読者の顔が見えないことだ。出版社は4半期ごとに販売リポートを受け取っているにすぎない。カスタマイズされた小売Webサイトがあれば、出版社は自社の書籍を購入する顧客について理解し、自社コンテンツを顧客が引き寄せられるものに合わせることができる。
「一部の出版社は自社フランチャイズ書籍向けWebサイトを作成するためにわれわれのサービスを利用しています」。これは人々がそれらのタイトルを知っているので、非常に検索しやすく販売しやすいということを意味する。
Discoverability(発見可能性)は出版社と著者が小売企業を利用しつづけるか、自前でオンライン小売Webサイトを開発するかを決定する上で直面する問題の1つだ。これらの出版社独自のWebサイトの多くは紙書籍の既存販売チャネルにリンクさせることができるが、本のDiscoverabilityは消費者と作家が常に直面する問題となっている。
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