エージェントが関与しない出版社への作品提出が一般的に
文芸エージェントの『裏づけ』あるいは引き受けがない作品でも検討する出版社は増えつつある。しかし、複数の選択肢がある中、著者にとってどこまで魅力的かは不明だ。
現在の電子出版と自主出版革命が起こる以前、著者にとって出版に至るまでのプロセスは非常に時間が掛かるものだった。
エージェント探しはその最初の関門と言って良いだろう。役割こそ変化しつつあるが決して絶滅することはない文芸エージェントは、本の価値を決定し、率直にタイトルを引き受けるか拒否するかを判断する最初の存在だった。
自主出版を志す多くの著者がそうする理由は、原稿の引き受けが拒否されることが珍しくないからだ。原稿は非常に優れているが市場性がないという理由で本の代理人となることを拒否するとはっきり告げるエージェントにより、業界のフラストレーションが引き起こされている。
しかし現在、著者には非常に多くの選択肢がある。文芸エージェントの『裏づけ』あるいは引き受けがない作品でも検討する指針を打ち出す出版社は増えつつある。
先日、英国の中堅出版社Bloomsbury Publishingが創刊したヤングアダルト向けの新レーベル「Bloomsbury Spark」は、エージェントの付いていない著者の作品提出も受け付けると発表した。著者が出版までの関門をくぐり抜けていくことに飽き飽きしていることを認識した最新の出版社になったということもできるだろう。しかし、(自主出版によって)より多くのロイヤリティーを著者が得ることができるようになり、著者がそちらに目を向け始めている昨今、これはあまりにも影響が少なく、そして遅すぎるのではないだろうか。
Sourcebooksなど一部の出版社はエージェントのいない作品提出を受け付けるようになってしばらくたつが、作品コンテストの一部として原稿を提出する権利を勝ち取る著者向けのチャンスを歓迎すらしてきた。Pan Macmillan SFFの出版レーベル「Tor UK」は2013年初頭に自社のポリシーを公表し、自主出版のほかにも選択肢があることを著者に考えるよう促している。
こうした新たな変化を見る上で興味深いのは、Bloomsbury Sparkへの投稿ガイドラインに著者のソーシャルメディア上での影響力を示す情報を提供するよう求める要件があることだ。つまり出版社は作品出版に同意する前に、著者がどれだけのリーチと影響力(あるいは潜在顧客)を有しているのか見極めたいということだ。これはWattpadのようなサイトで多くのフォロワーを持つ書籍の著者を集めようとする出版社の考えに類似している。
著者が出版への最初の障害を避ける手段として提出に制限を設けないコンセプトに乗りたがるか興味深いが、本の著作権・著作権料を譲り渡すことを含まない一連の選択肢も著者は利用できるので、多くの著者を惹きつけるのに十分魅力的なものとはならないかもしれない。
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