図書館が小売業者になるとき
図書館向けの電子書籍貸し出しサービスの検討が国内でも動き出しつつあるが、海外では、図書館で新刊電子書籍を販売するかどうかが議論の的になっている。
シカゴで開催されたALA(American Library Association)の年次会議における最大のトピックの1つは、小売業者としての図書館だった。
つまるところ図書館は、地域の行政と連邦の税金から資金を受けて活動する公的機関だが、自館のWebサイトに『購入する』ボタンを用意している公的図書館について、二極化する問題になりはじめている。少額の手数料徴収は図書館のコンテンツ取得に再投資できるとこれを支持する人もいれば、書籍販売は図書館で行うべきではないとする人もいる。
海外では、図書館は常に古本を販売したり、中古コンテンツを販売するためのブックフェアを開催しているが、新刊販売はほとんど行われていない。その新刊販売について、Simon & Schusterがニューヨーク、ブルックリンのクイーンズ図書館で電子書籍パイロットプロジェクトを開始した際は、市民意識を刺激した。Baker & Taylor、3M、Overdriveが電子書籍の貸し出しをとりまとめ、そのプロジェクトの一部が『購入する』ボタンの実験だった。要は図書のウェイティングリストが長ければ、本を購入するように促すというものだ。現在、すべてのデータは、試みが成功したかどうか、そして、Simon & Schusterが全米への展開を行うかという視点から、まとめて検討されているところだ。
Overdriveと3Mは図書館利用書が自社サービスから書籍を購入できる独自システムを開発した。現在、OvedirveのみWebサイト経由の購入を認めており、個々のアプリやLibrary Media Stationでの販売は行なっていない。Kindleを所有していれば、Overdriveは実際に何年にも渡って電子書籍購入を認めてきた。3Mは直接支払いを処理しておらず、第三者経由での処理が行われている。Baker & Taylorは「My Library Bookstore」システムの調整を行った。同プラットフォームは、図書館利用者がBaker & Taylorと取引のある図書館から紙書籍を購入し、自宅に配送してもらえるオンライン電子商取引Webサイトだと考えてほしい。Axis 360は企業が電子書籍とオーディオブックを販売できるまともなプログラムを持っている。
販売手数料の構造の実態は今のところ分かっていないが、それぞれの図書館は購入が行われた月に1000ドルには至らないほどの売り上げを上げている。ダグラス郡図書館が『購入する』ボタンを導入してから1年以上経つが、ジェイミー・ラルー氏によると「雀の涙ほどの数百ドルくらい」にしかならなかったという。
米国とカナダ国内の図書館は、図書館利用書が図書館のWebサイトから電子書籍を直接購入できる機能を追加することを検討している。大規模導入の最大の障壁の一部となっているのは図書館の評議会だ。より大規模な図書館には多くの視点を持つ評議委員からなる評議会が存在しており、この新プロジェクトの可能性について一致した戦略に達するのはしばしば困難だ。現在、購入プロセスをまとめる標準的手法は存在しない。図書館が3MやAxis 360、Overdriveなどと取引していれば、購入ボタンを追加することはできる。図書館がそれに反対なら、この機能を利用する必要はない。
ここでの問題は図書館が電子書籍を売り上げる小売店舗になるべきかというものだ。われわれはさまざまな視点を持つ20の図書館にインタビューを行った。ALAのモウリーン・サリヴァン会長は「この新ビジネスモデルを追求することで図書館は追加収入を得られる非常に素晴らしい機会を手にしています。図書館は常に非営利で、消費者中心に転向することはないと思います」と話した。
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